※下記は自治体通信 Vol.57(2024年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自然災害が頻発する昨今、住民を守る防災情報の発信力強化は自治体のもっとも重要な責務のひとつであり、各自治体はさまざまなかたちで情報発信に努めている。これに対し、「情報が住民に届いていないと感じている自治体は多い」と語るのは、JNN28局のニュースメディア『TBS NEWS DIG Powered by JNN(以下、NEWS DIG)』の粂川氏だ。自治体が抱える情報発信の課題とその改善策について、同メディアの幾島氏も交えて聞いた。
株式会社TBSテレビ
報道局 デジタル編集部 NEWSDIG企画開発室
粂川 高広くめかわ たかひろ
平成2年、栃木県生まれ。平成26年に早稲田大学大学院を修了後、株式会社TBSテレビに入社。スタジオカメラマン・ビデオエンジニアやメディア戦略を経て、『NEWS DIG』のサービス立ち上げを担当。天気・防災コンテンツの企画開発や『NEWS DIG』アプリのプロダクトオーナーを担当。
株式会社TBSテレビ
報道局 デジタル編集部 NEWSDIG企画開発室
幾島 奈央いくしま なお
平成6年、北海道生まれ。平成30年に北海道大学を卒業後、北海道放送株式会社(HBC)に入社。報道記者を経て、Webマガジン「Sitakke」や「クマここ」の運営を担当。令和6年1月より、株式会社TBSテレビへ出向し現職。
災害時に住民の命を守るには、日常の情報発信が重要
―防災情報を発信する自治体には、どのような課題がありますか。
粂川 地震発生時や台風襲来時などに、HP上に「災害特設サイト」を開設する自治体は多いですが、発信する情報が実際に住民に見られていないと悩むケースは少なくないと思っています。その理由は、そもそも自治体HPやアプリを見る習慣がなく、災害時に特設サイトが開かれること自体が住民に伝わっていないからです。
幾島 そのため、いかに普段から住民に見てもらえるサイトを構築するかが重要になります。そのひとつの方法としては、市区町村などの単位で日常生活に密着した天気情報や生活情報を発信し、住民が毎日訪問したくなるサービスを提供することが考えられます。そこへ防災情報を配置することで、訴求力を高められます。ただし、自治体が自前でそうしたサイトを制作するのは簡単ではありません。
―それはなぜでしょう。
幾島 天気といえば気象庁がイメージされがちですが、気象庁からは市区町村ごとの細かなデータは発表されず、民間の気象会社から得るしかありません。また、より普段から見られるサイトにするには、気象情報だけでなく洗濯情報や紫外線、PM2.5といった豊富な生活情報も必要です。それらを網羅するには、複数の事業者と契約して、それぞれ異なる方法で提供を受ける必要があります。
粂川 さらに重要なのは、それらの情報をいかに伝わりやすく加工するかです。たとえば、防災情報として「警戒レベル5」や「緊急安全確保」と発信しても、住民はなにをすべきかわかりません。その際は、取るべき行動もセットで伝える必要があります。また天気情報において、ひと口に「晴れ」といっても表現が十数種類ある中で、それをアイコンなどを交えて直感的にわかりやすく伝えるには高度に専門的なノウハウが求められます。そこで当社では、ニュース専門サイトの運営で培ったノウハウや知見を活かした情報を自治体に提供し、防災情報発信の強化に役立ててもらおうと考えています。
伝わりやすさを徹底的に追求。つくり込まれた素材
―自治体には、どういった情報が提供されるのでしょう。
粂川 防災情報としては地震、津波、台風、気象の警報・注意報など、天気・生活情報としては洗濯、紫外線、黄砂、PM2.5など、自治体HPやアプリで必要とされる情報はほとんど用意しています。情報と合わせて視覚的にもわかりやすいアイコンも提供できます。視認性の高い字体や、色覚多様性をもつ人でも判別しやすい色使いなど、ユニバーサルデザインで伝わりやすさを徹底的に追求し、つくり込まれた『NEWS DIG』の素材をそのまま提供します。
幾島 『NEWS DIG』はTBSを含める系列28局で制作しています。テレビ放送に加え、さらに外出中の人にもいち早く必要な情報を届けるために立ち上がったサイトです。「天気・防災」は特に力を入れてきた分野なので、自治体のサイトなどでも利用してもらうことで、さらに多くの人々の暮らしや命を守ることにつなげてもらえればうれしいです。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
粂川 『NEWS DIG』では、各自治体のニーズに合わせてエリアごとに、住民の命を守る情報から普段使いに役立つ天気情報まで柔軟にカスタマイズして提供できます。これまでに放送局が培った知見を活かして、住民の命を災害から守る情報発信のお手伝いをします。お気軽にお問い合わせください。