※下記は自治体通信 Vol.25(2020年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
全国各地で毎年、大規模な自然災害が発生するなか、地域の被害状況を瞬時に把握することは、自治体の重要な課題となっている。こうした課題に対して高松市(香川県)では、スマートシティの取り組みの一環として、道路のアンダーパスにおける冠水情報の収集に取り組んでいる。取り組みで得られた成果などについて、同市の担当者2人に聞いた。
高松市データ
人口:42万6,174人(令和2年7月1日現在)世帯数:19万9,973世帯(令和2年7月1日現在)予算規模:3,036億4,666万2,000円(令和2年度当初)面積:375.42km²概要:香川県の中部に位置し、北は瀬戸内海、南は徳島県境に面する。気候は、年間を通して寒暖の差が小さく、降水量の少ないのが特色。恵まれた風土と地理的優位性を活かし、四国の中枢管理都市として発展してきた。昭和63年の瀬戸大橋開通や平成元年の新高松空港開港、平成4年の四国横断自動車道の高松への延伸などにより、高松市を取り巻く環境が大きく変化するなか、平成11年には中核市に移行した。
アンダーパスの冠水で、過去に死亡事故が発生
―スマートシティ構想に取り組んでいる背景を聞かせてください。
平井 人口減少や少子高齢化が進むなか、限られた数の職員で住民サービスの維持と向上を図るため、データの収集・分析を行うIoT共通プラットフォームを平成29年度に構築しました。そのうえで、ICT・データを活用し地域課題の解決を図る「スマートシティたかまつ」を推進しています。防災や観光、福祉などの分野で取り組んでいますが、人命にかかわる防災は特に注力している分野です。
―防災分野ではどのような施策を行っているのでしょう。
髙橋 水害対策を重点的に進めています。特に、道路のアンダーパスは、冠水時に自動車が立ち往生する被害が起こりやすく、市内では平成16年の台風で死亡事故も発生しました。これまで市では、雨水を排水するポンプや、水位を測るセンサーを設置。一定の水位を超えた際に「冠水中」を示す電子表示板を並置し、住民に注意を喚起してきました。しかし、庁内の職員が冠水の有無を確認するには現場を巡回する必要があり、迅速に対応できませんでした。そこで、道路状況をより効率的に把握できる対策を新たに検討したのです。
―どのように対策したのですか。
髙橋 既設のセンサーを使ってデータを「スマートシティたかまつ」のIoT共通プラットフォームに取り込めることを条件に公募を実施。入札した三信電気の協力のもと、センサーにゲートウェイ(※)を増設し、冠水状況を1分ごとに発信する仕組みを構築しました。これにより、市内18ヵ所すべてのアンダーパスの冠水状況を防災用ダッシュボード(地図)上で常時、把握できるようになりました。冠水時には、職員がすぐに現場に赴き、通行止めを行うといった対応が取れ、市民にも被害状況を伝えられるようになりました。
※ゲートウェイ:異なるネットワーク同士を接続するためのハードウェアやソフトウェア
降雨量データと合わせ、リスク分析に活用したい
―今後の防災対策について見通しを聞かせてください。
髙橋 アンダーパスにおける冠水の発生と降雨量のデータを蓄積し、今後はどの程度の降雨量により、どのアンダーパスで冠水するリスクがあるのか、傾向を分析することで、より迅速な対応が可能となるのではと考えています。
平井 本市は今年度から、県内の綾川町や観音寺市と、防災用ダッシュボードの共同利用を始めました。地域が一丸となり、安心安全なまちづくりを推進していきます。