※下記は自治体通信 Vol.57(2024年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
コロナ禍を機に、窓口手続きのオンライン化を推進する機運は全国の自治体で高まっている。こうした状況のなか、「本人確認機能こそ、オンライン手続きを広げるうえで重要なカギ」だと指摘するのは、TRUSTDOCKの谷村氏である。同社は、オンライン本人確認(eKYC)システムの専門会社として、全国の企業・自治体への導入実績を有する。同社の小山氏を交え、自治体がオンライン手続きのシステム整備を進める際のポイントについて聞いた。
株式会社TRUSTDOCK
KYC事業部 公共セールスチーム リーダー
谷村 竜郎たにむら たつお
昭和51年、神奈川県生まれ。平成11年に大学を卒業後、大手ハウスメーカーに入社。平成18年、外資系OA機器メーカーに入社後、自治体向けセールスを経験。令和5年、株式会社TRUSTDOCKに入社し、同年より現職。公共領域における課題解決に尽力している。
株式会社TRUSTDOCK
KYC事業部 公共セールスチーム
小山 友貴こやま ゆうき
昭和56年、新潟県生まれ。平成16年に大学を卒業し、外食産業に身を置いた後、同領域に特化したIT企業において、システム導入から店舗運営までのコンサルティング営業を経験。令和4年、株式会社TRUSTDOCKに入社し、同年より現職。おもにサービス導入の提案・伴走支援を担う。
オンライン手続きの「入口」、「本人確認」の重要性
―行政手続きのオンライン化は順調に進んでいますか。
谷村 コロナ禍の経験やマイナンバーカードの普及に後押しされるかたちで、行政手続きのオンライン化は確実に進んでいます。今後、公的給付金の申請やデジタル商品券の購入などさらに適用範囲を広げていく過程では、「マイナンバーカードによる公的個人認証」といった「オンライン本人確認(以下、eKYC)」機能の活用が重要なカギになると考えられます。
ただし、eKYC機能はオンライン手続きの「入口」に相当する機能であるにもかかわらず、その重要性に対する認識がまだ十分ではないため、実装にあたっては自治体の失敗事例も伝わってきます。
―どのような失敗でしょう。
小山 現在、自治体がeKYC機能を実装する際に参考にする国のガイドラインでは、手続き内容に応じた身元確認の保証レベル、いわば認証強度を3段階に定義しています。つまり、eKYC機能といっても、その手法は必ずしもマイナンバーカードを使用した公的個人認証だけではないのです。そのため、たとえば、電子申請システムを発注する際、自治体側で単に「公的個人認証を実装すれば良い」と考えてしまうと、「マイナンバーカードを持たない人はサービスを利用できない」といったケースが起こってしまいます。
谷村 また、導入する電子申請システムに規定されて導入できるeKYCツールの選択肢に制約が出たり、他部署のシステムとの連携が難しくなったりしてしまい、その結果、職員や住民にとって使い勝手の良くないeKYCツールになってしまうこともありえます。
実績があり信頼できる、専門事業者の活用を
―そのような失敗を防ぐために、重要なことはなんですか。
小山 まずは、仕様書作成の際に、実績があり信頼できるeKYC事業者に助言を求めること。そして、その助言に基づき、仕様書に具体的なeKYC手法を明記すること。この2つがとても重要になります。それに対して当社では、1手続きで100万件の申請を受け付けた実績を有するeKYC専門事業者として、手続き内容や確認対象者に応じて適切な本人確認方法を提案できます。あらゆる身分証への対応が可能ですので、今後主流となるであろうマイナンバーカードによる公的個人認証はもとより、必要な保証レベルに応じた多様な本人確認手法を提案することもできます。
谷村 また当社では、これまでの多くの導入実績を背景に、オンライン手続きの申請件数などを分析し、UI/UXの改善などを通じて職員の使い勝手や住民の利便性を高め、つねにシステムの利用率を向上させるためのアップデートも進めていきます。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
谷村 当社では、eKYC機能の提供にあたって、自社アプリの『TRUSTDOCK』のほか、他社のアプリやWebフォームに機能を組み込めるようSDK*も提供し、自治体の事情に応じた機能提供体制を整えています。eKYC機能を実装して行政手続きのオンライン化を広く進めたいと考えている自治体のみなさんは、ぜひお問い合わせください。
*SDK :「Software Development Kit」の略。Webサイトやアプリケーションの開発に必要なツールのこと