―デマンドバスを整備した経緯を教えてください。
平成19年、人口減少によって、路線バスの整理縮小を迫られたことがきっかけでした。それまでは町の補助金で維持されていましたが、利用者は減る一方で、補助金は増え続け、路線維持が難しくなったのです。これに対し、住民からは存続への強い要請がありました。東西に長く、山間の地域も多い飯綱町には、路線バスの廃止によって生活に大きな影響を受ける住民も多い。そこで、「交通空白地域0%」を町の方針に掲げ、公共交通の維持を検討。行き着いた結論が、「デマンドバス」の整備でした。
―どういった仕組みを検討したのでしょう。
事前に予約をしてもらった利用者の家の前まで、バスが迎えに行くというものです。デマンドバスの運行が必要となるのは、路線バスの利用者が減る昼間の時間帯。ここで利用するのは多くが高齢者ですが、ニーズや利用実態を調査したところ、バス停までの移動も困難な方が少なくなかったのです。ただし、厳しい財政事情のもとでデマンドバスを持続的に運行するには、運行管理の効率化が大きな課題になります。
―どのように解決したのですか。
まず、CTI(※)受付システムと業務用カーナビを導入。予約状況が日々変わるなか、利用者の住所を打ち込めば、システム内でどの順番で迎えに行くのがよいか自動で作成でき、デマンドバスのカーナビに迎え先を指示することで運行管理を効率化できました。その後、カーナビの通信機能を活用できるシステムと連携。メーカーである民間企業からは、町の状況に合わせ、コストやシステム設計を提案してもらえたことで、規模の小さな飯綱町でも無理なく導入することができました。
※CTI:Computer Telephony Integration Systemの略。電話とコンピュータの統合システム
年間の公共交通費用は約250万円の削減効果も
―導入効果はいかがですか。
乗客がいないバスを走らせるようなことはなくなり、運行管理が効率化されたことで、町の公共交通費用は導入前後で6%、年間約250万円を削減できました。なによりも、「交通空白地域0%」を達成できたのは、最大の成果です。現在、地形や人口分布をもとに町を4ブロックに分け、各ブロックで3・5往復、7便が運行。住民の3分の2が利用登録しており、アンケートでは8割の利用者から高評価をいただいています。
―今後の運用方針を聞かせてください。
さらに利便性を高める施策を計画中です。この10年で経済圏が移動しており、新たなブロック割を検討しています。また、飯綱町にはスキー場やワイナリーなどへの観光客が多く訪れます。その際に交通手段として利用してもらえれば、観光客誘致の一助にもなる。このシステムがあれば、どのようなルート設計にも自在に対応できると期待しています。