受診者の負担抑制と、業務効率化を目指し同意書を電子化
済生会熊本病院 予防医療センターでは、受診者の満足度向上やセンター内での業務効率化を目的としたICT化を推進しています。今回、健診システムの更新(バージョンアップ)の一環として実施されたのが、同意書の電子化によるペーパーレス化でした。
これまで人間ドックの受診者は名前や検査項目が記載された用紙を挟んだボードを持参しながら各検査コーナーを移動、さらに内視鏡検査と大腸CT検査を行う際には二枚複写用紙の「検査同意書」も携え、そこにサインを記入してもらっていました。
同センター 事業推進室 室長代行の大塚浩士氏は、「受診者の皆様が人間ドックを“くつろぎの場“として過ごしてもらえるにはどうしたら良いか常日頃考えている。館内で移動をする際に手にモノを持たないことで受診者のストレスを抑制できないか、との考えから同意書の電子化やボードレス化に取り組みました。」と説明します。
また、同意書の記入枚数は年間約2万4,000枚に達し、印刷や保管、廃棄等の負荷も課題とされていました。
紙と変わらない書き心地の液晶サインタブレットで電子サインを推進
これらの課題を解決するために採用されたのが、全国で約300の中核病院において活用されている、富士フイルムメディカルITソリューションズの診療文書管理システム「Yahgee」と、ワコムの液晶サインタブレット「STU-430」を連携させた電子サインの実現です。
健診システムとYahgeeによって電子化された同意書を検査ブースのPC画面上に表示し、説明、確認後、STU-430を用いて電子サインをしてもらうという仕組みです。採用の決め手となったのは、Yahgeeとのスムーズな連携を可能としていることはもちろん、実際の紙に書く時と変わらないワコム液晶サインタブレットの滑らかな書き心地にありました。
予防医療センター 専門検査室の末富奈奈氏は「健診システム画面に手書きのサインが反映されるレスポンスも早く、これであれば受診者の方もストレスなく利用できると実感しました。また、検査スペースは限られており、コンパクトなサイズで場所を取らないことも採用の理由となりました」と説明します。
スムーズな健診の実現に加え、管理負荷の削減、セキュリティリスクの低減も実現
YahgeeとSTU-430を活用した電子サインの仕組みは2020年1月から稼働しており、各ブースで利用されています。
受診者にはバーコード付きのリストバンドを装着してもらい、各検査ブースで読み込むことで本人認証が行われるとともに、あらかじめ登録されていた内視鏡検査や大腸CT検査の同意書が画面上に表示。STU-430を用いてサインをすれば画面上に即座に反映され、システムに登録されます。
末富氏は、「高齢者の方でも違和感なく紙と同じようにサインしてもらえており、これまでの対応状況を知る受診者からも『きれいに書ける、これはすごいね!』と高評価の声を頂いています。」と語ります。
また、サインの準備から記入してもらうまでの時間も受診者一人当たり30秒ほど削減でき、一日100~150名という受診者を迎えていることから考えれば、大幅な時間の短縮およびスムーズな健診の実現に繋がっています。
さらに、ペーパーレス化を推進したことで、同意書の印刷、保管や廃棄に伴うコストや管理負荷が抑制されたほか、同意書の取り違え等の発生リスクが低下したことも効果として挙げられています。
予防医療センターの成功事例を踏まえ、病院全体で電子サインを推進
今後の展望について済生会熊本病院 医療情報部 医療情報システム室の東賢剛氏は、「今回の成果を踏まえ、今後、病院側にもペーパーレス化の提案を推進していきたいと考えています」と話します。
また、ワコムのパートナーとして今回のプロジェクトに参加した、富士フイルムメディカルITソリューションズ 執行役員 第一事業本部本部長の平川毅氏は、「今回の電子サインに関しても、令和2年度の診療報酬改定で同意書等への電子サインが正式に認められたことで、さらに加速すると考えており、今後も幅広くワコムさんと共にソリューションを提供したいと考えています」と語ります。
最後に大塚氏は、「ワコムの液晶ペンタブレットはサインだけでなく様々な用途で利用できると考えています。今後も富士フイルムメディカルITソリューションズとともに、さらなる業務効率化や受診者の満足向上を実現する提案を期待しています」と話しました。