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鹿児島県肝付町の取り組み
先進事例2023.06.23
道路舗装点検の効率化

道路舗装点検への「AI診断」導入で、懸案だった網羅的管理が可能に

[提供] 国際航業株式会社
道路舗装点検への「AI診断」導入で、懸案だった網羅的管理が可能に
この記事の配信元
国際航業株式会社
国際航業株式会社

※下記は自治体通信 Vol.50(2023年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

住民生活における安全・安心の確保は自治体の重要な責務であり、域内道路の維持管理はその代表的な業務といえよう。しかし、管理対象の道路網をくまなく点検する作業は時間やコストの面で大きな負担であり、「実際には手が回らない」と頭を抱える自治体が少なくない。そうしたなか、肝付町(鹿児島県)では、新たな技術を導入した実証実験を行ったという。同町の担当者に取り組みの詳細を聞いた。

インタビュー
諏訪下 智彦
肝付町
建設課 維持係 主査
諏訪下 智彦すわした ともひこ

[肝付町] ■人口:1万4,109人(令和5年4月30日現在) ■世帯数:7,600世帯(令和5年4月30日現在) ■予算規模:168億4,659万6,000円(令和5年度当初) ■面積:308.05km² ■概要:鹿児島県大隅半島の南東部に位置する。中央部には900m級の山々が連なる国見山系があり、多くの登山客が詰めかける一方、町の南東部には50kmの海岸線が広がる。えっがね(伊勢えび)の漁獲高は県内トップクラスを誇る。気候は温暖多雨で、一部にはビロウ・ソテツの自生北限があり、亜熱帯の特徴も示している。昭和37年にJAXA内之浦宇宙空間観測所が設立され、「ロケットの町」として全国に知られる。

町道全体の目視点検には、網羅性や精度に限界も

―これまで、町内の道路点検はどのように行ってきたのでしょう。

 当町では毎日、簡易補修や除草といった道路の維持修繕作業のために道路維持作業員が町内を巡回しており、その際に日常点検として道路の陥没や亀裂などの異常箇所を目視で点検しています。しかし、当町が管理する町道は全長260㎞ほどもあるため、維持修繕作業も並行しながらの点検となると一巡するだけで4~5ヵ月を要し、精度や結果のとりまとめにも限界がありました。このほか、専用車両を用いた高精度の「路面性状調査」も行っていましたが、調査には多額の費用を要することから、交通量の多い箇所などを抽出した100㎞ほどしか実施できず、町内すべての道路を網羅できませんでした。その一方で、町内全域で老朽化が進む道路に対して住民からの苦情や要望も増えており、新たな対応を迫られていました。

―実際、どういった対応を考えたのですか。

 「道路舗装の長寿命化修繕計画」の策定を機に、新しい技術により経済的かつ効率的に調査を実施できないかと考えました。そこで、道路管理などで活用する地理情報システム(以下、GIS)で導入実績のあった国際航業に相談したところ、「道路巡回システム」の紹介があり、導入に向けた実証実験の提案を受けました。

―どのようなシステムですか。

 カメラを設置した車両を巡回させて道路状況を撮影すると、その映像をAIが自動で解析し、ひび割れやポットホール*を自動検出してくれる画期的なシステムです。高額な機材や専用車両を必要としないため、従来の路面性状調査に対して大幅にコストを抑えることができ、調査精度の向上と作業の省力化を同時に期待できます。そこで当町では、令和5年2月から1ヵ月にわたり実証実験を行うことに決めました。

*ポットホール:アスファルト舗装の道路にできるくぼみやへこみ、穴のこと

1日140㎞を撮影し、AIが高精度に自動判定

―結果はいかがでしたか。

 まず、1日あたり140㎞を撮影し、瞬時にAIが自動判定するスピード感に驚きました。運転手1人で作業を完結できるので、業務の効率性は格段に上がると予想できました。また、同じひび割れでも線状か亀甲状かまでを見分けるAIの判別能力の高さも実感できました。従来のように作業員の経験や力量に依存することなく、道路状態を正確かつ網羅的に点検できます。不具合箇所は位置情報をもとにGIS上にプロットされるため、町内の道路状況を一元管理できます。このデータは、直近の修繕計画のみならず、今後の道路事業全体を考えるうえで重要な資料として役立つはずです。

支援企業の視点
「道路管理への知見」があってこそ、AI診断データを政策に活かせる
インタビュー
鈴木 達朗
国際航業株式会社
インフラマネジメント事業部 インフラDX推進部 DX戦略グループ
鈴木 達朗すずき たつろう
平成19年、国際航業株式会社に入社。令和5年より現職。おもに自治体インフラの維持管理支援に関連するシステム構築や計画策定を担う。

―道路管理をめぐり、自治体にはどういった課題がありますか。

 これまでの「路面性状調査」はコスト面などでハードルが高いため、実施が難しい自治体が多くあります。平成28年には国土交通省が「舗装点検要領」を策定し、道路点検手法の規定を一部緩和しています。しかし、職員の目視点検に頼る多くの自治体では、人員や予算の制約から、国が定める「5年に1度を目安」とする全線点検に追いついていないのが実態です。そこで当社では、AIを活用して道路状態を効率的に点検できる独自の「道路巡回システム」を開発し、自治体に提案しています。

―特徴を教えてください。

 過去の路面性状調査で蓄積した知見を活かして開発した、撮影画像からAIが自動でひび割れやポットホールといった不具合を高精度に検出するシステムです。高額な機材を使用しないので、実施費用を大きく抑えられるのが特徴です。ひび割れやポットホールはもちろん、道路の凹凸なども測定できます。舗装が傷むメカニズムを熟知する当社では、これらのデータをもとに、維持管理計画の立案を支援できるのが、最大の強みと自負しています。

―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。

 当社では現在、自動運転技術の登場によって重要になる「道路の白線」のかすれ検出手法の開発も進めており、さらなる機能向上に力を入れています。革新技術を活用した当社のDX支援サービスで、自治体のみなさんの業務効率化をサポートしていきます。

国際航業株式会社
国際航業株式会社
設立

昭和22年9月

資本金

67億9,400万円

売上高

389億円(令和4年3月期)

従業員数

1,896人(令和4年3月末現在)

事業内容

公共コンサルタント事業、インフラマネジメント事業、防災環境事業、LBSセンシング事業、その他

URL

https://www.kkc.co.jp/

お問い合わせ先
06-6487-1285(平日 9:00~17:00)
kkc_pfi@kk-grp.jp
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