「未来志向のDXを大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げる」ための省庁、デジタル庁が今年9月に開庁しました。民間におけるDXの活用はさまざまなフェーズで進展しており、官におけるDX活用も少しずつですが着実に始まっています。DXで今後私たちの暮らしがさらにスマートに、便利になることが大いに期待されます。
そんな世の流れに先行し、ICTを用いた施設管理を取り入れて住民も職員もハッピーになっている先進自治体があるそうです。その詳細を、スマートロックによる公共施設の遠隔管理を数多く手掛ける 株式会社構造計画研究所の鄭愚耕氏に伺いました。
■持続可能で安全・安心な仕組みをスマートロックで構築
-担当されている業務を教えて下さい。
エンジニアリングコンサルティングを主とする企業で、2017年に新規事業としてスタートしたクラウドにつながるスマートロック、「RemoteLOCK(リモートロック)」のマーケッターとして活動しています。
主に西日本地域を担当しており、大阪から沖縄まで、スマートロックに興味を持った方に製品の概要や事例を紹介したり、導入までの流れや運用に関する質問にお答えし、お客様にあった運用方法をご提案しています。最近は特に自治体の方と接することも多く、政令指定都市レベルから町や村まで、自治体のDXに向けた取り組みを支援させていただいてます。
-スマートロックとはどんなもので、自治体ではどのように利用されていますか。
スマートロック関連で弊社がご提供しているサービスは大きく2つです。
一つ目は公共施設の予約管理システムで「まちかぎリモート」というクラウドサービスです。もう一つはクラウド上で入退室を管理できる暗証番号式のスマートロック「RemoteLOCK(リモートロック)」です。
大きな自治体ですと、既に予約管理システムを導入されているところも多いですが、予約だけではなく、ドアに取り付けられた鍵と合わせて予約や支払い、鍵管理までを一元管理できるユニークなサービスを弊社では提供しております。
実際、インターネットで施設予約を管理されている自治体でも、鍵そのものは人が介在し、対面でやり取りされている自治体がほとんどです。新型コロナの感染対策を今後も継続せざるを得ない中で、施設の貸出しを完全非対面、無人対応にするところまでは実現できていないのが実状です。
ただ、そういった状況の今だからこそ、持続可能で安全・安心な運用方法で、管理者にとっても利用者にとっても便利な仕組みを構築することは大いに意義があるのではないでしょうか。実際に、これらのシステムを導入された自治体職員や指定管理者のみなさまからは、「自分たちの手間もそうだが、施設を利用する住民のみなさんの手間が減り、管理者側、利用者側、共に負担が減った」という話をよく聞きます。
施設への出入りは暗証番号で管理しているので、入室時の鍵の受け取りや返却の度に窓口に行く必要がありませんし、また、窓口の受付時間を気にする必要もありません。管理人も常駐の必要はないので、利用者側も管理側も利便性向上が実現しています。
- 実際に導入されている自治体と活用例を教えて下さい。
はい、例えば大阪府の池田市様や茨城県の小美玉市様があります。池田市様では、「市民サービスの品質向上と施設の省人化による行政側の負担の低減を図ること」を目的としてリモートロックおよび「まちかぎリモート」を導入されました。
消防本部の研修施設を、地域の方を対象にした貸しスペースとしても運用されています。施設では、まちかぎリモートでオンライン予約を受け付け、予約内容に紐付けてリモートロック解錠用の暗証番号を自動発行し、利用者に通知されています。
また、通常の貸しスペースの予約管理だけではなく、災害時に避難所の開放をスピーディーに行うといった点も視野に入れた運用を構築されています。リモートロックなら、停電が起きても通信環境が切れても避難所としての鍵管理には影響を与えず運用いただける災害に強い仕組みですので、安心してご利用いただいています。
小美玉市様では、小学校の体育館などの市民貸出しや施錠管理を、それまでは教職員や民間に委託されていました。学校の統廃合で管理をどうするかといった問題が浮上していたところに、新型コロナウィルスが流行しました。
そこで、「暗証番号を押すとカギが開く」という、誰にでも理解しやすいリモートロックの仕組みを取り入れられました。それまで鍵の貸出しにあたって紙の予定表と照会するなどの管理の手間がかかっていたところも、予約システムとリモートロックを連動させることで省人化に成功されています。
地方では廃校になった校舎が少なからず存在し、取り壊しが出来ない中、どう有効活用すべきか頭を悩ませている自治体も多いと思います。鍵管理のためだけに人員配置をしなくても廃校施設の貸出しをおこなえますので、実際、こういったお問い合わせをいただくことも増えています。
- 鍵管理のスマート化により、どの程度のコスト削減が実現できるのでしょうか?
そうですね、例えば小美玉市様では、従来セキュリティ対策にかかっていたコスト、すなわち、施設管理のための委託費や人件費を約3割削減されました。その際、全ての管理を無人にするのではなく、不要なものにだけ見直しをかけ、最低限の委託や必要な人材は残されています。
また、文科省提唱のGIGAスクール構想により、オンライン教育やインターネット環境の構築が進み、Wi-Fiの環境を構築されている学校が全国に広がっています。
通信環境を整備する段階は終えたものの、その環境をどのように有効活用するか、課題として感じられている各自治体も多く見受けられます。山口県宇部市様では、Wi-Fi環境を有効活用する施策の一つとして、地域住民に開放している学校体育館施設にリモートロックを導入して施設管理を効率化する、といったアプローチをとられていらっしゃいます。
直接的なコストのほかにも、システム上で入退室時間の履歴を確認できるため、利用マナーの向上やセキュリティの向上にもつながるなど、導入によって改善できる点は数えきれません。ご参考までに、導入前と導入後の施設管理の比較図をご紹介します。
■住民も職員もハッピーになるためには欠かせないアプローチ
- 新しい技術や手法を抵抗感なく取り入れるコツなどあれば教えて下さい。
リモートロックは「暗証番号式」のスマートロックですので、スマホをお持ちでない方にももちろんご利用いただけますし、アプリをインストールする必要もありません。老若男女、さまざまな方の利用を想定されている公共施設の管理には最適で、みなさんに直感的にご利用いただけます。
導入された多くの自治体様で、スマートロックを設置してから貸出し開始までの期間に、管理者向けに説明会を開催されています。また、「ITは難しい」「新しい技術への抵抗感がある」などの印象を持っている住民の方にも、「何か起きた時の避難所の鍵管理にもお役に立ちますよ」など丁寧に説明会を開催され、地域住民と合意形成されているケースが増えてきております。
利用者に対する働きかけを早い段階で行い、そのフィードバックを得ながら活用を促進されていることが多く、これこそ、住民も職員もハッピーになるためには欠かせないアプローチだと、自治体担当者のみなさまに日々、学ばせていただいています。
- 最後に、今後の展開について教えて下さい。
はい。全国には1,800もの自治体があります。日々、新たなお問い合わせをいただき、導入実績も着実に増えていますが、情報をお届けできていない自治体もまだまだ多いと認識しています。
そういった自治体に対して、公共施設の予約・鍵管理のスマート化によるメリットや活用事例をご紹介をしなければという使命感を持っています。これまでの経験から、リモートロックを導入された自治体様では、100%、導入の効果を出され活用されていると言えますので、今後も伝道活動を続け、住民の方にも自治体の方にも、「あってよかった」とおっしゃっていただける地域を日本全国に広げていきたいと思います。
【システム・製品詳細】
■公共施設予約システム まちかぎリモート
■スマートロック RemoteLOCK
関連リンク
■公共施設の管理業務と住民の利用を 手軽、そしてスマートに。
■DXで住民の利便性アップと省力化を実現。茨城県小美玉市 公共施設の予約・貸出をオンライン化
■兵庫県芦屋市との 「ICTを活用した持続可能な公共施設の管理に関する基本協定」の締結について
■エキスパートに聞く、ICTで公共施設の管理省力化・無人化のすすめ
株式会社構造計画研究所
設立 |
1959年5月6日 |
資本金 |
1,010百万円 |
本所所在地 |
東京都中野区本町4丁目38番13号 日本ホルスタイン会館内 |
従業員数 |
611名 (※2021年9月8日時点) |
上場市場 |
東京証券取引所 JASDAQスタンダード |
URL |
https://www.kke.co.jp/ |