2021年11月、「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」にて、観光部門で2050年までにカーボンネットゼロを実現するための「グラスゴー宣言」が発表されました。その実現に向けた宿泊事業者向け支援を進めるため、2023年5月に環境省が「地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」について参加団体を公募し、全国から16の団体が選ばれ、その中で唯一、県を跨いだ取り組みを提案したのが、福井県あわら市、石川県加賀市の観光事業者及び地域金融機関です。
2024年3月に北陸新幹線が延伸し、注目を集めるエリアが「脱炭素」に向けてどのようなことに取り組んできたのか。メインでプロジェクトを進めてきた福井銀行と、山代温泉観光協会、あわら市観光協会、福井県あわら市、石川県加賀市それぞれの代表の方に、この1年の取り組みについて伺いました。
お話を伺った方(取材対象者名)
株式会社福井銀行 取締役兼常務執行役 吉田 啓介 氏、地域創生チーム チームリーダー 山口 淳治 氏、調査役 竹下 悟史 氏
一般社団法人あわら市観光協会 会長 前田 健二 氏(あわら温泉美松 社長)
山代温泉観光協会 会長 和田 守弘 氏(たちばな四季亭 社長)
福井県あわら市 市民生活部 生活環境課 環境グループ 課長補佐 江守(えもり)伊佐子 氏
石川県加賀市 産業振興部 環境課 課長 津原 孝佳 氏
1 観光産業のカーボンニュートラルの現状 2021年8月、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change/気候変動に関する政府間パネル)が、産業革命前と比べた世界の気温上昇がこれまでより10年早く進み、2040年までの間に1.5度以上に達すると予測しました(※)。同時に国内外では豪雨や干ばつ、熱波の増加など異常気象による災害が頻発し、気候変動への対応が重要な課題となっています。
統合報告書の概要(簡易版)【2023年4月】(環境省ホームページ)
このように、「脱炭素社会」の実現に向けて待ったなしの状況である一方、観光業界は新型コロナウイルス感染症で、人の移動が制限され、経済が落ち込んだことにより、他業界に比べ、意識が高いとは言えない状況にあります。ブッキングドットコムレポート2023によると、世界の旅行者の約8割が「サステナブルな観光」の重要性を意識しているのに対して、旅行業者が対応しきれていない…という現実。事例はあるものの、「点」での取り組みが多く、取り組みの輪が広がっていきづらい状況にあります。
そこで今回、環境省の「地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」への公募をきっかけに、「点」ではなく「面」での取り組みができないかと考えたのが、福井銀行地域創生チームのみなさん。JTBが伴走する形で、「あわら市、加賀市の4温泉」とともに「脱炭素✕温泉街」のカーボンニュートラルツーリズムのブランディングを進めるべく、福井銀行を中心に、あわら市、加賀市、あわら市観光協会、山代温泉観光協会、山中温泉観光協会、片山津温泉観光協会、北陸銀行、北國銀行に声がけし、多数のステークホルダーが関わる、県を跨いだプロジェクトがスタートしました。
福井銀行 吉田 氏
「3月16日に新幹線が敦賀市まで延伸しました。それまで、我々は駅近辺の再開発事業など、ハード面の整備に注力していました。ただ、まち自体に賑わいや魅力が加わらないことには設備が生かしきれないという懸念もありました。そこで、世界的な潮流となっている“脱炭素”を観光に絡めることで、新たな観光価値を見い出せるのではないかと考え、今回のモデル事業に申請することを決めた次第です。福井県内で最もインパクトがあり“脱炭素”に効果的なのは、温泉地と考え、あわら温泉街をまず対象の地域にしたいと考えたときに、福井県だけではなく、北陸地域が一体となって“面”として魅力を向上できれば、さらに有効だと。そこで、北陸新幹線開業で駅ができる予定であった石川県加賀市にある3温泉の観光協会様、北陸銀行様、北國銀行様にお声掛けをし、本事業に関わっていただきました」
2 北陸一体となって進めた取り組み 2024年3月、北陸新幹線が敦賀まで延伸するにあたり、芦原温泉駅、加賀温泉駅と、それぞれの温泉地に新たな駅ができました。首都圏から多くの観光客が訪れ、賑わいを見せている今だからこそ、「脱炭素」への取り組みが重要です。あわら市、加賀市ともに以前から「エネルギーの地産地消」に取り組んでいましたが、製造業が中心で、観光業はまだまだ追いついていませんでした。あわら市、加賀市それぞれにどんな課題を抱え、どんなことに取り組んできたのでしょうか。
加賀市 津原 氏
「日本創成会議が2014年に発表した、“2040年に消滅の可能性がある都市”に、石川県の金沢以南で唯一、加賀市が入りました。人口減少が大きな課題となる中でも地域活性化は目指したい。そこで、世界的な潮流となっている“脱炭素”に着目し、『加賀市版RE100』(加賀市ホームページ) を策定しました。市内のエネルギーを地産地消にすることで消滅可能性都市からの脱却を目指しています。 2018年11月には、持続可能なエネルギーの推進に取り組むための“世界首長誓約/日本”(世界首長誓約ホームページ) に署名。市内のエネルギーの地産地消というところでは、再生可能エネルギーを増やすために、初期費用のかからないオンサイトPPAを利用し、公共施設に太陽光設備を導入しています。ただ増やすだけではなく、地消の役割を担うために北陸電力と連携して“加賀ふるさとでんき”というエネルギー会社を立ち上げました。行政として取り組むのはもちろんですが、市民のみなさんや民間企業の方々も含めた流れを作っていきたいと思っていた矢先に今回のお話を伺い、ぜひ一緒にやりたいと思いました」
あわら市 江守 氏
「2022年3月に“第2次あわら市環境基本計画”(あわら市ホームページ) を策定し、目指す理想像として2022年4月に“ゼロカーボンシティ宣言”をいたしました。あわら市の産業の多くを占めるのが製造業です。市内での脱炭素の取り組みとして、まず、市内に製造工場を持つ企業を対象に、“脱炭素企業交流会”を開催。お話を伺うと、製造業のみなさんはサプライチェーンの流れの中で、積極的に脱炭素施策を進めていて刺激を受けました。次に多いのが観光産業で、旅館が大きな割合を占めているにも関わらず、脱炭素をどう進めたらよいか検討すらつかない状態で、大きな課題となっていました。環境省中部地方環境事務所にご相談したところ、今回のモデル事業について伺いました。あわら市としても何か取り組みができないか検討し、北陸新幹線開業を目前に、同じように温泉地を抱える加賀市と何かできないかという思いから、今回の事業に結びつきました」
「脱炭素」への取り組みは製造業が進んでいたとはいえ、あわら市観光協会、山代温泉観光協会ともに、事業者発信での取り組みを以前から進めていたため、観光事業者としての課題と、これまでの取り組みについて伺いました。
あわら市観光協会 前田 氏
「環境省、林野庁の事業採択を受けて開始した実証実験を継続する形で、もりもりバイオマス株式会社を設立し、木質バイオマスエネルギーの有効活用に取り組んできました。冬場以外は木質バイオマス燃料だけでほぼ全館の熱源を供給できるようになったものの、日本に木質バイオマスが得意なボイラー会社が少なく、現在はヨーロッパのものを使っています。日本製に比べると耐久性が低く、設備更新の時期となる今後、どうするかが課題です。メーカーにしてみれば、木質のボイラーを作る費用が採算ベースに乗らないと値段も下がりません。これらの取り組みを、我々、一中小企業が続けるのはハードルが高く、国が舵を取って継続していくことが非常に重要です。今回、地域全体で取り組む試みができたことによって、広く知っていただけたらいいなと思っています」
山代温泉観光協会 和田 氏
「製造業がカーボンニュートラルに取り組む中、観光におけるサステナビリティの必要性を感じていたものの、あまり進んでいませんでした。ただ、これから必ず必要となってくることは間違いありません。また、水道光熱費も上がってきていますので、“省エネ”を意識することがそのまま脱炭素に繋がります。これまでは、各企業、各旅館の一部でしかできていなかったこともあり、今後は勉強会や地域を挙げた取り組みが対外的に伝わっていけば、意識の高いインバウンド観光客の方にも来ていただけるのではないかという期待も込めながら進めています。さらに、太陽光発電や電気自動車の普及による充電設備の充実、ボイラーからエコキュートへの設備転換も少しずつ取り組んでいきたいです」
──2024年3月16日に、北陸新幹線金沢―敦賀間が開業し、東京から直通列車で結ばれました。この大きな変化を受けて、今後は北陸全体としてどのような地域を目指していくのでしょうか。
あわら市観光協会 前田 氏
「地方でインバウンド誘致をするのは、かなりハードルが高いです。さらに福井県は、京都や金沢、飛騨高山に囲まれているため、どう差別化していくかが、今後の誘客に大きく影響します。単純に“福井県に来てください”と言っても、外国人の方からすれば“福井ってどこですか?”という話です。日本全国に温泉はたくさんありますから。新幹線の開業は大きなイベントですが、インフラは継続していきます。いずれカーボンニュートラルは観光業に必須となっていきます。脱炭素を実現するためのエネルギーの地産地消は、都会ではなかなかできない取り組みですよね。地域で協力して継続していければと思います」
山代温泉観光協会 和田 氏
「能登半島地震があり素晴らしい自然が破壊されてしまいました。天災とはいえ非常に胸が痛みます。時間はかかるとは思いますが、加賀温泉郷も同じ石川県にある観光地として、能登半島の復興を信じています。まずは我々が旗を振り、観光をしっかりと前へ進めていくということで復興につなげていきたい。地域全体でカーボンニュートラルに取り組むことは、北陸全体の観光を盛り上げ、国内の意識を高めてくれると思いますので、まずは加賀あわら地区が先陣を切って進めていきます」
3 脱炭素を進める4ステップ 2024年2月時点の現状のメニューマップ。今後、情報公開に向かって取り組みを継続していく。
「脱炭素」を進めるためには、「知る」「測る」「減らす」「情報公開」の4つのステップがあると言われています。初年度となった2023年では、「知る」に注力して活動し、「測る」「減らす」「情報公開」の3つのステップに、今後、各地域のプレイヤーがつながるような仕組み作りに取り組みました。
福井銀行 吉田 氏
「初めに、4つの観光協会が一同に集まるセミナーを開催しました。あわら市、加賀市、それぞれが取り組む脱炭素経営の具体的な内容を披露していただいたことで、各地域の取り組みが共有できたと思います。セミナーでは、NHKエンタープライズのエグゼクティブプロデューサーである堅達京子さんをお招きし、地球温暖化の現状や脱炭素経営に取り組む意義についてお話いただきました。 その後に実施したワークショップでは、脱炭素経営のはじめ方や、目指すべき観光地のあり方について議論を重ね、参加した温泉事業者の方々からは、脱炭素経営の取り組みに関して総論では賛成をいただきました。ただ、各論に入ると、規模の小さな事業者がどう取り組むかなど、脱炭素経営の課題はまだまだ山積みです。効果をしっかり打ち出すためには、事業者のみなさまに対してインセンティブを示す必要があり、その一つとして、脱炭素経営の認証制度を制定し、その認証が情報公開に進むエンジンになるという仮説を立てて、3か年計画で進めて行く予定です」
モデル事業は1年でいったん終了するが、地域ぐるみでメニューマップに沿って継続していく。
そして今回、あわら市観光協会の前田会長と、山代温泉観光協会の和田会長には、セミナーにご登壇いただき、これまでの活動などについてお話をいただきました。
あわら市観光協会 前田 氏
「現在、取り組んでいる木質バイオマスの件と、修学旅行先の探究という、あわら温泉の目指すところについてお話しました。修学旅行における学校側の要望は年々深まっていて、SDGsへの取り組みや、教育旅行での体験が求められています。福井県には原子力、水力、火力、風力と、すべての発電施設があり、エネルギーを勉強するなら福井県です。エネルギーの未来を、これからの子どもたちに考えてもらうきっかけ作りは非常に大切だと考えています」
山代温泉観光協会 和田 氏
「これから脱炭素経営に取り組むにあたっての未来像や、ワークショップを通じて作成した地域のロードマップについてお話しました。ロードマップを見ていただくと、今後の展開のイメージが湧くのかなと。加賀市では、最近無人の電気送迎バスの運行が始まりました。まだ実証実験段階ではありますが、各地域でそういった取り組みが進んでいけば、さらに面白くなるのではないかと思います」
セミナーやワークショップを通じて策定した「グランドデザイン」は、議論を交わして見つかった課題を解決し、目指すべき将来像に向かうための長期的な指針です。座組が広域で、多くのステークホルダーが関わっていたため、コンセンサスをとることに一番時間がかかったそうです。
福井銀行 吉田 氏
「脱炭素という大きな目標をベクトルに、それぞれの立場を理解し、考えながら一緒にやっていく、その基盤づくりに丁寧に取り組めたと思います。 加賀温泉とあわら温泉は、県は跨っていますが立地的には隣接しています。自然環境や食文化は近いところがありますので、価値観も似ていると感じました。北陸新幹線が延伸し、それぞれに駅ができました。今後は、お客様をいかにして各温泉街に取り込んでいくか、さらに、脱炭素の取り組みをしつつ、お客様に自身の旅館に宿泊していただくか。事業者である以上、商売上の命題はそこにあると思います」
4 認証制度の取り組みについて 今回のモデル事業の最後のステップ「情報公開」の項目に、脱炭素経営に関わる旅館などの事業者の方々のインセンティブとして、認証制度の制定が設けられています。今後、地域での取り組みを持続させていくためには、多くの事業者が納得行くような認証制度を設け、広く認知していく必要があります。
福井銀行 山口 氏
「認証制度については、大枠の説明についてはご理解をいただいていますが、これから、各事業者と詳細を詰めていく段階です。認証を取得することで、サステナブルな取り組みをしていることを対外的にアピールができて、さらに誘客につなげられるものにしたい。観光価値に変えることがインセンティブだと捉えて継続することが大切だと思っています。もちろん認証ありきではなく、あくまでもひとつのツールです。脱炭素を一緒にやっていくために必要な共通項という意味で認証制度は有効ではないかと思っています。一方で、小規模事業者を取り組みに参画してもらいやすいようにする工夫は今後必要です。厳しすぎず、ゆるすぎない基準を、サクラクオリティマネジメント様と相談しながら設定できればと思っております」
今後については、今年度中にある程度の方向性を見出し、各金融機関、あわら市、加賀市と相談しながら、運用していくための費用を確保するという現実的な問題の解決が必要だと感じています。
福井銀行 山口 氏
「今年度も国の施策があるため、その情報をJTB様からご提案いただき、上手く活用しながら継続していけたらと思っております。また、加賀市様はまだ震災の影響があるため、様子を見る必要があります。あわら市様におきましては、先日、前川副市長に環境省のフォーラムにご登壇いただきました。あわら市の観光ビジョンを策定する中で、環境問題が大きなテーマとして必要となってくる、そこに今回の取り組みをしっかりつなげてほしいという熱いメッセージを受けて、改めて頑張らなければと感じているところです。まずは話し合いからにはなりますが、旅館事業者のみなさんの付加価値になるような認証制度を制定するために、一歩一歩、歩みを続けていきます」──認証制度の制定については、各観光協会はどのように制度を活用していきたいと考えているのでしょうか。
あわら市観光協会 前田 氏
「海外には、三つ星や二つ星といったホテルランキングがあります。勝手に星を付けられるミシュランなどもありますが、外国人の方が思う日本文化と我々が思う日本文化は少し異なるので、自分たちの感覚で認証を取りにいける制度だったらいいのかなと。よーい、スタートで全員が参加できればいいのですが、脱炭素経営に関する取り組みは膨大なので、最初はある程度、大規模な事業者からになるとは思いますが、今後、続けていくのであれば、小規模事業者もすべて取り込めるような仕組みを考えていただければと思います。そのためのサポートを、ぜひJTBにお願いしたいです。誰よりもホテルや旅館を知っているJTBだからこそ、できることがある。SDGsへの取り組みは今後、絶対に必要です。グローバルスタンダードの格付けと合致していくようなイメージだと聞いているので、期待しています」
山代温泉観光協会 和田 氏
「具体的なことに関してはこれから協議しながら丁寧に進めていくと思いますので、何とかみなさんの意見をうまく取り入れながら、良い方向で実行できればと思います。この認証制度を受けることが大きなメリットになることが、今回のモデル事業に取り組む目的でもありますので、きちんとした規定などを提示して、資金力のあるところだけしかできない取り組みにならないよう、前に進んでいけたらと思っています」──最後に、この1年間の取り組みを振り返り、有意義だったことやむずかしさを感じたこと。今後目指していきたい方向性について、各担当者にお伺いしました。
あわら市 江守 氏
「あわら温泉だけではなく、北陸という広域で加賀市の3温泉と脱炭素を進めることが地域の魅力を上げることに繋がると思うので、手を組むことで地域力を上げて、魅力を上げていきたいと考えております」
加賀市 津原 氏
「3月16日に北陸新幹線が開業し、勢いとムードは最高潮です。絶好の機会を逃すことなどなく、誘客促進に向けていく中で、カーボンニュートラルのブランドの確立をぜひ進めていっていただきたいと考えております。観光業界のみなさまの脱炭素経営の取り組みを、自治体としてもできるかぎりサポートしていけたらと思っています」
あわら市観光協会 前田 氏
「脱炭素経営を進め、SDGsを確立しながら、教育旅行を誘致して旅行需要の平準化をする。これが業界を安定させる唯一の方法だと思っています。エレベーターピッチのような集客では雇用は安定せず、ハンドリングもしにくい。その手段として修学旅行やインバウンドに力を入れていきたいです。目的と手段を間違えないよう、しっかりと進めたいと思っています」
山代温泉観光協会 和田 氏
「国内のお客様とあわせて、インバウンド推進も目指していきたいと思っています。現状は、コロナ前後も含め、インバウンド比率が2%と非常に低い状況です。なぜお越しいただけないのか、なぜ選ばれないのか、様々な原因があるとは思いますが、カーボンニュートラルを通じて、海外に向けて発信するきっかけになればいいなと。3温泉めぐりはもちろん、九谷焼の絵付けや和菓子・畳づくりなど、山代温泉ではさまざまな日本文化が体験できます。地域一体で取り組むことが海外に響くかもしれないと期待しつつ、必要不可欠なこととして進めていければと。それが山代温泉のブランディングにも必ずつながると信じています」
福井銀行 吉田 氏
「1年という短い期間の取り組みでしたが、もちろんここで終わらせるわけにはいきません。今回の事業実施のタイミングが、2024年3月の北陸新幹線の延伸の時期とちょうど重なり、自治体や事業者のみなさまにとってはご負担をおかけしたと思います。また、具体的に取り組んだ時期が秋口で、蟹や温泉のシーズンと重なりました。さらに年が明けてすぐに震災もあり、いまだに加賀温泉の一部においては影響が出ています。カーボンニュートラルは将来にわたる話です。今回、意識の高いみなさんと、脱炭素や環境問題について前向きに議論し、観光地にとっての価値に変えていくために意見を共有できたことは素晴らしい経験でした。今後は全国に広がるような取り組みにしていきたいと思っています。 地域ぐるみという名前の通り、脱炭素社会は産学官が連携して広域で進めていくものです。脱炭素経営もそうですが、観光業が取り組むべき姿を、我々も事業を進めながら改めて学ばせていただきました。点ではなく、面で捉えて地域の付加価値を高めていくことは、非常に有意義なことで、観光業界だけでなく、福井でいうと繊維業界や眼鏡業界など、さまざまな業種、業界を盛り上げることに当てはまるモデルケースだと感じました」
5 まとめ 今後、「選ばれる観光地」として必要不可欠となる「脱炭素」への取り組み。あわら市、加賀市と実施した「地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」は、まだ入口に過ぎません。「持続可能な観光」を実現するには、地域一体となって継続していくことが必要だと、今回のケースで実感しました。このモデルケースがみなさまの参考になれば幸いです。
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