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2023.08.22

自治体営業を進めるにあたっての問題点と有効なアプローチ

How To
自治体営業を進めるにあたっての問題点と有効なアプローチ

DXや防災などの領域への期待の高まりから近年になって注目が高まる、民間企業による地方自治体との取引。本記事では、自治体への営業を進める際に特徴的なポイントを解説します。

<目次>

  • 実施有無の判断や評価は、地域住民が決める
  • 「自治体営業」の課題4点
  • 課題を逆手にとって効率的にアプローチする方法

(画像:写真AC)

「自治体営業」の特徴

自治体の予算決定プロセスは1年がかり

千葉市の資料 *1によると、1年間の予算は、下記のような手順で行われます。


予算編成の流れ

予算編成方針を決定(10月上旬)

  • 新年度の予算を作るための方針が市長より提示

サマーレビュー (10月中旬)

  • 予算編成の事前検討として、あらかじめ中長期的に見直さなければならない事業について、その方向性を検討。

各局要求 (10月下旬)

  • 予算編成方針に基づき、各局が、新年度に実施したい事業の予算を要求。

財政局調整 (11月~12月)

  • 予算要求のあった事業内容について、新年度の収入(財源)見積もりと照合しながら、必要性・緊急性などを検討し、実施する事業を採択。

市長報告及び査定 (1月中旬)

  • 財政局長査定(調整)に基づく予算計上案の内容について市長に報告し、市長が予算案として決定。

財政局長内示 (1月中旬)

  • 財政局長段階の査定(調整)結果を各部局に提示。

市長復活査定 (1月中旬)

  • 財政局長内示結果に対して、再調整を要する場合に、市長が判断。

示達 (1月下旬)

  • 復活要望されたものについての市長査定結果を各部局に通知。

予算案の公表 (2月中旬)

  • 第1回定例会への提出予定議案を議会運営委員会で説明し、あわせて予算案の内容を公表。

議会で審議・議決 (2~3月)

  • 予算案は市議会に提出され、審議・議決されて成立。

千葉市以外の自治体でも、概ね上記の流れに沿って予算が成立します。このプロセスを見るだけでも、自治体が10月〜3月の半年間をかけて来年度予算を成立させていることがわかります。

更に言うと、このプロセスには「各局内で来年度予算案をつくる時間」が抜けています。10月の各局要求にむけて、4〜9月にかけて各種の情報収集や部課長への提案、内部調整をおこなっているのです。

つまり、自治体は1年を通じて予算成立に向けて動いており、民間企業もそのスケジュールを意識して営業活動を行う必要があります。

実施有無の判断や評価は、地域住民が決める

なぜ自治体が長い時間をかけて予算成立を進める必要があるのか、根幹には「実施有無の判断や評価は、地域住民が決める」という点があげられます。自治体職員や議員はあくまでも地域住民の代理・代表者に過ぎず、物事の意思決定は地域住民がおこないます。

更に財源は各種の税金であるため、失敗しない方法を見定める必要があるためです。

「自治体営業は儲からない」って本当か?

まれに「自治体営業は儲からない」という声を聞くことがあります。その声もやはり1年単位で動く必要があるという長い時間軸が背景にあることが多い様子です。

ですが株式会社矢野経済研究所による調査*によると、2021年度の自治体向けソリューション市場は7,256億3,000万円と推計されています。2022年度についても、コロナ特需からの反動減はあるものの依然として7,000億円以上と予測されています。この他にも、入札額では25兆円にのぼるという数値*2も中小企業庁から発表されています。

取引先の倒産等の心配がない点も含め、いずれの数値にしろ、自治体との取引は期待値の大きなビジネスと言えるでしょう。

「自治体営業」の課題4点

大きな取引が期待できる自治体営業ですが、改めて課題を整理したいと思います。

1.物理的な距離が離れている

多くが首都圏をはじめとした大都市に集中する民間企業同士の取引と異なり、当たり前ですが地方自治体の窓口は全国に点在しています。

全国に営業窓口を開設できる企業は限られるため、闇雲なテレアポや飛び込みによる営業とは相性が良くないです。

一方で「他の自治体と距離がある」ことは自治体側の情報入手難易度の高さにも繋がっており、この点を考慮に入れた営業活動をおこなうことで、効率的なアプローチも可能になります。

2.前例主義

「意思決定を行うのは地域住民」「税金のため、失敗が容認されにくい」という前提が、予算成立に大きな影響を与えています。

「他の自治体で導入された」「他で既に良い結果が出ている」点が重視される理由です。反対に、「前例はないが画期的な手法のはず」という提案では地域住民への説明が難しく、受け入れられにくいことがわかるかと思います。

3.スケジュールの制約が大きい

冒頭で説明した通り、自治体営業では1年間の提案タイミングが決まっており、提案から受注までも長い時間を要します。予算に組み込む事業の原案が9-10月で決まるため、4月頃から自治体営業をスタートさせる必要があります。

4.入札制度への理解が必要

民間企業同士の取引と異なり、自治体との取引には入札制度を理解する必要があります。

入札には主に「一般競争契約」「指名競争契約」「随意契約」があり、決定方法も「価格」「企画(プロポーザル)」「総合評価」があります。また入札参加には資格取得が必要なため、自治体毎に入札参加資格申請書を作成・提出する必要があります。

また「(公開されている)入札情報を見て動き出せば十分ではないか」という声もありますが、それも注意が必要です。入札条件を作成するためのヒアリングは民間企業から行うため、やりとりのある企業が有利になるような条件が含まれている可能性があります。

つまり、入札開始前からの関係構築が重要となります。

課題を逆手にとって効率的にアプローチする方法

最後に、課題を踏まえた上での効率的なアプローチ方法をお伝えします。

導入事例をいかに広げられるか

課題欄でも触れた通り、自治体側にとっても「物理的な距離」はネックです。他自治体での導入事例が重要な役割を果たすにもかかわらず、その距離が災いして情報収集を行いにくいためです。定期的に部署転換があるという構造も、横のつながりを構築しにくく情報収集難易度が高くなる要因にもなっています。

裏を返せば、導入事例の拡散に注力することで、闇雲な飛び込み営業をせずとも効率的に売上を拡大することが可能となります。

導入事例の拡散には、「専門メディアへの情報掲載」「DM」「クチコミ・広報」などが考えられます。ここでは専門メディアについてお伝えします。

【専門メディアを使った事例情報拡散】

自治体職員に向けた雑誌・WEBサイトといった専門メディアへ情報を掲載する手法です。有料・無料のメディアがあり、近年では予算削減の一環から有料メディアは発行部数が減少している傾向があります。

また掲載方法も大きく「記事型」「純広告型」の2パターンがあります。この中でのおすすめは記事型です。メディアによりますが、導入自治体と民間企業の両方に取材を行うことで信頼性を担保しています。

雑誌「自治体通信」も全国の都道府県・市区町村を中心に約30,000部が流通しており、「掲載後に自治体から問い合わせがあった」という反響事例も多く存在します。お気軽にお問合せください。

事例がない場合も諦めてはいけない

「自治体ビジネスに参入したばかりで事例が無い/乏しい」というケースもあるかと思います。そういった場合はどこから取り掛かるのが良いのでしょうか。

ニーズがあるか不明な状態で、1社ずつ声かけを行うのは非効率です。この場合、自治体関連の知見が豊富なテレマーケティングサービス等を用い、まずは全国自治体の担当課にニーズの調査を行うことをおすすめします。サービスによっては、ポジティブな感想を得られた自治体のリードを得ることも可能です。

こういった内容についてもお気軽にご相談ください。状況に応じた最適なソリューションを提案します。