【自治体通信Online 寄稿記事】
自治体DX完全ガイド~season2~#6
(電子自治体エバンジェリスト/合同会社 KUコンサルティング 代表社員/豊島区 元CISO・髙橋 邦夫)
パンデミックは収束しつつあるのだから、自治体職員がテレワークする意義は低下した? 否、事実は真逆で、ますますテレワークの重要性が高まっています。そのワケは? 多数の自治体のアドバイザーを務める電子自治体エバンジェリストの髙橋 邦夫さん(KUコンサルティング代表社員/豊島区 元CISO)に、今さら聞けない基礎、見落とされがちなポイント、他自治体事例など自治体DXの全体像を解説してもらいます。
テレワークの本質的な意味とは?
今回はテレワークの推進についてお話しいたします。
こう言うと、「パンデミックが収まりつつあるのだから、 もうテレワークは必要ないのではないか」―。このような疑問を感じる自治体職員の方は少なくないのかもしれません。
しかし、私はテレワークの本質的な意味とは、パンデミック等への緊急避難的な対応ではなく、「働く場所を選べる」ことだと思っています。テレワークによって支援を必要とする人たちの近くで自治体職員が働くことができるので、必要な支援をより素早く届けること等が可能になり、「安全・安心なまちづくり」の施策や取り組み等の実効性を高めたり、住民サービスや行政サービスの質を上げ、スピードアップすることが可能になります。是非、テレワークをアウトリーチに活用していくことを検討してほしいと思います。
ポイントは“スモールスタート”
さて、下の資料をご覧ください。こちらは、総務省が全国の自治体に発出した「地方公共団体におけるテレワーク推進のための手引き書」(令和3年4月)からの抜粋です。私は、この手引き書作成のお手伝いをしました。
ここで強調しているのは「テレワークは在宅勤務とイコールではない」ということです。「スモールスタートでよい」という点も強調しています。
次の図をご覧ください。こちらは私が考えるスモールスタートでテレワークを実現すべき理由を列記したものです。
ランニング経費を払っている以上は、すでに整備したテレワーク環境を活用せずに遊ばせておくのはムダ。公民館や支所等をサテライトオフィスとしてテレワークができる環境をつくり、そこで試行(スモールスタート)を行うことは十分に可能だと思います。
詳しい解説は別の機会に譲りますが、 総務省はサテライトオフィスにおいてはマイナンバーを含めた機微情報を扱ってもいいというような通知も出しております。自席でなくてもサテライトオフィスで効率的に働けるかどうかを身をもって体験する。そうしたチャレンジをする価値は高いと思います。
今回のまとめ
まとめます。自治体のテレワークに対する向き合い方は、
- パンデミックや大規模災害へのBCP対策としてテレワーク構築は必須
- テレワークを在宅勤務だけと考えず、日ごろから使ってみる
- 今後の自治体サービスにアウトリーチは必然。そこでの活用を考える
この3点がポイントになってくると思います。
テレワークをやってみることによって、アナログに頼らない、DX時代にふさわしい働き方へ転換するきっかけにもなるでしょう。ともかく、従来のように窓口で住民を待つのではなく、自治体職員が住民の元に出向く。このようなアウトリーチにテレワークを活用していくことは、ますます強く望まれるようになっていくと思います。
(「《自治体DX推進計画における“6つの重点”~6》セキュリティ対策の徹底」に続く)
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■ 髙橋 邦夫(たかはし くにお)さんのプロフィール
電子自治体エバンジェリスト
合同会社 KUコンサルティング 代表社員
豊島区 元CISO(情報セキュリティ統括責任者)
1989年豊島区役所入庁。情報管理課、税務課、国民年金課、保育課などに勤務。2014~2015年は豊島区役所CISO(情報セキュリティ統括責任者)を務める。
2015年より総務省地域情報化アドバイザー、ICT地域マネージャー、地方公共団体情報システム機構地方支援アドバイザー、文部科学省ICT活用教育アドバイザー(企画評価委員)、2016年より独立行政法人情報処理推進機構「地方創生とIT研究会」委員。2018年豊島区役所を退職、合同会社KUコンサルティングを設立し現職。
豊島区役所在職中、庁舎移転に際して全管理職員にテレワーク用PCを配布、また庁内LANの全フロア無線化やIP電話等コミュニケーションツールを用いた情報伝達など、ワークスタイルの変革に取り組む。庁外では、自治体向け「情報セキュリティポリシーガイドライン」、教育委員会向け「学校情報セキュリティポリシーガイドライン」策定にかかわる。
自治体職員としての29年間、窓口業務や福祉業務を経験する一方、情報化施策にも継続的に取り組んでおり、情報化推進部門と利用主管部門の両方に所属した経験を活かし、ICTスキルとともにDX推進のための組織の問題にもアドバイスを行っている。一関市のほか、深谷市、飯島町など10を超える自治体のアドバイザーを務めるほか、電子自治体エバンジェリストも務める。
著書に『DXで変える・変わる 自治体の「新しい仕事の仕方」』(第一法規)がある。
〈受賞歴〉
- 2015年:総務省情報化促進貢献個人等表彰において総務大臣賞受賞
- 2019年:情報通信月間記念式典において関東総合通信局長表彰(個人)受賞
- 2022年:情報通信月間において総務大臣表彰(個人)受賞
〈連絡先〉kuconsul@ybb.ne.jp
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