現場の声
前例がないコロナ対策だからこそ、ビッグデータで政策にメリハリを
前ページでは、ヤフーのビッグデータを活用したEBPMについて、西宮市の政策推進方針を紹介した。ここからは、実際にデータを活用している担当現場を取材。まずは、新型コロナウイルス感染症対策におけるデータの活用方法について、担当者の岡崎氏に話を聞いた。
「コロナ」の検索量が、陽性者の先行指標に
―ヤフーのビッグデータを使い、どういったことを調べていますか。
大きくふたつあります。ひとつは感染症の流行についての情報です。たとえば「コロナ」や「インフルエンザ」などのワード検索量は、その後に発生する陽性者数とかなり相関関係が高いので、「先行指標」として毎日確認しています。もうひとつは、リアルタイムでの市民の関心動向や行動傾向です。たとえば、人の移動に関係する「外食」や「旅行」といったワード検索状況や、どの場所・時間帯に多くの人が集まっているかの「人流データ」も調べています。
―それらの調査は、どのように活かされていますか。
昨年秋ごろ、新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念されていたので、「コロナ」「インフルエンザ」の検索量を毎日継続的にモニタリングしていました。それにより、同時流行はなさそうだという感触を、じつはかなり早い時点でつかんでいました。かりに同時流行になっても、予兆段階で速やかに初動対応できたと思います。
そのほか、広報活動で活かしています。昨年11月ごろから新型コロナの陽性者数は増加傾向にあり、外食関連の検索量は11月中旬から急減しました。ということは、市民に外食に関して注意するよりも、マスクの着用や換気といった基本的な予防対策の徹底に重点を置いた呼びかけのほうがいいのでは、と考えるヒントが得られたのです。また、「人流データ」も、人が増加しているエリアへの注意喚起を強化することにつなげています。
―ビッグデータは今後の対策にどのような効果をもたらしますか。
過去に前例がない「新型コロナ対策」だからこそ、各種情報の活用による状況予測と施策立案が大切だと思っています。今後もワクチン接種など新たな取り組みが続くなか、ビッグデータを有効活用し、利用可能なリソースから最大限の効果を生み出すことにつなげていきたいです。
現場の声
「日本酒」に関連する検索語を探り、女性向けの新たなPR戦略を立案
日本を代表する酒どころとして知られる「灘五郷」。西宮市には、その一角をなす「西宮郷」と「今津郷」がある。同市では、基幹産業のひとつである日本酒のPR戦略に、ヤフーのビッグデータを活用している。担当者である岸本氏に、どのように活用しているのか話を聞いた。
ビッグデータの分析から、思わぬことが判明
―どのような目的で、ヤフーのビッグデータを活用しようと考えたのですか。
近年当市では、日本酒の新たなファン層を開拓しようと、女性層へのPR戦略を強化してきました。たとえば、桃の節句に合わせた甘酒のPRや、女性向けの日本酒飲み比べイベントなどです。しかし、結果が出ているのかどうかについて、目に見えるカタチではなかなかつかめずにいました。そのため、「成功した」と思われる事例の深掘りができなかったり、企画を継続するかどうか判断に迷ったりすることも。そこで、まずは、「そもそも女性は日本酒に興味を持ってくれているのか」をはっきりさせようと、ヤフーのビッグデータを活用することに。すると、思わぬ結果が出たのです。
―どういった結果でしょう。
「日本酒」をワード検索している割合を男女別でみると、ほとんど変わらなかったのです。まさかここまで多いとは思っていませんでした。「女性にしっかりとPRできれば、必ず結果は出る」という確信が持てましたね。
―今後、どのような内容でPRしていきますか。
女性が、「日本酒」と一緒にどういったワードを検索しているのかを調べてみたところ、圧倒的に「料理」「おつまみ」が多かったのです。そこで、日本酒との絶妙なマリアージュ(※)が楽しめる料理のレシピを紹介する「日本酒×料理」を訴求することで、効果的なPRが展開できると考えています。
そのほか、過去の検索状況を遡って調べてみると、毎年1月から2月にかけては、「バレンタイン」というワード検索量も急増することがわかりました。これらヤフーの検索データをもとに、市内の酒造会社と酒蔵観光についてブレストを始めています。今後は、「バレンタイン特集での日本酒PR」といった、これまでにない戦略を酒造会社と一緒に考えていきたいですね。
※マリアージュ:仏語で「相性のいい組み合わせ」の意味