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自治体DXを本気で考えている職員さんに読んでほしい話。#2
《ありがちな自治体DX “3つの落とし穴”》

デジタル化のために必要な「起点」の発想

    【自治体通信Online 寄稿記事】
    自治体DXを本気で考えている職員さんに読んでほしい話。#2
    (xID株式会社 執行役員 官民共創推進室長/元静岡県庁 職員・加藤 俊介)

    「アナログ対応の方が安上がり」の嘘

    読者の中には職場でデジタル化・DX推進を任された方もいるでしょう。主担当ではなくともデジタル化に関わる人は少なくないかと思います。今やデジタルに触れることなく仕事をしている人の方が稀かもしれません。

    みなさんが、デジタル化を考えるうえでどこをスタート地点とするか、「起点」の発想が重要です。

    例えば、以下などです。

    • 手段ではなく「目的起点」で考えること
    • アナログをデジタルに置き換える発想ではなく、「デジタル起点」で、デジタルでこそ実現できる「あるべき姿」から考えること
    • 事業の実施者ではなく、「ユーザー、住民起点」で考えること

    デジタル化の目的は様々だと思いますが、プロジェクトをスタートする際に組織全体で「目的」を明文化し、意識を統一しておくことが大切です。

    デジタル化の目的のひとつにコスト削減があります。

    ここで削減対象とするコストも短期的なコストだけでなく長期的なコストを意識するなど、組織で目線を合わせておくとよいでしょう。

    そうでないと、デジタルへの移行コストやツール導入コストなどが発生するため、「短期間での費用対効果をみてデジタル化は実施しない」という判断になりかねません。

    職員がこれまでどおりアナログで対応した方が安上がりに見える場合があります。その際、「職員の人件費はタダではない」ことや、システムでできる仕事を職員にやらせるのは、その人のやりがいや、やる気、成長機会をも奪ってしまい、長期ではコスト高になる可能性があることは盲点になりやすいので留意が必要です。

    「起点」を誤ると待っているのは落とし穴…

    「コスト削減」だけを目的にすると逆に進まない!?

    また、デジタル化でコストや時間を浮かせた場合、その余剰をどこに充てるかを事前に考えておくことも重要です。何のためにコスト削減を行うのか、一段掘り下げた「目的起点」とも言えます。

    「コスト削減をする」という目的で止まっている場合、何のために、どれだけのコストを削減すればよいのかも曖昧になりやすく、削減への力が働かないばかりか、削減してもすぐに同じような仕事で埋め尽くされることになります。

    私はここ数年リモートワークが中心で、自治体の方との打合せもほぼオンラインで実施しており、非常に効率的な働き方になっていると感じます。しかし、こなせる業務「量」、打合せの「量」が増えただけではないかと、課題を感じることがあります

    もっと価値のある取組みがあるのではないか、プライベートの時間を含めて、効率化した時間を何に使うか、身近な例をみても「目的起点」は非常に大切な視点だと考えます。

    「アナログからの置き換え」に違和感を

    デジタル化を進める際に、現在のアナログの業務手法から考えるのではなく、「デジタル起点」で考えることで、結果は大きく変わってきます。

    住民票の請求手続きを例にあげます。

    これまで、役所の窓口において書面で請求していた住民票をオンラインで申請できる自治体も増えてきました。住民はわざわざ休暇をとって役所窓口に行くことなく、スマホから申請ができるので便利そうです。

    しかし、申請が電子化されても、発行される住民票は紙のままであるため、受け付ける役所側では窓口での申請と同じように紙の住民票を発行します。

    窓口における申請であれは紙の申請書をそのまま受付処理をして、対面で住民票を手渡せばよかったものが、オンライン経由の申請では新たに住民票を郵送するという作業が加わり、役所目線では却って業務が増えています。

    ここで、「そもそもデジタルでアナログの住民票を取り寄せる必要があるのか?」という“デジタル起点の発想”が重要です。

    住民票をオンラインで請求する際には、必ずマイナンバーカードを活用します。マイナンバーカードは最高位の身分証であり、オンライン上で「私が私である」ことを証明できます。

    住民票という紙の身分証をオンライン上の身分証で取り寄せるのではなく、マイナンバーカードを活用して住民票を発行せずにその先の住民利用まで完結させられないか。このような発想が大事になります。

    これは将来の対応も含むやや大きな例ではありますが、これくらい大胆に、デジタル起点の発想で向き合うことで、アナログ業務をそのままデジタルに置き換えることの違和感を持つことが大切だと思います。

    想像力を働かせよう

    冒頭で列挙した「ユーザー・住民起点」の発想については、また別の回で具体的に記載できればと思いますが、デジタル化を進めたい人の視点ではなく、ユーザー(使う人)の視点をもつことです。

    例えば、住民はどのような流れでデジタルサービスを利用するのか、その前後まで想像することが大切です。一部の利用時点だけをデジタル化しても前後との接続が悪く、「知られない」「使われない」という落とし穴があります。

    デジタル化のプロジェクトを進めるうえでは、「目的起点」「デジタル起点」「ユーザー・住民起点」など発想のスタート地点を意識するとよいのではないか思います。

    (「《なくすべき線引き、引くべき一線》実務で役立つ『デジタルの境界』の話」に続く)

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    ■ 加藤 俊介(かとう しゅんすけ)さんのプロフィール

    xID株式会社 執行役員 官民共創推進室長/元静岡県庁 職員
    公共政策学修士。静岡県庁職員として実務経験後、デロイトトーマツにて自治体向けコンサルティングに多数従事。自治体マネジメントに関わる分野を専門とし、計画策定、行政改革、BPR等に加えシェアリングエコノミーなど新領域開拓も経験。xID参加後は、官民共創推進室長として、自治体向け戦略策定、官民を跨ぐ新規事業開発を担当。現在は住民へ確実に届くデジタル通知サービス“SmartPOST”を推進。兵庫県三田市スマートシティアドバイザー。
    <Twitter>加藤俊介@xID:@ShunsukeKato_
    <連絡先>info@xid.inc

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