―佐賀県ではどのような災害対策を進めてきたのでしょう。
大石:干拓地などの低地が多く、台風の通り道となることもある佐賀県では、水害への備えが災害対策の主眼となってきました。実際に、昨年の九州北部豪雨や今年夏の西日本豪雨では、対応を迫られる場面もありました。また、県内には震度6強以上の地震を引き起こす可能性がある断層が複数あることから、地震への備えも必要です。さらに県北部の玄海町には、原子力発電所を抱えるため、原子力災害対策も佐賀県特有の課題です。
福地:県としては、河川改修といった治水事業や各種の地震対策などを進める一方で、緊急時の情報収集や発信、対策立案などを担う司令塔である「危機管理センター」の機能強化も必要と判断。10年ぶりの改修に踏み切りました。
―改修のポイントはなんですか。
福地:ひとつは規模の拡張です。災害の種類や規模によっては、警察や消防、自衛隊、さらには他県からの応援要員も駆けつけ、対策会議は大所帯となります。そのため、従来の危機管理センターに隣接する特別会議室、知事会見室を一体で運用できる構造としました。また、災害時にはそれぞれの役割に応じて、室内で複数の会議が招集され、同時進行することもあります。そこで、各種配線やデスク、通信設備などもレイアウトフリー対応としたこともポイントでした。
大石:レイアウトフリーへの対応として、音声システムは持ち運び自在の無線型「赤外線マイクシステム」を新たに50台導入しました。
機動的に運用でき混信もない
―赤外線通信方式を選定した理由を教えてください。
大石:無線通信で懸念されるのは、混信です。従来のアナログ電波方式の場合、緊急時に備えて音声システムの電源をONにしておくと、隣接する会議やセクションの音声を拾ってしまったり、他所からの送信内容を誤って受信してしまい、混乱の原因となります。
福地:その点、赤外線通信の場合は混信の心配がなく、情報の秘匿性も保てます。音質もクリアで安定しており、緊迫した状況下での情報共有に効果を発揮してくれます。実際に、7月の西日本豪雨の際は、緊急の会議招集でも問題なくマイクシステムを活用でき、その後の知事会見室での会見でも同一システムを機動的に共有することができました。
―今後どのように防災機能を強化していきますか。
福地:「赤外線マイクシステム」の効果は確認できたので、今後は現在のスタンド型にくわえ、ピンマイク型やハンドマイク型の導入も検討し、より柔軟に使用できる環境を整備したいと考えています。
大石:映像や紙による情報を見ながらでも耳から取得できる「音声情報」の活用は、情報の素早い取得・共有・発信が求められる災害時には非常に効果的です。「赤外線マイクシステム」を有効に活用し、県としての防災機能をより一層高めていきたいですね。