【自治体通信Online 寄稿記事】
社会課題を解決する新しい政策「スポーツ×自治体」#1(宮代町 職員・伊藤 遼平)
地方行政においても公民連携が重要になっているように、いま自治体には「外部の知恵と力」を行政運営や地域づくりに活用することが試されています。「でも、どうやって…」。こうした疑問を抱えている自治体職員も少なくないでしょう。そこで、ひとつのヒントとして“ある町の挑戦”を紹介します。スポーツチームとのコラボで地域に新しい価値を創造した宮代町(埼玉)職員・伊藤遼平さんに、実施した一連の取り組み・事業の“裏側”等を連載してもらいます。
はじめまして!
みなさま初めまして! ご縁がありコラムを連載させていただくことになりました。埼玉県宮代町の伊藤遼平(いとう りょうへい)です。
埼玉県にある人口約33,000人の宮代町で、現在入庁6年目です。4月から3部署目となる教育委員会で働いています。文章を書くことはあまり得意ではないのですが、今回お声がけをいただきましたので、私のキャリアや経験、想いを書き記すことで、ひとりでも多くの若手公務員の頑張るヒントになればと頑張ります!
また、自治体とスポーツ業界の垣根が低くなり、地方にも「スポーツの力で夢や感動が届く」ようになれば嬉しいです。みなさんよろしくお願いいたします。
プロスポーツ界から地方自治体職員へ
コラム連載の機会をいただいたきっかけとして、公務員業界でも珍しい私のキャリアを紹介します。
自治体職員として働く前に、JリーグのFC東京というスポーツチームでクラブスタッフの仕事をしていました。みなさんの周りにも民間企業から転職してきた職員はいると思いますが、Jクラブから転職してきた職員はなかなかいないのではないでしょうか。
小さい頃からスポーツ大好き少年でも、スポーツ選手に会えない田舎街で生まれ育ちました(生まれは埼玉県の白岡市です)。どうしてもスポーツに関わる仕事がしたいと夢を描き、念願のスポーツクラブに就職しました。
クラブでの仕事は忙しかったですが、充実していました。特に、ホームタウンの小学校訪問や、国際貢献事業で参加したネパールでの活動などは、地域のみなさんの笑顔、参加者の子どもたちの笑顔や応援が自分の力になりました。
そんな時ふと思ったんです。故郷では見ることのなかったスポーツチームが「地域密着」の活動をすることで生まれる笑顔の景色を、逆の立場で実現してみたいと。
そして、勉強嫌いで筆記試験の入試を受けたことのなかった私が猛勉強。公務員試験を突破して、今、自称「スポーツ系公務員」として活動しています。
その活動を仕事に結び付けて、スポーツチームや選手の地域に対する想いを、地域に散在する社会課題を解決に繋がる事業へと変換し実施してきました。
2年間務めた子育て支援センターや児童館の担当では、約15チーム、14人の日本代表、12の競技団体や連盟が地域に遊びに来てくれました!(新型コロナ感染拡大での延期分を含みます)
この連載で書きたいこと
「スポーツチームや選手との連携って難しそう」
「高額で協力してくれなさそう」
「自治体との連携が上手くいかない」
など、自治体職員から、スポーツチームからそれぞれの課題を耳にすることがあります。
しかし、私が過去に在籍していたクラブや交流のあるクラブスタッフの方々は地域に対して熱い想いを持ち、選手は地域貢献活動に対して熱心に取り組んでいます。地方公務員にも劣らない地域愛を持っています。なかなかここまで地域を主語に、全力で活動している民間の組織ってそう多くはないですよね。
スポーツチームの敷居を高く設定する必要はないのです。
「スポーツ×社会課題解決」の可能性
恐らく多くの方はスポーツチームがどんな想いでどんな活動をやっているかを知らないと思います。
調べようにも、どんなに素晴らしく地域に価値をもたらした社会貢献活動も、役所のネット環境では「スポーツ=娯楽」のジャンルに分類されて閲覧フィルターがかかってしまうのです。
4月からスポーツ振興担当に配属になった私も5月末にやっとフィルター解除されたばかり(笑)
そこで、このコラム連載を通して、プロスポーツチームスタッフから公務員に転職した目線から、公共政策(地域)に活かせるスポーツの勝ち負けだけじゃない価値を伝えていこうと思います。
具体的には、主に宮代町で私が担当した実施事業の
①「スポーツ×社会課題解決」の実践例
② 企画、提案から事業実施まで
③「スポーツチーム×自治体」という新たな公民連携が地域にもたらしたもの
といったことです。
実施事業の紹介の他にも、様々な競技のスポーツチームが地域で行っている社会課題解決型の社会貢献活動の紹介や、スポーツクラブスタッフとの対談など、スポーツ系公務員ならではの連載をしていきますね。
次回「Jリーグと聞いて思い浮かべることは何ですか?」
みなさんは、上の見出しの問いに対してどんな答えをもっていますか?
次回のテーマは、Jリーグの社会連携活動「シャレン!」です。「シャレン!」を知っている方はどれぐらいいるでしょうか。
私が大好きなJリーグの「シャレン!」活動。次回の記事では「シャレン広め隊」として、全国58クラブの活動を細かくチェックしている中で特に好きな活動を一部紹介しつつ、宮代町での「シャレン!」について振り返ります。
(「《“社会課題解決×スポーツ”の可能性》『シャレン!』から学んだ新しい政策~前編」に続く)
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■ 伊藤 遼平(いとう りょうへい)さんのプロフィール
宮代町(埼玉県)教育推進課 生涯学習・スポーツ振興担当
1991年生まれ。2014年FC東京(東京フットボールクラブ株式会社)へ就職。同クラブバレーボールチームに所属。2017年宮代町へ入庁。2部署目となる子育て支援課で、子育て支援センター・児童館の担当となり、地域の親子イベントにプロスポーツチームや選手と連携した「スポーツ×社会課題解決」型事業を多数企画。「地方公務員が本当にすごい! と思う地方公務員アワード2021」受賞。
プライベートでは、子育て中のパパ。バレーボールトップリーグのコーチ経験を活かしたイベント講師や「スポーツ×社会課題解決」をテーマにした講演など〈スポーツ系公務員〉として活動を行う。
<連絡先>ito626@town.miyashiro.saitama.jp