前例のない挑戦
市民参加型まちづくりの土壌をつくる
神戸市役所(兵庫)
企画調整局つなぐ課 特命課長
秋田 大介さん
都市計画担当時代に将来構想の策定に携わり、「行政だけじゃ街は変われない」という信念のもと、ワールドカフェ方式の300人会議など市民参加型の数々のイベントを企画。市民と行政が本気でまちの未来を語る場を設定し、同じ夢を語れる将来ビジョンを生み出しました。将来ビジョンのプロモーションでは、1,000組の市民に未来を語ってもらう「1000SMILE project」を立ち上げ、市民参加型まちづくりの土壌をつくりました。
八面六臂の地域活性化活動
加西市役所(兵庫)
地域振興部きてみて住んで課 課長補佐
阿部 裕彦さん
神戸大学の研究所が開発した新種じゃがいも「はりまる」の生産者集めから販売ルート開拓を行い、県外企業に働きかけてパンとして加工し商品化。県在住の天才小学生デザイナーに声をかけ、靴の商品化を実現。県立高校ではボランティアで体育講師を務め、休日夜間はシニアの介護予防の集いの場を運営、健康指導も行っています。その他、障がい者の余暇活動の場所づくりとして、無料ヒップホップダンススクールを県内で3つ開催しています。
「カッパ」をまちの“顔”に
福崎町役場(兵庫)
地域振興課 課長補佐
小川 知男さん
当時の町長から、1日に10人ほどしか訪れない辻川山公園に「観光客を呼べ」と命じられ、ゆるキャラブームの真っ最中に、独断で公園の池から飛び出すめちゃくちゃ気持ち悪い河童の像を造りました。役場の上層部は「税金だぞ!」とカンカンでしたが、「絶対に人が来るから心配いりません」と応じ、13年度に約25万人だった観光客は40万人超へ。公園のお土産として、プラモデルの原型を制作。発売5日で売り切れ、アマゾンのベストセラー1位に輝きました。
枠を超えたアーティスト系公務員
岐阜市役所(岐阜)
教育委員会 教育政策課
川那 賀一さん
「マニュアル人間」「センスがない」といった公務員のイメージアップを図るべく、プロデューサーやインスタグラマー、画家、ダンサーなど地方自治体の枠を超えた社会的発信を行うアーティスト系公務員として活動。公務員のクリエイティブ活動を発信するコミュニティの代表も務めています。ソフトバンク社のCSR統括部に2年間出向し、全国の自治体と連携し、社会貢献事業の推進に貢献しています。
地域に飛び出す
若い市民の「やってみたい」を支援
尾道市役所(広島)
福祉保健部子育て支援課 専門員
倉田 麻紀さん
2014年、若者が「やってみたい」と思うプランを実現するために「若者チャレンジ講座」を企画。一方で、ひとりの市民として講座で繋がった仲間や同僚とともに約1年半、毎月第3金曜日に「オノミチふらっと交流会」を開催。尾道の魅力を発掘する「よもそろガールズ」等の取組みにも関わり、縁の下の力持ちとして地域を支えています。地域に出ることが億劫な公務員が多い中、すれ違う人誰しも「マキさん、マキさん」と気軽に声をかけるそうです。
自治体広報紙の「改革の旗手」
三芳町役場(埼玉)
秘書広報室 主査
佐久間 智之さん
ゴミ箱行きだった広報紙「広報みよし」を改革。独学で企画やデザインを学び、印刷以外の全工程をひとりで制作し、全国広報コンクールで日本一の内閣総理大臣賞を受賞しました。また、予算ゼロの中でプロモーションも担当し、公務員の枠を超えて「ハロー!プロジェクト」とコラボを実現。現役アイドルの写真集を、現役公務員が撮影から編集まで行い出版。講座や著書を通じて、全国自治体の広報担当職員のスキル向上に貢献し、利益の一部を三芳町や災害被災地に寄附しています。
「防災大道芸人」として出没する現役消防士
横浜市消防局(神奈川)
消防訓練センター 管理・研究課 主任
瀬戸 勇さん
大道芸や手話を駆使して「全ての人にわかりやすい防災」を啓発する現役の消防士。出初式や消防署のイベントなどに防災大道芸人「しょうぼうず」として出没し、市民の自助、共助の意識を高めています。また、のべ700人を超える初任消防士に、障がい者等のさまざまな要救助者に対する対応の意識向上の機会を提供。さらに、耳が聞こえない方にも情報を届けるため、手話と字幕付きの火災予防広報動画を制作し、YouTubeの横浜市公式アカウントから配信しています。
大手IT企業との連携を次々実現
神戸市役所(兵庫)
企画調整局 つなぐ課 特命係長
長井 伸晃さん
2015年に神戸で「SIGGRAPH ASIA」というCG関連の国際イベントへの参加を促す共催企画を民間委託せずに開催。37企業・大学等が参加する中、ブースのデザインからコンテンツを自主運営。その後、NTTドコモ・アシックス・ヤフーと次々に連携、実証実験を経て一部を社会実装しました。当時のInstagram最高製品責任者が神戸市長を訪問する橋渡し役となり、自治体初となるフェイスブックジャパンとの事業連携協定の締結につなげました。
社会課題の解決にぶつけた情熱
“痛車”でにぎわいを創出
垂井町教育委員会(岐阜)
生涯学習課 文化会館管理係長
中村 文彦さん
「痛車イベント」という、役所の中で理解を得るのが難しいイベント開催を実現。町長向けに痛車を説明し、イベント内容、会場配置図、宣伝方法、コンテスト風景や準備品、アニメとのコラボによる相乗効果にいたるまで緻密に練られた14ページの企画書を作成。活動は勤務時間外のみ、人的支援が無く、予算もわずかな費用補助というなか、多くの人に気軽に参加してもらいたいと参加費無料にこだわり実現。1年目64台、2年目118台が町に集まりました。
地元のB級グルメを全国区に
越前市役所(福井)
市民福祉部社会福祉課 主査
波多野 翼さん
越前市のB級グルメ「ボルガライス」の普及に尽力。活動を始めた10年前は、ボルガライスを知っている人は地元でも少なく、提供する店も5店舗のみでしたが、現在では20店舗以上に増加。一般の方から支援金を集め、地元の有名漫画家「池上遼一氏」を動かし、ボルガライスのポスターを描いてもらいました。それらの活動によって、東京・大阪・名古屋のお店でも食べることができ、コンビニ各社のお弁当、国際線の機内食、学校の給食に採用されるに至っています。
(参照:街の活性化に必要な「新しい自治体職員像」)
民間事業者が殺到した公共施設の新しい使い方を創出
常総市(茨城)
産業振興部 農政課 主事
平塚 雅人さん
日本で初めて公共施設をトライアルで無償貸し出し、民間事業者のアイデアを試してもらう「トライアル・サウンディング」を2つの公共施設で開始。民間事業者から問い合わせが殺到し、公共空間の新しい使い方を生み出しました。公務員として業務をする傍ら、プライベートではフォトグラファーとして地域で開催されるマルシェの撮影などを行っています。5,000人以上のフォロワーのいるインスタグラムなどを活かして、地域コミュニティのハブとしても貢献しています。
地元企業の可能性を開花させる
八尾市役所(大阪)
経済環境部 産業政策課 係長
松尾 泰貴さん
世界初のものづくりエンターテイメント施設「みせるばやお」の設立に中心的な役割を果たしました。「みせるばやお」では、ものづくりの楽しさなどを子どもたちに伝えるワークショップや、コラボレーション、イノベーションの素地となる企業間交流を促すためのイベントを実施。設立当初35社だった参画企業は、設立からおよそ1年が経過した2019年9月末現在の114社に急増。来場者数も4万人を超えたほか、企業間コラボレーションは45件、うち8件は商品化し、販売を開始。著名ベンチャー企業の代表者やデザイナーなどを地域企業につなげ、新たな事業展開に繋げています。
(参照:街の活性化に必要な「新しい自治体職員像」)
「骨髄バンク」の普及に奔走
美馬市役所(徳島)
保険健康課 課長補佐
山口 明大さん
2001年に脇町役場(徳島、現・美馬市)に入庁。入庁してわずか2ヵ月後に、慢性骨髄性白血病を発症。1年後、骨髄移植による治療を経て生還。自分の命を救ってくれた骨髄バンクを世の中に広めたいとの想いで、プロ麻雀士の資格を持つほど大好きな「麻雀」を通じたチャリティイベントを発案し、2005年から現在までに東京、大阪などで20回以上のイベントを開催しました。延参加人数は2,500人を超え、骨髄バンク支援団体に約700万円を寄附しました。
本記事「自治体職員が選んだ“13人の輝く地方公務員”の肖像」のバックナンバー
PART1:街の活性化に必要な「新しい自治体職員像」