自治体でのAI導入事例7選!活用方法やおすすめの行政プログラムを紹介【自治体事例の教科書】

<目次>
職員の働き方改革推進と住民への利便性向上を行う上で、行政業務の効率化が求められています。その対策として、AIを導入・活用している自治体がどんどん増えています。そこで今回は、自治体でのAI導入事例7選を、活用方法やおすすめの行政プログラムも合わせて詳しく紹介していきます。
自治体におけるAIの導入・活用事例

まずは、自治体で活用されているAI技術には、どのようなものがあるのか見てみましょう。
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上記7つのAI技術についての概要や、具体的な活用例を詳しく紹介していきます。
・音声認識
実際に、自治体の業務に導入している音声認識の事例は下記の通りです。
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参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状況
・音声認識の具体的な活用例
参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状況
参考:導入事例 東京都港区様|音声認識の株式会社アドバンスト・メディア
東京都港区では、区民サービスの向上とともに、働きやすい職場環境作りを目指して2017年度に港区情報化計画の見直しを行い、ICT活用による業務効率化の取り組みを進めました。中でも、300回を超える会議・打ち合わせに伴う議事録作成業務は、これまで手作業で行っていたため、職員に大きな負担がかかってしまうことが課題でした。
2018年5月から600回を超える会議で、音声認識「AmiVoice」の使用をスタートさせました。従来であれば、1時間の会議に関する議事録作成に4時間もの時間がかかっていましたが、音声認識を導入したことで約1時間にまで作業を軽減することができ、業務の効率化を実現させました。
チャットボット
実際に、自治体の業務に導入しているチャットボットの事例は下記の通りです。
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参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状況
・チャットボットの具体的な活用例
参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状
参考:自治体事例 #AI×自動応答サービスの教科書
兵庫県三田市では、AIとLINE(ライン)を使用した24時間質問受付および自動応答を行うチャットボットを実施しました。これは、住民などからによる問い合わせに、AI機能が自動的に応答するプログラムとなっています。
チャットボットを導入し、アンケート調査を実施したところ、便利と回答した人が全体で56.6%、今後もサービスを継続した方がよいと回答した人が75.0%、知りたい情報が得られたと回答した人が62%となっていることから、市民の利便性が向上しただけではなく、職員の業務軽減も期待できます。
画像分析
実際に、自治体の業務に導入している画像分析の事例は下記の通りです。
高齢者福祉 概要:認知症の帰宅困難者などを道行く人がスマホのアプリでプライバシーを考慮した画像を撮影でき、AIが人物を判別して家族に知らせる。
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参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状況
・画像分析の具体的な活用例
北海道室蘭市が管理する道路は約440kmと膨大で、限られた職員で市内全域の路面健全度を網羅的に把握することは困難なものでした。そこで、安価な車載カメラで撮影した路面画像からひび割れを自動検出するAI技術を活用し、道路のひび割れ率の検出およびランク付けを行うことで可視化を図りました。
これにより、低コストで市内全域の路面健全度の把握が可能となり、補修工事・修繕を行う路線のスクリーニングをAI技術による客観的データをもとに実施できるようになったことによって、道路管理の効率化・省力化を実現しています。
データ解析
実際に、自治体の業務に導入しているデータ解析の事例は下記の通りです。
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参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状況
・データ解析の具体的な活用例
参考:日本経済新聞
参考:神奈川県警で全国初のAI導入による事件・事故発生予測システムに着手
京都府警では10月から、パトロール・事件捜査に役立てようと、犯罪・不審者に関する膨大な情報を短時間にコンピュータで分析できる、予測型犯罪防御システムを導入しました。府警によると、それぞれの部署が集めた過去約10年分の事件発生・不審者出没といった情報を取りまとめ、犯罪学の理論を応用して分析します。
予測しやすいとされる窃盗などの街頭犯罪・性犯罪について、発生の危険性が高い場所を時間帯ごとに推定して地図上に表示するようにしました。これにより、半年ほどの期間で40件程度の事件で検挙できたという実績が出ました。AIによる犯罪予測システムは、事件データが集まれば集まるほど精度が高まるため、今後の期待も高いといえます。
マッチング
実際に、自治体の業務に導入しているマッチングの事例は下記の通りです。
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参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状況
・マッチングの具体的な活用例
沖縄県那覇市では、国保特定健診受診率向上のため、郵送・電話・訪問など、さまざまな勧奨を実施してきましたが、ここ数年の受診率は横ばいとなっていることから、AIによる統計解析を行い、勧奨通知を効果的に送り、分類分けにより効果的なメッセージを届けるようにしました。
入したことにより、昨年度の同時期比で約1.9%増に、全体で約0.6%増となり、昨年度受診率を37.7%上回る見込みとなっています。
AI OCR
実際に、自治体の業務に導入しているAI OCRの事例は下記の通りです。
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参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状況
参考:スマートOCRの製品特徴・機能
・OCRの具体的な活用例
参考:自治体がOCRを導入した背景と業務効率化や改善に至った事例のご紹介
愛知県一宮市では、オンラインで利用できるeLTAXの利用者が少なく、印刷後に郵送された届出書を住民税システムに入力するといった業務が課題でした。この課題を解決する取り組みとして、届出書をOCRでデータ化し、RPAによってデータからロボットが住民税システムに入力する仕組みに変更しました。
AI-OCRを導入したことにより、年間180,000件もの届出書を入力するのに592時間かかっていたものが、398時間にまで短縮され、職員の負担が大幅に軽減されました。このように、具体的な数値で成果が示されていることから、OCRの導入に加え、RPAと連携するための基盤を作っておくことが大切かと思われます。
機体制御
実際に、自治体の業務に導入している機体制御の事例は下記の通りです。
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参考:公益財団東京市町村自治調査会 自治体におけるAI・RPAに関する取り組み状況
参考:自治体や企業の方に知って欲しい!ドローンでできる5つの調査事例
・機体制御の具体的な活用例
佐賀県みやき町は、大部分の就農者が米麦中心の農業を営む中、近年では後継者頭足による就農者人口が減少しています。
平成30年度の初期的な取り組みとして、米作農家の協力を得て、ドローンを使用した圃場の撮影を行い、その画像をクラウド上にアップロードしてオプティムがAIによる画像解析しています。害虫の発生状況を把握し、万が一害虫の発生が認められたら、その部分にドローンによるピンポイント農薬散布を行いました。
これにより、害虫の発生状況を把握するだけではなく、田まわりと呼ばれる日常的な圃場の点検作業も行えるため、生産者の労働力省力化を実現しました。
政府主導のAI導入・検証プログラム

総務省の「自治体行政スマートプロジェクト」は、自治体行政のさまざまな分野で団体間比較を行いながらAI・RPAなどを活用した標準的・効率的な業務プロセスの構築にモデル的に取り組む自治体を支援することで、汎用性のある実践モデルの構築・横展開を図ることを目的としています。
団体間比較を実施するために、人口規模が同程度の複数団体がグループを組んで共同提案を行います。
対象 |
内容 |
都道府県 |
3〜5団体程度の都道府県を1つのグループとしてBPRによる業務プロセスの標準化などを行う。 |
市区町村 |
指定都市を除いた3〜5団体程度の市区町村を1グループとしてBPRによる業務プロセスの標準化などを行う。 |
指定都市 |
3〜5団体程度の指定都市を1つのグループとしてBPRによる業務プロセスの標準化などを行う。 |
また、これらは住民基本台帳業務・税務業務・内部管理業務が対象となっています。
自治体にAIを導入したいと考えていて上記に該当する方は、ぜひ検討してみてください。また、自治体行政スマートプロジェクト以外にも、自治体AI共同開発推進事業というものもあります。こちらについても、下記に記載されていますので合わせてご覧ください。
詳細を知りたい方はこちら:総務省 令和2年度自治体行政スマートプロジェクト
まとめ
地方自治体がAIを導入することで、サービスの向上や業務の効率化が図れることがご理解いただけたでしょうか。今回紹介した7つの活用例においても、それぞれの仕組みが、どう職員の負担軽減に繋がっているのかが伝わります。この機会に、業務の効率化を図り、サービスにおける質の向上に努めてみてください。