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DXへのあるべきアプローチとは?《後編》

    DXへのあるべきアプローチとは?《後編》

    【自治体通信Online 寄稿記事】
    自治体DXの先にある公務部門ワークスタイルの姿 #4
    (公務部門ワークスタイル改革研究会 研究主幹・箕浦 龍一)

    DXは省力化を進めるだけのものではない―。前編では「その業務プロセスは、そもそも必要か」を見直す視点が重要であることを指摘しました。後編ではさらに踏み込んだ“自治体DXの世界観”を公務部門ワークスタイル改革研究会 研究主幹(一般財団法人 行政管理研究センター)を務める箕浦 龍一さん(元総務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)がお届けします。行政に求められる変容(トランスフォーメーション)とは?

    本当のDX技術の活用のあり方

    DXという世界観の中で、検査や監査を巡っては、どういうアプローチを取ることが望ましいのでしょうか?

    DXの世界では、様々な技術が正確・迅速に物事を処理してくれることを前提に、人間は人間ならではのクリエイティブな活動にできるだけ注力できるよう、本来目指すべき目的に向けてアプローチすべきです。

    検査や監査が何のために行われるのかと言えば、「本来間違いや不正があってはいけないものに、間違いや不正がないようにすること」です。

    大事なのは「本来間違いや不正があってはいけないものに、間違いや不正がないように確認すること」(検査・監査)は、目的ではなく、「間違いや不正がない」状態にたどり着くための手段に過ぎない、ということです。

    であれば、DX的なアプローチとしては、例えば、業務サイドで、そもそも人為の誤りや不正が行われないような技術活用が行われさえすれば、後刻人為で検査や監査を行わなくても良くなる、ということになるわけです。

    無用な遠回りをしていませんか?

    様々な形でデジタル技術が活用可能な世界にあっては、業務段階でデジタル技術を活用し、これを今まで通りの検査・監査を行う前提で検査・監査にもデジタル技術を活用する、というアプローチをとることは、確かに正確性は今まで以上に担保されるかもしれませんが、実は無用な遠回りをしていることになりますし、コストの面からしても、正確性を期すために、無用な二重投資をしていることにほかなりません。

    DX時代には、実は如何に検査・監査をしなくても正確性が担保されるか、という点こそ、目的に到達するためのストレートなアプローチであることがお分かりいただけるでしょうか。

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    効率的にコーナーを曲がる方法を考えるより直線化に着手

    ボトルネックは残置される“昭和の形式主義”

    最後に、本連載第3回のハンコの例に関連して少しだけ付言すると、自治体によっても取り扱いが区々(まちまち)となっている内部の「決裁」のルールや対象なども、必ずしも現代の組織運営にとって適切なものとはなっていないのではないでしょうか?
    (参照記事:DX~トランスフォーメーションの本質とは?)

    デジタル時代には、デジタル以前の時代に比べて、職員が業務で処理しなくてはならない情報量が圧倒的に増加しています。そのような中で、決裁の対象は、昭和の時代のままです。

    形式だけ決裁、稟議という形で存置されているものが多すぎるのではないでしょうか。意思決定に必要な資料をそれぞれ個別に文書化して添付することが求められていたり、その結果として行政部外の者にまで、過剰に文書を提出させる手間とコストを求めていたりする。意思決定のための証拠(添付書類)に関しては、厳格な服務規律の下に置かれている職員が記録する文書でもって、相当程度代替可能なはずです。

    意思決定とは必ずしも直結しないような些末な文書や情報についても、その都度いちいち決裁を要する自治体もあると聞きます。そのような細かい経緯に関わるものについては、最終的な意思決定の段階で添付したり公文書として保存管理したりすることで、代替可能となるはずです。

    こういうところも見直していく中で、本来組織が行うべき「意思決定」を的確・迅速に行えるよう、文書管理(決裁)規程を改めて見直し、「決裁」という行為を今日的に合理的なものに変えていくことが必要ではないかと思います。

    (「DXをめぐる景色《役所のおかしな業務フロー》」に続く)

     ★ この連載の記事一覧

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    箕浦 龍一(みのうら りゅういち)さんのプロフィール
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    公務部門ワークスタイル改革研究会 研究主幹(一般財団法人 行政管理研究センター)
    一般社団法人地域活性化センターシニアフェロー
    元総務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官
    総務省 行政管理局時代に取り組んだオフィス改革を中心とする働き方改革の取組は、人事院総裁賞を受賞(両陛下に拝謁)。中央省庁初の基礎自治体との短期交換留学も実現するなど若手人材育成にも取り組む。
    官僚時代から、働き方、テレワーク、食と医療など、さまざまなプロジェクト・コミュニティに参画。
    2021年7月に退官。一般社団法人 日本ワーケーション協会特別顧問、一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム理事も務める。
    <連絡先>ryuichi.minoura.wkst@gmail.com
        (@を半角にしてください)

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