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失敗を恐れずチャレンジし続けることで、若者がワクワクできる茨城県を目指す

失敗を恐れずチャレンジし続けることで、若者がワクワクできる茨城県を目指す

茨城県

4つの柱を基準に新しい総合計画を策定

失敗を恐れずチャレンジし続けることで、若者がワクワクできる茨城県を目指す

茨城県知事 大井川 和彦

※下記は自治体通信 Vol.21(2019年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


9月から開催された、第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」。都道府県別対抗としては全国初の「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019IBARAKI」(以下、eスポーツ選手権)が開催され、都道府県総合でみごと茨城県が優勝を飾った。このような取り組みをはじめ、大井川氏は茨城県知事に就任して以来、次々と新たな取り組みに挑戦している。同氏に、その詳細を聞いた。

国体に「eスポーツ」を、VTuberに「茨ひより」を

―都道府県別対抗としては、全国初のeスポーツ選手権が開催されますね(取材時は開催前)。

 はい。もともとは職員からの提案があり、「それはものすごくいいアイデアだ」と。そこで、日本スポーツ協会や日本eスポーツ連合などと連携しつつ開催に向けて進めていき、文化プログラムとしての位置づけですが、全国初の都道府県別対抗として行われることになったのです。

 「そもそも、eスポーツはスポーツなのか」という議論は最初から出ていました。しかし、eスポーツは小学生や高齢者、あるいは障害のあるなしに関係なく参加できる裾野が広いコンテンツ。選ばれた選手が競技し合うのを、観戦するのも盛り上がりますから。私の実体験として、ゲーム大会の実況にはじつにさまざまな人が集まり、非常に盛り上がるのを知っていましたからね。そのため、都道府県別対抗として競技することにこだわったのです。


―「全国初」というつながりでは、自治体として初めてVTuber(※)を公認しています。

 そうですね。VTuberである「茨ひより」さんには、eスポーツ選手権のMCを担当していただく予定です。これはeスポーツにも通じるところがあるんですが、バーチャルなキャラクターと“リアル”にコミュニケーションするという世界観が、ときには本物の人間と話す以上の親近感を生み、若者を中心に熱心なファン層がついたりするんです。

 ターゲットにもよるでしょうが、たとえば私が前に出るよりも茨城県のアピールに効果的だったりするんですよ。

※VTuber:Virtual YouTuber (バーチャルユーチューバー)の略。YouTuberとして動画配信・投稿を行うコンピュータグラフィックスのキャラクター、またキャラクターを用いて動画配信・投稿を行う人のこと

―実際に県のアピール効果につながっていますか。

 つながっていますね。もともと茨城県は、インターネットを活用したメディア戦略には積極的なほうだったと思います。くわえて、新たにVTuberを取り入れたことによって、茨城県の広報PRをフォローしてくれる人が急増しました。実際に「茨ひより」さんがアナウンサーを務めているYouTubeチャンネル「いばキラTV」登録者数は、自治体の公式YouTubeチャンネルとしては初の10万人を突破。「茨ひより」さんの公式Twitterのフォロワー数も、2万人を超えました。広告換算すると、約2億4,000万円の効果が出ています。

 また、VTuberはさまざまな言語に対応することが可能なので、当初から海外も視野に入れたPR戦略を立てていました。こちらは、やっと最近になって進めているところですね。


チャンネル登録者10万人を達成して「いばキラTV」に贈られた、
YouTubeシルバークリエイターアワードの記念品「銀の盾」。写真左が茨ひより

若者の雇用を促進させるため、12社の企業を誘致

―そうした取り組みの一方、最大50億円の補助金を創設し、成長分野の企業の本社・本社機能・研究所の積極誘致を行っています。

 ええ。これまでに話した内容は、若者を中心に茨城県に対して興味をもってもらうための取り組み。こちらは、若者の東京都への流出を防ぐとともに、県外の若者を呼び込むための取り組みですね。

 特に茨城県の場合、東京都が近いことから若者がどんどん流出してしまっているんですね。それを食い止める最大の動機づけは、彼・彼女らが就きたいと思える職業がこの茨城県にあることだ、と。

 そういう点において、本社・本社機能・研究所の誘致にこだわっているのです。

―その理由を教えてください。

 誤解を恐れずに言うと、若者が憧れるような職業を提供する必要があると考えているからです。茨城県は関東圏で平地が非常に多いことから、以前から工場の誘致を積極的に行ってきました。工場の仕事は、非常に大切な仕事です。ただ、業務の自動化が進むなか、工場での雇用だけに頼るのでは今後は成り立たないと思うんですね。そういう観点から、大学を卒業して将来性の高い仕事にそのまま就職できるには、政策として本社・本社機能・研究所の誘致が必要だと考えたのです。

―成果はいかがですか。

 取り組みを始めてから、自動運転や電気自動車のモーターを扱う企業など、計12社の誘致に成功しています。これは、ひとえに企業誘致担当課職員のがんばりによるところだと思いますね。

 また、昨年に立地した企業の経済波及効果を計算すると、10年で1兆4,600億円の見込み。これは、私が想定した以上の効果が出ています。

県の意識改革「いまのままじゃダメ」

―先ほどから聞いているとおり、大井川さんは次々と新しいことに取り組んでいます。なぜでしょう。

 基本方針として、「いまのままじゃダメだ」と思っているんです。なにもしなければ、退屈な県、保守的な県、それこそ巷で言われている魅力度最下位の県と思われて終わってしまうのではないかと。それを防ぐには、企業と同じで新しい分野を自ら切り開いていかなければならない。失敗することもあるでしょう。ただ個人的には、どんどん失敗していいと思っています。失敗すれば、次は成功するためにやり方を変えればいいのですから。

―しかし、税金を扱っているという観点から考えると、自治体はなかなか失敗できないのでは。

 やみくもに失敗するのはいけません。なにが重要かを考え、選択と集中をしながら「ここぞ」というときには徹底してやり切る。そうすれば、失敗してもそこから得られる価値があるはずです。

 いちばんダメなのが、「横並びでやりたい」「やってきたことを変えたくない」「過去に例がない」「国と方針が違う」というのをやらない理由にしてしまうこと。正しいと思えば、たとえ国と方針が違っても、逆に国のほうから方針を変えてもらえるよう働きかける努力をすればいいのです。最終的には私が、全部責任をとるので。これは私が職員に対して、つね日頃言っていることですね。

「豊かさ」「人財育成」「安心安全」「夢・希望」

―今後の行政ビジョンを教えてください。

 茨城県では、平成30年度から新たな総合計画を策定。「豊かさ」「人財育成」「安心安全」「夢・希望」という4つの柱で新しいチャレンジに取り組んでいきます。この4つをどれひとつ欠けることなく、失敗を恐れずに新しい展開をしていくことにより、住んでもワクワクするし外から見てもワクワクする。そんな、非常に魅力あふれる場所にしていくことが、究極のゴールではないかと思っています。


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