丘陵地という性質上「車載型」では限界があった
―新たな防災行政無線を導入した背景を教えてください。
きっかけは、防災行政無線をアナログからデジタルに移行するためです。それにともない、移動系無線を「車載型」から「ハンディ型」に変更しようと考えたのです。
滑川町は丘陵地が多く、車では行けないエリアもあります。そうした場合は、一旦職員が徒歩で現場状況を確認し、車に戻ってから本部とやりとりしなければならない。それゆえ、時間のロスはどうしても起こりえます。その点、ハンディ型だと職員が現地に行って、その場で通信が可能ですから。
くわえて、地域によっては防災無線が届きにくいエリアもありました。そのため、町内のどこでも通信がつながるようなハンディ型無線を検討していたのです。
―どのように検討していったのでしょう。
まず、着目したのは「IP無線」です。こちらは携帯電話の回線を使った無線で、滑川町では全エリアで携帯が通じることから適しているのではないか、と。ただ、もし災害が起こった場合、たとえば携帯電話も含めたいっせい利用などで通信に輻輳(ふくそう)(※)が起こらないとも限りません。そこで、過去の災害時において多くの活用実績をもつ「MCA無線」にも注目したのです。
「広範囲に通じて、災害時に強い通信を」という観点で引き続き検討を続けるなか、IP回線と二重の通信が可能なMCA無線がリリースされることを聞いたのです。「これなら要件を満たしている」と考えました。
また、定額制で初期導入費用が抑えられることも考慮し、導入することにしたのです。
※輻輳:電話回線やインターネット回線にアクセスが集中し、つながりにくくなること
普段から助けあえるような、コミュニティづくりを支援
―導入後はいかがですか。
平常時ですが、いままで車載型では通じなかったエリアでも通信できるのを確認ずみです。庁舎内も含めて基本的にすべてMCAでカバーできていますが、万が一、MCAが通じなかった場合でも、IPで二重化されているため安定した通信が期待できます。災害時には、なにが起こるか予測がつきません。その点、IPもあわせて利用できるのはやはり心強いと感じています。
また、これも災害時ではありませんが、町内における行方不明者の捜索にMCA無線を活用しました。ボタンひとつで通じるうえに、所持者全員といっせい通話が行えるためスムーズな情報伝達ができ、早期発見につながりました。
―今後の防災対策における方針を教えてください。
災害は、まったなしに起こります。そのため、普段から防災に対する意識づけを行っていくことが重要。それは、職員はもちろん、町民の方も含まれます。
滑川町では、昔からつき合いがあり、なにかあれば近所の方同士で声かけができる仕組みがすでにできているエリアがある一方、区画整理によって新住民が増えているエリアがあります。そういった新しい方たちにも、防災訓練の参加を働きかけるなどして、防災意識を高めてもらうとともに、普段から助けあえるようなコミュニティづくりの支援を行っていきます。
MCA無線も行方不明者捜索のように、普段から使用することでいざというときに使い慣れておきたいですね。