情報網強化で巨大地震に備える
―白浜町の情報通信システムにはどのような課題がありますか。
災害時にも「伝えることができる」情報網、途切れない情報網の整備です。当町は、台風が毎年発生し、東海・東南海・南海地震発生時には、津波によって甚大な被害が想定される地域に含まれています。災害時、町民だけでなく観光客にも避難勧告をはじめとする情報を発信したり、町民・観光客同士が連絡を取りあう必要が生じます。
そんなとき、インターネットや電話回線にだけ頼っていては、中継局1ヵ所でも不都合が起きれば通信が途絶えてしまいます。そうならないシステムやネットワークがあればと考えていました。また、平時も町民や観光客向けの情報発信を強化する必要がありました。
これまで町が行っていたおもな情報通信(ICT)施策を紹介します。まずは、住民から町役場への通信手段である「緊急通報システム」。一人暮らしの高齢者や重度の身体障害者を対象に、事故や急病といった緊急時に、自宅から受話器を上げただけで町役場へ通報できる装置です。
また、町・消防署・警察署より登録者への情報発信手段としての「安心・安全メール」。これは、事前登録した方の携帯電話やパソコンへ、防災情報や不審者情報などを発信します。ただし、いずれも利用できるのは登録者のみでした。そんななか、分散型無線メッシュネットワークが開発され、エリア内にいる全員に情報の受発信を可能にするシステムとの期待から、試験的に導入しました。
―システムの特徴を教えてください。
最大の特徴は、災害に強いこと。町内9ヵ所の基地局を無線で網の目状に結び、災害や観光に関する情報を提供したり、ユーザーのメッセージをほかのユーザーへ配信できるのです。いっぽう、平時も、海水浴場など4ヵ所の基地局で、無料Wi -Fiスポットとして活用。観光客のニーズを満たしています。
電子看板の設置で平時活用を推進
―災害時の市民との情報共有における、塩尻市の課題について教えてください。
市内の全域で、できるだけ多くの市民に、災害その他の重要情報を提供するシステムづくりです。これまで当市では、防災行政無線、メール、ツイッターなどを通じて、市民や訪問客に情報を伝えてきました。しかし、これらのシステムでは市内のすべての人に発信することはできません。そこで民間サービスを試験的に導入。山間部を含む全域への情報発信の可能性を試すことにしたのです。
―導入の目的はなんですか。
目的は2つあります。
1つめは、デジタルサイネージ(電子看板)です。市内6ヵ所に設置して、時刻や気象、市の行事や催しなど動画を含めて表示。また、緊急情報を発信するほか、設置場所ごとに必要な情報を流します。2つめは、路線バスの位置情報システム。バスの位置を把握し、待ち時間なく乗車できる環境を構築予定です。「えんぱーく」や病院などでの活用を見込んでいます。
―今後の活用計画を教えてください。
セキュアな通信網、通信の安定性や維持コストを確認した後、既存の通信網と置き換えられるかどうか検討します。また、先進地の和歌山県白浜町や同時に実証実験を行っている島根県松江市と情報交換し、活用法を探っていきます。