※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
専用アプリのインストールは、ユーザーに敬遠されることも
スマートフォン(以下、スマホ)が世界的に普及するなか、これまでもアプリを活用したデジタル施策を推進してきた自治体は多い。富良野市の取り組みを支援しているインタセクト・コミュニケーションズの担当者は、「コロナ禍のなか、人と人の接触を伴わないデジタルツールの活用は今後、さらに注目されていく」と指摘。「スマホは今後、ニューノーマルの生活を支える必需品として、その役割を増していく」と話す。
同担当者によると、これまでもさまざまなアプリが提供されてきたが、現在はツール利用のトレンドに変化が起きているという。これまでユーザーは、用途ごとに専用のアプリを一つひとつダウンロードする必要があった。そのため、たとえ便利なアプリであっても、日常で利用する機会が少なければ、ダウンロード自体が敬遠されることもありえる。
二次元バーコードで開く、専用アプリも開発
しかし今後は、「複数の機能の利用を、ひとつのSNSで完結できる仕組みが主流になる」(前出担当者)という。ユーザーは、必要なタイミングで使い慣れたSNSを開くだけで、さまざまな機能をすぐに使うことができるのだ。
こうしたなかでインタセクト・コミュニケーションズは、中国で普及する『WeChat』のほか、日本を含む多くの国・地域にユーザーを抱える『LINE』などで使える多様な機能を開発。いずれのSNSも利用していないユーザーでも、スマホさえあれば二次元バーコードリーダーを使って立ち上がる専用アプリも提供している。前出の担当者は、「観光客や生活者が利便性を感じられるまちづくりに活かしてほしい」と話している。
ひとつのSNSのなかで利用できる機能やツールは、『WeChat』では「ミニプログラム」、『LINE』では「ミニアプリ」と呼ばれている。ここでは、インタセクト・コミュニケーションズが提供するこうした機能の一部を紹介する。
観光客へのアンケートを電子化。二次元バーコードを読み込むと、スマホ端末の設定に合った言語でアンケートに回答できるため、外国人客、国内客を問わず利用できる。ユーザーは二次元バーコードを読み取るだけで利用できるため、紙のアンケートに比べて配布場所が限定されず、回答率の向上が見込める。
インタセクト・コミュニケーションズが開発したスマホ決済サービス『IntaPay』を導入することで、『WeChat Pay』や『LINE Pay』『PayPay』など、9つの二次元バーコード決済サービスで利用可能(令和3年3月現在)。自治体では、三鷹市(東京都)が『IntaPay』を搭載したセミセルフレジを市役所の市民課窓口に導入。決済手続きの利便性向上を実現している。
乗車・降車場所を選択することで、バスの発車時刻と目的地への到着予定時間、運賃を調べられる。富良野市では、「北海道オープンデータプラットフォーム」により、富良野バスの時刻表のオープンデータを活用。『WeChat』や『LINE』、HTML5アプリを通じて国内外の観光客向けに提供している。
飲食店のテーブルごとに二次元バーコードを準備するだけで、利用客が簡単に注文できる機能。事前に言語別のメニューを用意しておけば、読み取ったスマホの設定に合わせて言語が自動で変換される。飲食店向けの管理画面もあり、メニューや営業時間の変更などの設定が簡単に行える。
『WeChat』では「ミニプログラム」としてECも利用可能。国内の自治体では、岐阜県が特設サイトを開設し、県産品を販売する事業を実施。販売期間中は「KOC(※)」と呼ばれるインフルエンサーによるライブコマースを実施し、県産品の魅力を発信するとともに販売促進を図っている。
※KOC:Key Opinion Consumerの略。インフルエンサーマーケティング用語のひとつで、SNSで高い発信力をもつ消費者を指す