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先進事例2023.11.01

Tourism1.5 ~ツーリズムフォワード~(Vol.3) 「アドベンチャーツーリズム」

[提供] 株式会社JTB
この記事の配信元

新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックにより、消費行動も様々な変化が見られる中、旅行形態においては、都市から離れた自然の中を楽しむ旅行へのニーズが高まってきています。アフターコロナの旅行のあり方として、少人数でより付加価値の高い体験を提供できる旅行であるアドベンチャーツーリズム(以下、AT)が世界的に注目されており、わが国においても取り組みが進んできました。

そんなATについて、「Tourism1.5 ~ツーリズムフォワード~(Vol.3)」で掲載している内容をダイジェスト版でお届けしますので、参考にしていただければ幸いです。

北海道の最高峰・旭岳を中心とした大雪山で見られる色鮮やかな高山植物の風景

1 世界的に注目されるAT市場と日本の可能性

まずは、一般社団法人日本アドベンチャーツーリズム協議会 業務執行理事を務める山下 真輝氏が寄稿したコラムを一部抜粋してご紹介します。

ATの定義

ATの国際機関であるAdventure Travel Trade Association(以下、ATTA)が定めるATの定義は、「自然とのふれあい」、「文化交流」、「身体的活動」の3つの要素のうち2つ以上が主目的である旅行形態とされています。観光客が地域におけるありのままの自然や文化を体験し、その中で自分自身を見つめ、成長につなげることを目的とする、体験価値が高く知的好奇心を満たす新しい旅のあり方と言えます。

ATは冒険的でダイナミックな旅行形態というより、むしろ誰でも体験できるアクティビティや地域文化体験などが中心の旅行です。ときには地域に精通したガイドが同行し、その土地の生活文化や貴重な自然環境に直接触れることで、日常生活では味わえない特別で贅沢な体験を得られます。

日本におけるATの可能性

日本は世界の他の国よりも素晴らしい観光資源に溢れており、まさにATを推進するうえで大きな可能性を秘めています 。幅広い気候区分や固有種比率の高い動植物たち、自然環境、温泉地などの観光資源があることはもちろん、日本の食(和食)はユネスコ無形文化遺産に登録され、世界的に価値あるものとして認められています。 日本には自然崇拝の独自の宗教観があり、かつ多様な文化と豊富な自然もあることから、ATに対するポテンシャルはとても高いと言えます。

AT旅行者の特徴

AT旅行者の特徴として、教育水準が高い富裕層の割合が高く、長期の滞在を好み、アウトドアギア(用具、装備)にもこだわる層が多いことから、 ATは経済波及効果が高い旅行であると言われています。 またAT旅行者の目的地選定にあたっては、旅行を通じて地域の自然・社会環境のサステナビリティや地域住民の雇用・ 所得向上に貢献できるかといった視点が重視されるため 、従来の旅行とは違った質の高い旅行プログラムが求められます。ATツアーを提供する事業者は、受入地域の自然・文化を保全し、経済・社会的にも貢献していくという意識を持って活動しています。

ATにおけるガイドの存在

ATでの体験を特別なものにしてくれるのが、ガイドの存在です。ガイドには、自然景観や文化を解説するだけでなく、自然が発するメッセージを分かりやすく伝え、自然と向き合う中で参加者に自己改革を感じてもらうインタープリテーション力や、上質な時間を演出するホスピタリティが求められます。

ATツアーの参加者自身もサステナビリティ(持続可能性)への意識が高いことから、事業者は自然環境や地域コミュニティなどあらゆる部分に気を配らなければ、顧客満足を高めることも難しくなってきています。そんな中でその土地に誇りを持つガイドとのツアー中の触れ合いこそが、参加者の自己変革や自己成長を促すことにつながり、特別な経験となるのです。

観光立国・日本が目指す姿とは

日本がATに取り組むにあたり重要なのは、「地方にこそ要素が揃う」という点と「資源活用と持続可能性の両立を目指す」こと、そして「ローカルな経済を重要視していく」ことです。ATの推進により目指す観光客数の「量」の観光から自然・文化の保全や地域の発展などの「質」の観光への転換は、まさに我が国がこれから目指す観光立国の姿と言えます。

2 ケーススタディ

続いてはケーススタディとして、スイスと北海道・東川町の事例をご紹介します。

1 スイス

雄大な自然と多様な文化・伝統を有するスイスでは、ATが旅の基本であり、特に自然やアウトドア体験を求める旅行者が多く訪れます。自然や文化をこれから先も守り続けるため、スイスではサステナブルツーリズムにより一層力を入れていく方針を掲げています。マガジンでは観光立国・環境立国としてのさらなる発展を目指すスイスの取り組みを3つのポイントでまとめています。ここではその一部を抜粋してご紹介します。

業界全体を巻き込んで推進するサステナブルツーリズム

スイスの人々の日常の中に溶け込んでいるサステナブルな考え方や行動を旅行者に分かりやすく示すガイドラインとして、スイスはサステナブルの共通ブランド「Swisstainable(スイステナブル)」を制定し、観光事業者向けの認証制度を開始しました。さらにその認証のプロセスを通じて中小規模の事業者のサステナブルな取り組みを支援することで、観光業界におけるムーブメントの創出を図っています。観光業界のあらゆる事業者がサステナブルな取り組みに参画することこそ、スイスが目指すサステナブルツーリズムの姿なのです。

2 北海道・東川町(大雪山国立公園)

手つかずの自然が多く残り、ATがさかんな北海道の大雪山国立公園。NPO法人大雪山自然学校は大雪山国立公園がまたがる東川町で、地域の行政・団体・ガイドの方々と連携してATに取り組む上で欠かせない持続可能な観光地の仕組みづくりを進めています。マガジンでは同団体が推進する“無理をしない”自然保護と観光地づくりの取り組みをご紹介していますが、ここでは一部を抜粋してお届けします。

規則で縛ることなく人々を望ましい行動へと誘導する

大雪山自然学校は、公園へ訪れる人々の満足度を下げずに自然環境も守っていくために、規則で縛ることなく、「魅力的な情報提供」と「ハード面での工夫」による自然保護に取り組んでいます。
まずは自然を適正に利用してもらうために、ただ「あれはだめ、これはだめ」と伝えるのではなく、守るべきことをエンターテイメントにして伝え、利用者のポジティブな行動変容を促しています。また、自然の中での人の本能的な行動を理解した上で、ハード面においても工夫を施し、利用者が意識せずとも環境に配慮した行動ができる仕組みを整えています。 規制しない自然保護のためには、このように管理者による利用者の行動を適正な方向に導くためのシステムづくりが求められます。

3 コンテンツ開発のその先へ~顧客へのアプローチと販路拡大に向けて~

最後に株式会社JTB総合研究所 研究員の松本 麻依子氏が執筆した、AT商品の顧客へのアプローチと販路拡大に関するレポートをご紹介いたします。

AT商品の流通経路

AT商品の流通の担い手には、OTAの他、旅行会社やコーディネーターなどが存在しており、国内外における一般的なAT商品の流通経路としては、以下のようなパターンがあります。

ATでは地域社会におけるサステナビリティが重要な要素として位置付けられているため、上記流通経路の中でも、地域における経済効果が最も高い「現地のコーディネーターが直接旅行者に対して手配・販売を行うパターン(流通経路⑤)」が望ましい状態と言われています。

世界と日本における顧客へのアプローチ手法と流通の現状

マガジン本編に掲載している表1でATTAに加盟するコーディネーターの各エリアにおける販売チャネル別売上構成比を見てみると、北米で53%、欧州で47%がウェブサイトを通した直接予約、北米で40%、欧州で24%がEメールやソーシャルメディアを通した直接予約となっています。さらにマガジン本編の表2を見ると、海外のコーディネーターはAT旅行者へのアプローチ手法として、Instagram、Facebook、WhatsApp、YouTubeを重視しています。このことから、AT先進市場でもある欧米では、「現地のコーディネーターが直接旅行者に対して手配・販売を行うパターン(流通経路⑤)」が旅行者へのダイレクトアプローチを通じて一定程度成立していると推測できます。

一方で日本を含むアジアにおいては、コーディネーターが直接旅行者にリーチする割合は欧米に比べて低く、国内外の旅行会社やOTAを通じた「代売」が主流です。日本におけるATの流通経路は「OTAや国内外の旅行会社を介するパターン(流通経路②、③、④)」が主流で、地域は顧客へのダイレクトアプローチに課題を抱えています。この状況は、旅行者から収受する旅行代金が訪問地以外により多く流れていることを示しています。

課題解決に向けた方向性

地域が国内外の旅行者にAT商品を届け、持続可能な地域づくりに繋げるためには、ストーリー性・独自性に富んだコンテンツ開発はもちろんのこと、「情報発信」と「販路拡大」への対策を同時並行させていくことが求められます。これにより日本においても「現地のコーディネーターが直接旅行者に対して手配・販売を行うパターン(流通経路⑤)」が促進されれば、地域における経済的・社会的効果が増大していくはずです。

4 まとめ

AT市場の動向や日本におけるATの可能性、AT商品の流通における課題についての有識者の見解、スイスと北海道・東川町の取り組み事例などをご紹介しました。この記事ではダイジェスト版でお届けしましたが、ダウンロードしてお読みいただけるマガジン本編には、ご紹介しきれなかった事例も掲載していますので、ぜひご覧ください。自治体の皆さまの取り組みの参考としていただければ幸いです。

株式会社JTB
設立1912年
資本金1億円
代表者名代表取締役社長執行役員 山北 栄二郎
本社所在地

〒140-0002
東京都品川区東品川二丁目3番11号 JTBビル

事業内容

旅行を基盤としたツーリズム事業を中心に、地方創生にまつわるエリアソリューション事業、企業・地方自治体・教育機関に向けたビジネスソリューション事業を展開しています。

URLhttps://www.jtbbwt.com/government/

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