―自治体が抱える電話対応の問題点を、どのようにとらえていますか。
「より効率的な電話対応システムの構築」です。対応の充実のために人を多く配置すれば、それだけコストがかかりますから。また、「代表電話からの取り次ぎといったいわゆる電話交換のために、はたして人が必要か」といった考えも出はじめているようです。「より重要な内容の問い合わせに対応する人を、もっと増やしたい」というニーズの高まりからだと思います。
―電話対応に音声認識技術を導入するメリットを教えてください。
まさしく人の問題を解決できることでしょう。定型的な問い合わせ内容であれば、音声認識技術による応答で十分に対応できます。担当部署に割り振ることも可能。ある程度の内容であれば、時間外にも対応できる。自治体にとっては、住民サービスのさらなる向上にもつながります。
自然な会話の流れが「音声認識」の強み
―機械音声による自動応答システム(IVR)は、すでに普及していますね。
電話の番号ボタンを押すことでやり取りする「プッシュ型」が普及しています。ただ、「アナウンスが長い」と感じる利用者は多いのではないでしょうか。また、「よくわからないから直接オペレーターと話したい」となると、結局IVRの導入効果が薄れてしまいます。そこで、自然な会話のなかで対応可
能な音声認識型のIVRに関心が集まっています。
―電話ではなく、ホームページから問い合わせをする一般消費者も多いと思います。
その割合は高まっています。当社では音声認識技術を応用し、ネット上での質問内容に自動的に回答するシステム「バーチャルエージェント」も提供しています。問い合わせの場合は文章で質問事項を直接入力してもらい、その内容を機械が認識して自動回答。「ホームページをみてもわからないから電話した」など直接のやり取りになる前に、このシステムである程度解決することができます。複数の民間企業や官公庁で導入実績があります。
―音声認識型IVRを導入する際に、なにか準備は必要ですか。
サーバーなどの設備はないため、設置スペースの必要はありません。たとえば、当社が提供している音声認識型IVR「りらいあ・ボイスクラウド」は、クラウド型の商品です。インターネットが利用できる環境があれば十分です。
また、コールフローは導入クライアントと相談しながら決めていきます。どのようなガイダンスを流して、なにを聞くかは導入先によってさまざまでしょう。自治体に対するコールセンター業務支援を長年手がけている実績をもとに、どのようなフローが最適かチューニングしながら提案できる強みが当社にはあります。
音声を100%認識できるわけではないことに理解を
―導入にあたっての注意点はありますか。
音声認識で100%対応することは難しいということですね。機械が音声をうまく認識できないこともあります。また、高齢者は自動音声との会話にとまどうこともあるでしょう。その場合は、オペレーターにつなぐといったインフラを整えておくことは必要です。
―音声認識型IVRの導入は進むでしょうか。
海外ではすでに導入事例があり、アメリカだとニューヨーク市が導入しています。日本でも電力やガス会社、また、引っ越し会社が導入の検討段階。3~4月における移動シーズンに問い合わせが集中するためです。そのほか保険会社でも、住所や名義などの登録情報の変更にこのシステムを活用しようという動きがあります。人でなくても、音声認識型IVRで対応できることは数多くある。自治体でも今後、住民サービスの向上と予算削減といった観点から導入が進むと考えられます。