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自治体法務検定とは?メリットや難易度、試験を受けるべき人を解説【自治体事例の教科書】

自治体法務検定とは?メリットや難易度、試験を受けるべき人を解説【自治体事例の教科書】
<目次>

地方自治体法務検定とは、自治体職員の「法務能力」を向上させるための検定試験です。

地方分権が進むこれからの地方自治体は、住民に身近なところで、それぞれの地域独自の施策やサービスを提供する必要があります。

そのためには、福祉や産業振興、まちづくり、情報など多彩な専門職員が必要ですが、各分野に共通した法務能力を備えた専門職員が不可欠です。

そのために、十分な法務能力を備えた有能な人材を養成するための資格が地方自治体法務検定なのです。

今回は、自治体法務検定を受けるべきが迷っている方に向けて、

・自治体法務検定の資格概要
・自治体法務検定のメリット
・自治体法務検定の注意点
・自治体法務検定を受けるべき人
・自治体法務検定の勉強法

以上のことを解説していきます。

この記事を読めば、自治体法務検定の基本知識が身につき、検定を受けるべきか自身で判断できるようになります。

自治体法務検定の基本知識を知るために、早速見ていきましょう。

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1.自治体法務検定とは?

前途のとおり、自治体法務検定とは、自治体職員の「法務能力」を向上させるための検定試験です。

地方分権が進む現代において、各自治体の自治力の底上げを図ることを目的として、自治体法務検定委員会によって設置・運営されている民間資格になります。

自治体検定は、必要最低限の法律の基礎知識を問う「基本法務」と、既存の法令や制度などの知識を問う「制作法務」の2部構成になっており、誰でもどちらからでも受験することができます。

1-1.基本法務とは

基本法務は、自治体が政策を進めていく上で欠かすことのできない基本法「憲法」「行政」「地方自治法」「民法」「刑法」の知識と、政策を根拠づける法への理解力や国や自治体の法制に関する理解力などの法務能力の向上を目指したものです。

1-1-1.基本法務の問題例

基本法務の試験には次のような問題が出題されます。

◇問題例1

Q.次の憲法の規定のうち、正しいものを1つ選びなさい。

  1. 国は、いかなる場合でも検閲を行ってはならない。
  2. 国は、神教及び仏教についてのみ、その活動を行うことができる。
  3. 国は、宗教団体の正当な宗教活動であれば援助することができる。
  4. 国は、公の秩序を妨げる場合であれば、国民の思想・良心の自由に制約を加えることができる。

    正解=1

     (憲法21条1項に規定されています。)

◇問題例2

Q.民法上の一般的な債権の消滅時効のうち、正しいものを1つ選びなさい。

  1. 1年
  2. 5年
  3. 10年
  4. 20年

    正解=3
 (憲法21条1項に規定されています。)

引用:自治検基本法務演習問題より

単に基本法務の基礎知識を習得するだけの試験ではなく、自治体の実務に活かすための「考える自治体職員」としての力が身につけられる試験となっています。

次に、政策法務について見ていきましょう。

1-2.政策法務とは

政策法務とは、「わがまち」の自治を創造するために法務知識の習得を目指すものです。地方分権の趣旨を踏まえ、法令を解釈・運用し、戦力に基づいて法務行政を行うなど、自治体職員が自らの価値と判断に基づいて行政実務を進めていくための政策法務能力を目指します。

1-2-1.政策法務の問題例

政策法務の試験には次のような問題が出題されます。

◇問題例1

Q.行政課題を解決するために誘導的手法を採用する際に留意すべき事項として、次のうち妥当でないものを選びなさい。
  1. 補助金等の給付に際しては、合理的理由がないにもかかわらず、一方に給付し、他方に給付しなかった場合、違法になる可能性がある。
  2. 経済的手法を採用するに当たっては、必要以上の心理的圧迫を与えないことのほか、対象領域の妥当性などにも留意する必要がある。
  3. 公表される情報により市民の利益が守られることになる場合には、公表により利益を損なわれる者がいたとしても、その影響についての配慮はしないよう留意する必要がある。
  4. 相手方が従わないと言っているにもかかわらず、行政指導を執拗に継続した場合、違法になる可能性がある。

正解=3

1、2、4は正しい。なお、4は、行政指導はあくまでも相手方の任意の協力によって実現されるべきものであるとの行政手続制度の趣旨を確認しておく必要がある。 3 は、公表により影響を受ける者に取り返しのつかない損害を与えないよう留意すべきであるので、誤り。

◇問題例2

地方自治法の「附属機関又は専門委員」に関する次の記述のうち、妥当なものを選びなさい。

  1. 補助金等の給付に際しては、合理的理由がないにもかかわらず、一方に給付し、他方に給付しなかった場合、違法になる可能性がある。
  2. 経済的手法を採用するに当たっては、必要以上の心理的圧迫を与えないことのほか、対象領域の妥当性などにも留意する必要がある。
  3. 公表される情報により市民の利益が守られることになる場合には、公表により利益を損なわれる者がいたとしても、その影響についての配慮はしないよう留意する必要がある。
  4. 相手方が従わないと言っているにもかかわらず、行政指導を執拗に継続した場合、違法になる可能性がある。

正解=2

1は、附属機関から出された答申を尊重することは求められるが、法的に拘束されるものではないため、誤り。3は、専門委員は独任制なので、誤り。専門委員の選任については、議会の関与は予定されていないので、誤り。

引用:自治検政策法務演習問題より

基礎となる法務知識を事案解決や新たな政策立案とその実現に活かせるようになるための、法務の基礎力から応用力までを問います。

1-3.自治体検定の認定基準はスコア制

試験の結果は合否判定ではなく、TOEICやTOEFLと同じようにスコア制です。

1000点満点で採点し、900点以上がプラチナクラス、700点以上のゴールドクラス、500点以上のシルバークラス、500点未満は認定なしの4つの認定に分かれます。

2.自治体法務検定の資格概要

自治体法務検定の資格概要は次のとおりです。

受験資格

誰でも受験可能(自治体職員でも可)

試験内容

◇基本法務◇

自治体が政策を推進していく上で欠かせない「基本法」分野の知識向上のための試験

◇政策法務◇

法令を解釈・運用し、条例を制定し、行政実務を推進していくための制作法務知識を問う試験

認定基準

・1000点〜900点:プラチナクラス認定

・899点〜700点  :ゴールドクラス認定

・699点〜500点   :  シルバークラス認定

 

・基本法務 5,500円

・制作法務 5,500円

※併願の場合、9,900円

試験会場

札幌市、仙台、長野、東京都23区内、名古屋、大阪、京都、広島、福岡など、自治体法務検定委員会が全国に会場を設ける

2-1.自治体法務検定は団体受験も可能

自治体法務検定は、少しでも多くの人が受験できるように一般受験とは別に「団体受験」も実施可能です。

1科目ごとに受験人数が20人以上いれば申し込みすることができ、自治体や任意の研究会などが「団体責任者」を通して、検定事務局に一括して出願します。

受験日程は各団体の希望日で、自治体法務検定委員会が認めた日に実施することが可能です。会場匂いでも各団体が選定し、、自治体法務検定委員会が承認した会場で実施することになります。
※団体受験をお考えの方はこちらより申し込み用紙をダウンロードください。

▷団体受験のお申し込み

2-2.自治体法務検定の難易度

◎2020年一般受験結果報告

 

受験者数

平均点

基本法務

289人

509点

政策法務

158人

669点

◎認定基準別受験者数

 

基本法務

政策法務

プラチナクラス

1

2

ゴールドクラス

27

69

シルバークラス

116

75

認定なし

145

12

合計

289

158

2020年度の受験結果を例に難易度を見てみますと、基本法務の平均点は1000点満点中509点、政策法務は669点でsじょた。法務能力に関する試験ですので、基礎知識を覚えるだけでも決して易しい試験ではありません。

さらに、自治体法務検定はどのクラスを目指すかにより難易度も変わります。

基本法務のプラチナクラスの合格者は289人中1人、政策法務のプラチナクラスの合格者は158人中2人と、プラチナクラスを目指すことはかなり難易度は高いものと言えるでしょう。

最近の認定率は、以下のとおりです。

◇基本法務

プラチナクラス:0.2%、ゴールドクラス:5.6%、シルバークラス:29.2%

◇政策法務

プラチナクラス:0.4%、ゴールドクラス:30.4%、シルバークラス:53.4%

難易度は決して易しいものではありませんので、しっかりと試験勉強を行なって臨む必要があります。

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3.自治体法務検定のメリットはキャリアアップが目指せること!

自治体法務検定を受ける最大のメリットは、法務知識をスキルとして活用し、キャリアアップを目指せることです。

自治体法務検定の勉強内容は、あらゆる行政事務の「土台」となります。

憲法、法務法、民法、刑法といった基本法分野や、地方自治法、行政手続法、行政事件訴訟法、情報公開制度など、自治体職員にとって重要な知識を幅広く、網羅的に勉強することによって今後の仕事の幅も広がっていくでしょう。

実際に、東京都武蔵野市では平成24年度より「主任昇任試験制度」に自治体法務検定を導入されています。

また、静岡県藤枝市では、市全体で職員への受験を推奨し職員の団体受験を導入しています。500点以上を獲得した職員は成績表の授与式を行い、一番高得点を獲得した職員は、市長から成績表をもらうといったセレモニーも行われています。

法務能力の基本部分を理解し、問題解決のための考え方や能力を身につけること、さらにプラチナクラスを目指すことで、昇進、昇格などさらなるキャリアアップに有利となるでしょう。

4.自治体法務検定資格の注意点

自治体法務検定は受験することでキャリアアップを目指すことができる一方で、注意するべき点もあります。

・資格を取得しても公務員になれるわけではない
・実務に直接関係しない場合もある

以上の2点について詳しく見ていきましょう。

4-1.資格を取得しても公務員になれるわけではない

自治体法務検定は誰でも受けることが可能な資格ですが、公務員になる前に資格を取得したからと言って、公務員になるために有利に働くわけではありません。

よって、公務員を目指す方が資格試験に取り組んだとしても、公務員合格のための効果を発揮しないということを理解しておく必要があります。

自治体法務検定はあくまでも法務能力の向上を目的とした試験ですので、対象は公務員や自治体職員となります。

とはいえ、勉強することで法務の基礎が身につけることができますので、法務知識を身につけるための勉強をしたいという方にはおすすめです。

4-2.実務に直接関係しない場合もある

公務員や自治体職員が資格を取得しても、担当する部署によっては実務に直接関係しない場合もありますので注意が必要です。

しかし、最低限の法務能力を身につけていることはどの部署に配属されたとしても、知識として役立ちます。憲法、法律、条例についての知識を持っていることで、あらゆる場面で、正確に倫理的に説明することができます。

実務に直接関係はしなくとも、法務の知識を身につけておくことは自治体職員にとって必要なスキルと言えるでしょう。

5.自治体法務検定試験を受けるべき人

以上のメリット・デメリットを踏まえて、自治体法検定を受けるべき人は次のような人です。

・地方自治法に携わる人
・自治体の法務セクションに就くことを希望する人
・公務員を目指す人・学生
5-1.地方自治に携わる人全て

これからの自治体は、住民の身近なところで、それぞれの地域にふさわしい独自の政策を行っていかなければなりません。そのためには、教育や福祉、まちづくりなど色々な専門能力を持った職員が必要です。

各分野で活躍するには、法的問題や地域の独自政策を法的に設計し、構築するための法務能力を備え最低限の法務知識を持って業務に当たることが必要です。その法務能力を身につけるために、地方自治に携わる全ての人に自治体法務検定をおすすめします。

5-2.自治体の法務セクションに就くことを希望する人

特に、自治体の法務セクションに就くことを希望している人にとっては、自治体法務検定資格は有利に働きますので、ぜひ取得してほしいと思います。

法務の知識を幅広く勉強することができる上、知識の基盤があることを証明できるため、実務に当たる際にもすぐに役立てることができます。

5-3.公務員を目指す学生

自治体法務検定資格は公務員にれる資格ではありませんが、公務員を目指す方ならぜひ自治体法務検定試験を受けることをおすすめします。

公務員試験の勉強と自治体法務検定の勉強は行政法など共通するテーマがあるので、公務員試験を受検する学生に役立つ上、より専門的に勉強することができます。

実際に公務員になった時に、法務基礎の「土台」ができていることは業務を円滑にでき、自分の自信にもつながるでしょう。

6.自治体法務検定の勉強法

自治体法務検定の基本的な勉強法は、公式テキストと公式問題集を活用することをおすすめします。

実際に出題された問題を解くことにより、「基本法務」「政策法務」の試験問題形式や傾向、時間配分などを把握することができます。

公式テキストを隅々までよく読み、過去に出題された問題を何回も繰り返して解いきながら、知識の定着度を確認して進めていくと良いでしょう。

また、各地で開催されるセミナーや講習などに参加することも一つの手段です。ご自身のライフスタイルに合った勉強法で試験に向けて勉強を進めていきましょう。

7.まとめ

地方自治体法務検定は、自治体の法務能力を備えた有能な人材を養成するための資格です。

自治体検定は、律の基礎知識を問う「基本法務」と、既存の法令や制度などの知識を問う「制作法務」の2部構成になっていて、誰でもどちらからでも受験することが可能です。

自治体職員が受験することにより、キャリアアップを目指せます。さらに、法務知識を身につけることで、幅広い仕事に対応でき、あらゆる場面で役立てることができます。

地方自治法に携わる人や、自治体の法務セクションに就くことを希望する人、公務員を目指す学生にはぜひ資格取得をおすすめします。

一人ひとりの職員の自治力を法務の力の底上げし、各自治体へ役立てていくことを期待します。

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