予算承認から3ヵ月で運用開始
働き方改革を促進するテレワークは大企業を中心に数年前から日本でも導入が始まり、いわゆる“コロナ禍”をきっかけに、民間企業だけではなく、中央省庁や都道府県、さらに大規模自治体や特別区の一部など行政の間でも浸透し始めています。
今回、東村山市が導入するのは民間企業が提供する「サービス利用型自治体向けテレワークソリューション」で、あらかじめセキュア環境などが組み込まれたキッティング済のPCを月額利用する、というものです。自治体が求める高セキュアな一般的なテレワークシステムの場合、要件定義から運用開始までおよそ半年から1年程度かかるとされますが、同市が採用したサービス利用型ソリューションでは「専用PCが納品され、運用開始するまで約3ヵ月程度。既存のICT環境への変更も最小限」(同市情報政策課の堀口 裕司 課長)にとどまります。
そのため、今回のテレワーク環境整備のための予算が市議会で承認されたのは6月末だったものの、9月から運用開始するという“離れ業”が可能になりました。
当初は20台体制でスモールスタートし、小規模に運用しながら庁内の運用ルールや体制を調整。2020年12月から専用PC80台を追加し、今年度は合計100名規模でテレワークを本格運用する計画です。
運用費用は通年で1300万円の見込み
東村山市が導入したシステムの概要は、端末についてはデータを残さず、デバイスやアプリも制限される安全性の高い利用制限付きPCで、インターネットには接続しない閉域VPNによるセキュア通信および許可された庁内システムのみアクセスできるLGWANアクセス制御されたもの。総務省のセキュリティガイドラインに準拠し、高いセキュリティ水準を確保しています。
あらかじめ必要となる設定をキッティングして納品されるほか、故障時も再キッティングして納品。廃棄する際の安全性も担保されており、調達・運用・廃棄の各フェーズは必要最低限の工数で済むそうです。
年度途中となる9月からの運用費用として約800万円を予算計上し、「年間を通じて100台利用した場合は約1300万円程度」(情報政策課の堀口課長)になる見込みです。
課単位ではなく「業務単位」で実施
9月からテレワーク勤務を行うのは情報政策課の職員が中心ですが、「基本的に課単位ではなく業務単位で検討し、テレワークをしても支障がなく生産性が上がる業務を担当している職員から(全庁横断的に)テレワークを開始する」(東村山市の渡部 尚 市長)方針です。窓口対応など物理的にテレワークが困難な業務や機密性の高い個人情報を取り扱う業務などはテレワークの対象から除くことにしており、「当面、20~25%がテレワークの対象になっていくと思う」(渡部市長)としています。
さらに、「将来的には市民が市役所に来なくても遠隔で行政手続きが完結できるようにするなど、他の分野でも積極的にICT化を取り入れていきたい」(渡部市長)考えです。
“自治体”を止めない
東村山市では新型コロナ感染症拡大による緊急事態宣言に伴い、2020年4月から5月末まで、テレワーク環境がなく、セキュリティ上の制約により業務用PCの持ち帰りも不可という困難な条件のもとで電話やメールを活用しながら職員の交代制による在宅勤務を全庁的に実施していました。
その際の教訓から、新型コロナ第二波への対策やウィズ・コロナ、アフター・コロナ時代を見据えた新たなワークスタイルに対応したICT環境を整備する一環として、今回のテレワークシステム導入を決断しました。
同市では本格運用により、在宅勤務時においても生産性を落とすことなく業務を行うことができる環境をいち早く整え、災害時等における業務継続性の確保や働き方改革のさらなる推進を目指すことにしています。
基礎自治体でもいよいよ始まった本格的なテレワーク時代。その先駆的なモデルケースとなる東村山市の取り組みは、他の自治体にとっても参考材料が多いと言えるのではないでしょうか。
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電話:042-393-5111(代表)内線:3311
東村山市 経営政策部 情報政策課
課長 堀口 裕司