

東京都日野市 の取り組み
福祉と教育の一体化を進め、発達障害児への「切れ目のない支援」を実現する
首相の私的諮問機関である「教育再生実行会議」が重要課題のひとつとして提言する、発達障害児への教育支援体制の充実。「ライフステージを通じた切れ目のない支援」の必要性が強調されている。それをいち早く実現しているのが、日野市(東京都)である。同市が進める先進的な発達障害児支援について、市長の大坪氏と担当者である志村氏、森谷氏に聞いた。
※下記は自治体通信 Vol.11(2018年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―日野市における発達障害児支援の取り組みを教えてください。
当市は首都圏有数のベッドタウンであることから、子育て支援やその一環としての特別支援教育を重点的に進めてきた歴史があります。そのなかで、発達障害児への支援は、現状の制度や施策では不十分との問題意識が現場から伝わっていました。そこで、福祉的な支援を早期にできる中核的施設を検討していました。一方で、教育委員会でも発達障害児への関心が高まっていたことを受けて、福祉と教育という部局の枠を越えた一貫性のある支援体制を構築しようと決断。そこで平成26年に設立したのが、「エール(日野市発達・教育支援センター)」でした。
―福祉と教育の一体化は、どのように実現されているのですか。
幼稚園、保育園を管轄する福祉部局に対し、小・中学校の管轄は教育部局。まずは、この両部局の「縦割り」を排し、子どもの支援情報を統一書式にまとめた「かしのきシート」を作成しました。さらに、この情報を従来のように保護者ではなく、エールが責任をもって預かる体制にしています。
それでも、就学や進学にあたって、支援情報が子どもの各所属先の間でうまく引き継がれない状況がありました。そこで平成28年度からは情報を電子化し、ネットワークを通じて関係機関の間で共有する仕組みとして、「発達・教育支援システム」を導入しました。
システムの導入で、発達障害児の支援情報は単に保管するのではなく、利活用して支援を充実させる体制が整いました。この支援体制のもとで、多くの子どもたちが共生し、活躍できる社会をつくりあげていきたいと考えています。

―「発達・教育支援システム」の特長を教えてください。
志村:平成28年度の小・中学校、公立の幼稚園、保育園を皮切りに、29年度からは私立の施設にも枠を広げ、市内の約80拠点で導入を進めています。かしのきシートの利用者はすでに1000人ほど。システム化されているからこそ、情報を迅速かつ確実に引き継ぐことができたと実感しています。
森谷:システム最大の特長は、小・中学校全25校で導入されている校務支援システム内の個別指導計画とデータ連携している点です。支援情報の重複を避け、かつ現場の先生方が日頃作成する指導目標や支援記録をそのまま活用することで、統合型の情報管理システムとしました。先日、先進的な事例として国の視察があり、機能の紹介をしています。
―導入効果はいかがですか。
森谷:たとえば直接の交流機会が少ない保育園と小学校など所属先間で支援情報が引き継がれたことで、子どものライフステージを通じた一貫性のある支援を共有できるようになりました。子どもと接する先生たちには、現場で困り感をもったときに、このシステムから得られる情報が助けになってくれることを期待しています。
志村:当初は、支援情報をネットワークでつなぐ方針に対する保護者の反応を心配しました。しかし、実際はほとんど反対がありませんでした。保護者もこうした一貫性のある支援体制を求めていた証だと思っています。
このシステムが活用されることで、子どもたちへの的確できめ細かな支援ができるようになり、ひとりでも多くの子どもが能力を開花させることができれば、社会的にも大きな意義のあることですね。
東京都日野市 の取り組み

発達障害児の支援情報は自治体間で引き継げる仕組みが必要に
※下記は自治体通信 Vol.11(2018年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―どのような経緯で「発達・教育支援システム」を開発したのですか。
平成28年に施行された「障害者差別解消法」にみられるように、社会はあらゆる人がチャレンジし、活躍できる環境づくりへと動いています。当社は50年にわたって、税や社会保障、教育分野などの自治体システムを開発してきた会社ですので、その実績をもって貢献したい。会社としても、そんな方針を掲げていた折、日野市の取り組みを知り、共鳴。日野市の協力のもと、「発達・教育支援システム」の開発に乗り出しました。
まだ世の中にないシステムですが、「いずれは全国のモデルになる」との使命感から、当社の社員が現場に飛び込み、ニーズを吸い上げて形にしました。
―今後、自治体での導入をどのように支援していきますか。
福祉と教育を一体化するには、もう少し時間を要する自治体は多いでしょう。そこで、「発達・教育支援システム」の仕組みをもとに、福祉部門や教育部門だけでも使える形にして提供できればと考えています。
一方で、「発達・教育支援システム」のさらなる開発も進めます。国がめざす「切れ目のない支援」を実現するためには、子どもがほかの自治体に転校した際にも情報を引き継げる仕組みが必要でしょう。また、蓄積された過去の支援情報をビッグデータとして、有効活用できるような仕組みづくりも将来的には求められるかもしれません。当社では、こうした社会問題の解決にシステム面から貢献していきたいと考えています。

[2] 東京都 日野市様 【発達・教育支援システム】
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長坂 正彦(ながさか まさひこ)プロフィール
昭和31年、山梨県生まれ。平成17年より現職。社業の傍ら、一般社団法人 山梨県情報通信業協会理事・副会長や、一般社団法人 情報サービス産業協会理事などの要職も兼務。平成22年からは1年間、北杜市(山梨県)の教育委員長を務めた。
株式会社ワイ・シー・シー
設立 | 昭和41年5月 |
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資本金 | 2億1,200万円 |
売上高 | 24億円(平成29年3月期) |
従業員数 | 172人(平成29年6月現在) |
事業内容 | SIサービス、アウトソーシングサービス、インフラサービス、システムコンサルティングサービスなど |
URL | https://www.ycc.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 | 055-224-5511(平日9:00〜17:30) |
お問い合わせメールアドレス | yccegy@ycc.co.jp |
