豊かな自然や食文化などすばらしい観光資源を有する山梨県ですが、観光消費額の低さが積年の観光課題でした。そこで、生まれたのが「カイフジヤマロード構想」です。富士北麓地域に押し寄せるインバウンド来訪者を県内の他地域へと周遊させることを目的としています。持続可能な観光地づくりに向け、地域の方々と同じ方向に向かい、地域と一体となって進める山梨県の取り組みをご紹介します。
背景
日本が誇る富士山をはじめとする豊かな自然を持ち、桃やぶどうなど果物大国としても知られる山梨県。そんなすばらしい観光資源を有す山梨県ですが、インバウンド来訪者数が全国12位に対し、1人当たりの消費額がワースト3に入るなど、観光消費額の低さが問題でした。
原因として、観光客向けの交通手段の不足や、富士北麓地域への一極集中が考えられていました。
2021年には、県内の周遊促進のため、交通・観光事業者と連携し、山梨県甲府市・山梨市・笛吹市・甲州市で、複数の交通手段・観光施設を繋ぐ「やまなし観光MaaS」の実証事業を実施しました。そこで、地域と地域を点と点で繋ぐだけではなく、地域に魅力的な観光コンテンツを作ることで強い点とし、それを線で繋ぐことが重要であることに気づきました。
そのような経緯のもと、お客様が山梨県内を周遊する大きな流れを「カイフジヤマロード」と名付け、河口湖エリアから県内他エリアへの誘客を図ることを目的とした「カイフジヤマロード構想」に至りました。
課題
- 観光消費額の向上
- 地域資源を活用したコンテンツ開発
- 二次交通の整備
- 地域内外への周遊促進によるオーバーツーリズムの解消
実施内容
『カイフジヤマロード構想』
目的
富士北麓地域に押し寄せているインバウンド来訪者を県内他地域へと周遊させ、滞在時間延長により、山梨県積年の観光課題である観光消費額増加を目指す。
具体的な取り組み
01強い点を作る
- カイフジヤマロード周辺地域のコンテンツを磨き上げ、魅力ある観光素材を作る。
- 既存の観光地を整備するだけでなく、地域の隠れた魅力を発掘し、新たな観光資源として育てる。
02点を線でつなぐ
- 分断している観光コンテンツをつなぐ二次交通を充実し、周遊を促す。
- 河口湖周辺(富士北麓地域)への来訪者に県内別地域への周遊のきっかけとして、二次交通整備による周遊手段を提供する。
⇒申し込みがあった際に運行する交通付きツアーを提供し、観光客が県内を不便なく周遊できるようサポート。
03線を束ねて面にする
- 「ツーリストベース河口湖」、「FUJIYAMAツインテラス」、「甲府湯村温泉」の3拠点をツアーの発着ならびに周遊拠点として整備することで面的な観光エリアを創出する。
- 山梨県全体でのインバウンド来訪者の周遊を促進することで、カイフジヤマロードを大動脈として活性化し、観光消費額の向上につなげる。
整備した拠点
「ツーリストベース河口湖」
河口湖を訪れるインバウンド来訪者向けに、新しい観光交流拠点として、2023年11月に河口湖駅前に開設したカフェ施設。和モダンを基調とした内装で、畳敷きの床に靴を脱いでリラックスできるなど、気軽に「日本の文化」を体験できるスポット。地元のソウルフード「ほうとう」や、日本食を意識した「おにぎり」、「和菓子や甘味」も提供し、着物や甲冑を身に着け、雄大な富士山を望むロケーションで撮影ができる体験コンテンツも用意。電動キックボードや電動トゥクトゥク等モビリティサービスも提供。
「FUJIYAMAツインテラス」
富士山・河口湖・山中湖を一望できる絶景スポットとして、笛吹市が2021年にオープンした展望台。すずらん群生地からFUJIYAMAツインテラスまでEVバスを運行。事前予約・事前決済の仕組みを導入し、FUJIYAツインテラスの入場数をコントロール。2024年4月に、笛吹市がその麓に「リリーベルヒュッテ」という多機能施設を整備。JTBが笛吹市から長期賃貸借契約により、単なる休憩所ではなく、情報発信や地域の特産品販売など、笛吹市ならびに山梨の魅力を発信する場として運営。
JTBならではのサポート
- 関係機関・事業者との連携による、環境に対応したサステナブルな最新モビリティサービス(二次交通)の提供。
- JTBグループのシステム「JTB BOKUN」等を活用した「オーバーツーリズム対策」「キャッシュレス対策」
- 旅行会社ならではの発着を連動したコンテンツ造成と販路拡大。
実施スケジュール
2023年8月24日
「リリーベルヒュッテ」FUJIYAMAツインテラスエントランス施設整備事業受託
2023年10月23日~2024年3月31日
「リリーベルヒュッテ」整備事業
2023年11月8日
「ツーリストベース河口湖」オープン
2024年4月25日
「リリーベルヒュッテ」オープン
お客様の声 ・ 今後の展望
お客様(施設来場者)の声
「ツーリストベース河口湖」を利用されたお客様からは「富士山の絶景をじっくり堪能できた。特に、屋上からの眺めは最高だった」といった満足度の高いコメントをいただきました。「FUJIYAMAツインテラス」では、富士山を見られた来訪者の9割以上が「素晴らしかった」「感動した」と評価をいただいており、見られなかった来訪者からも「またリベンジしたい」など好意的な意見をいただいています。
今後の展望
富士山をきっかけに旅行者を呼び込み、そこから山梨の多様な魅力を発見してもらうことを目標に、地域の方々の声に耳を傾け、地域の方々の望む方向へ、共に進んでいこうと思っています。カイフジヤマロードのように山梨県全域で周遊させるという構想は、地域にとっての願いでもあるので、今後も実現に向けて取り組んでいきます。このプロジェクトが他の地域のモデルケースになるよう、これからも地域と一体となって、山梨の観光をより魅力的なものにしていきたいです。
おすすめポイント
今回は、インバウンド来訪者の周遊を促進することで、観光消費額の向上を目指す山梨県の取り組みをご紹介しました。これまでの二次交通の整備に加え、インバウンド旅行者向けの新しい観光交流拠点の整備や、観光拠点への事前予約・事前決済の仕組みの導入により、新たな周遊の流れを作ることができます。地域と地域を繋ぐだけではなく、地域と一体となって魅力的な観光コンテンツを作り、それを繋いでいくことが重要です。同じように、観光資源を活用した地域活性化に向けて取り組む自治体の皆さまの参考となれば幸いです。
関連ダウンロード資料
オンラインプラットフォーム「JTB BOKUN」活用集
担当者コメント
地域にとって観光はなくてはならない産業であり、観光のチカラは非常に大きいものであると観光の最前線で日々実感しています。また日本中のどの地域においても、その地域のタカラとなるような「地域ならではの魅力」があると思います。私たちJTBの役割は、観光客にその魅力をどう体感してもらうか、どう繋げていくか、どう知ってもらうかなどを、地域の皆様と一緒に包括的に考え、覚悟を持って実践していくことだと思います。今回の取り組みは、今まで山梨県にはなかった新たな周遊の流れを作ること、つまりゼロからイチを作るもので、私どもJTB甲府支店は不退転の覚悟を持って取り組んでいます。課題も山積みですが、地域事業者・山梨への観光客に貢献できると信じて、今後も地域のパートナーとともに事業を推し進めていきたいと思います。
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