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訪日インバウンド市場の成長の鍵はアジアにあり。需要を取り込むために進めるべき施策とは?

[提供] 株式会社JTB
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    コロナ禍以前も現在も変わらず、「海外から訪れたい国」として上位に挙げられる日本。規制緩和や円安などの影響で2023年の訪日インバウンド需要はコロナ以前の水準に戻りつつありますが、旅行の目的や過ごし方には変化が見られます。地域を活性化させ、持続可能な未来を築くためには今、どのような施策が必要なのか。11月に訪日インバウンド強化に向けて設立された「株式会社JTB Inbound Trip(JIT)」が進めている各種施策について、JITの担当者に聞いてみました。


    株式会社JTB Inbound Trip

    今後、ますますインバウンド需要の増加が予想される日本市場において、国内リーディングカンパニーとしてのJTBグループと、中国をはじめ世界で4億人のユーザーを抱える「Trip.comグループ」の販売ネットワークを合わせることで、次世代のインバウンドツーリズムを形づくるために設立。「実送客」という側面で訪日インバウンドのさらなる発展に寄与するとともに、多種多様な訪日インバウンドの受入課題を旅館、ホテル等をはじめとする観光事業者の皆さまに寄り添いながら解決している。

    1 日本における訪日インバウンドの現状



    ──2023年は規制緩和や円安の影響で多くの訪日インバウンド旅行者が戻ってきていますが、全体的な訪日インバウンド需要の現状を教えてください。

    多くの国や地域で個人旅行が再開し、2023年6月以降は7か月連続で200万人を超える外国人旅行者が日本を訪れています。2023年12月は2019年の同月比108.2%となりました。また、国際旅客便がコロナ禍以前の約85%に回復したこともあり、シンガポール、ベトナム、韓国からの訪日インバウンド旅行者が増えています。 特に韓国においては、訪日インバウンド旅行者数がコロナ禍以前の水準を上回り、2019年比124.6%の伸びを見せています。これは、燃油サーチャージの下落や、日本各地への地方路線の増便・復便、日韓情勢の改善の影響によるものです。

    また、日本から韓国への旅行者も非常に多く、双方向で旅行者が増加していることも特徴として挙げられます。双方向の交流人口増加は、今後他の地域からの訪日インバウンド旅行者増加においても重要な観点だと捉えています。


    ──訪日インバウンド旅行者の動向が、コロナ禍以前とは変化していると言われていますが、どのように変化しているのでしょうか?

    訪日インバウンド旅行者の動向としては、これまでの「団体・パッケージ旅行」や「ゴールデンルート」「爆買い」に加え、FIT(個人旅行)の増加による新しいルートの開拓・自然や食、文化体験など日本で過ごす目的として「コト消費」も増加傾向にあります。

    JTBグループとしてはこの動向変化に対応すべく、「インバウンド向けの観光コンテンツの高付加価値化」としてガストロノミー、アドベンチャー、サステナブル、メディカルの4つのテーマ性ツーリズムの取り組み強化を掲げています。

    例えば、ガストロノミーでは、「byFood.com」(https://www.byfood.com/)と連携強化を打ち出し、訪日観光客向けの食コンテンツの強化を行っています。また旅先のアクティビティに関しては、「VELTRA」(https://www.veltra.com/jp/)と業務提携することにより、さらに付加価値のあるコンテンツを提供することが可能になりました。

    コンテンツやプロモーションの拡充も重要ですが、コロナ禍以前の2019年比のデータも含め、これまでの分析や傾向を踏まえ、どのような打ち手があるかを一緒に検討することが最初にやるべきことだと思います。東アジアの国とひとくくりに考えず、香港と台湾、中国、韓国、それぞれお客様の傾向や行動は違います。流入経路も含め、正確な傾向値を整備した上で進めていくべきだと考えます。

    その次の段階で、JTBが提供できる過去の事例を含めた国内の情報と、「Trip.comグループ」が持っている現地視点の情報、この2社の情報を活用しながら訪日観光客のインサイトを紐解いていく。さらに、「Trip.comグループ」のプラットフォームを活用しながら、現地トレンドに合わせたプロモーションと具体的な施策を考えるステップを踏むことが肝要です。

    2 アジア及び中国マーケットの今後について



    ──今後、アジア圏のマーケットはどのように変化していくのでしょうか?

    韓国や台湾などは2023年10~12月の間に、2019年同月を上回る回復を見せている一方で、中国発のマーケットについては年間を通してコロナ前の3割以下と回復が遅れています。コロナ以前で最大のマーケットである中国市場の回復が今後の訪日インバウンド旅行者数の伸びに影響してきます。現状は、日中間の航空便座席数が2019年比で約45%程度に留まり、航空運賃も以前より高い状態が続いています。外的要因により、訪日需要が他のアジア・東南アジア市場に流れている状況もあり、今まで以上に日本の魅力発信の深度化が問われてきます。また、東南アジア主要国からの訪日インバウンド旅行者は40万人以上と着実に成長しています。著しい経済発展・成長に伴い余暇に費用を掛けられる方が増えたことが要因の1つと考えられます。そのため、今後更なる成長市場と捉えることができ、アジア圏における訪日需要は継続して高まるものと考えています。

    ──旅行中にどんなところにお金を使うか、旅行消費動向については変化していくのでしょうか?

    訪日インバウンド消費の買い物需要については、以前は「爆買い」が大きな割合を占めていましたが、最近では「消耗品」よりもバッグや宝飾品などの「一般物品」が増加傾向にあるといった調査結果が出ています。訪日インバウンド旅行者誘客においては、為替・円安の影響も含めた消費動向の変化について今後も着目すべきです。

    香港、中国、シンガポール、マレーシア、ベトナムなどはコロナ後の訪日インバウンドにおける旅行消費単価が1人20万円を超えるなど、購買意欲の高まりが見られます。今後のアジア市場の拡大に向け、宿泊施設の見せ方、娯楽・体験コンテンツの情報発信など、それぞれの魅力を伝える情報発信やコンテンツ開発等の高付加価値商品・コンテンツ価値へのフォーカスが重要です。

    また、アジア圏を中心に訪日インバウンドリピーターの獲得に向けて情報発信は重要な要素となります。団体旅行からFIT化が進むことで、食事や現地での体験予約、交通手段の確保などを訪日インバウンド旅行者自身で行うため、これらの情報収集や予約に欠かせないデジタルのタッチポイント創出・顧客セグメントに応じた適切な情報提供を行っていくことが重要です。

    3 訪日インバウンド需要を取り込むために必要な施策とは?



    ──アジア圏の市場を狙うにはコト消費、コト体験が重要と言われていますが、どのような施策が必要なのでしょうか。

    まずはコンテンツの創出ですが、意外とその地域の日常の風景が、海外の方からすると珍しかったり美しかったり、興味をそそる事があります。旅先での非日常体験での目線はまったく異なるということを、居住国にいるとなかなか気づくことができません。

    コンテンツ創出から海外の方と一緒に進めることが理想ですが、できない場合もあると思います。その場合は旅行中に売りたいコンテンツに関連する有識者や、地域マーケティングに知見のある旅行会社等から、忌憚のない意見を貰うことも重要です。

    また、認知拡大したい市場におけるマーケットトレンドを紐解き、仮説を立ててコンテンツ開発を行うことが、その次につながる動きとなることもあります。売りたいという主観だけで考えることや、日本人観光客に人気があったから外国からの旅行者にも売れるだろうといった思い込みは危険です。

    コンテンツの売り込み方は多岐に渡りますが、インフルエンサーに体験してもらい、「面白かった!」等の感想を発信してもらうだけでは、「どこで売られているのか?」「どうしたら体験できるのか?」までたどりつけないため、グローバルOTAとの連携強化が重要です。コンテンツ開発とともに販売・販促の出口戦略も同時に考える必要があります 。

    例えば、サイクリングで盛り上げたい町だったら、アプローチしたい国の言語が堪能な方を起用し、自転車の借り方から説明した上で実際のサイクリングコースの景色をGoProなどで生配信し、疑似体験してもらうことで旅先でのワクワクする気持ちを思い起こしていただき、「行ってみたい」と思ってもらう方法も効果的です。

    ──2024年はさらに訪日インバウンド需要が高まるという予測が出ていますが、その中でオーバーツーリズム対策は重要になっていくのでしょうか。

    非常に重要です。2024年度は、2023年度以上に訪日旅行需要の増加、獲得に不可欠な受入課題の解決・環境整備が促進されると予想されており、各自治体の皆さまにおいても、2023年度からの取り組みの継続、あるいは2024年度から講じる新しい対策に対しての期待値が高まっています。

    2023年度の観光庁補正予算では、オーバーツーリズムを含む環境整備、促進の予算が約305億円計上されました。訪日インバウンド旅行者の獲得に向けて、地域住民との共生を高めながら環境を整える必要があります。首都圏や関西を中心に、オーバーツーリズム対策で訪日外国人に対するマナーの啓発やライドシェア、観光客の分散といったテーマで策を検討しているところもあるようです。

    各自治体だけでなく、地域の皆さまにおいても、外国人旅行者に来訪してもらいたいと思い、それを形にすることが素晴らしい体験の提供につながります。持続可能な観光地域づくりの実現によって、地域住民や関係者の共生が可能です。国や自治体が中心となって地域の皆さまとコミュニケーションを図り、受入環境の整備を行うことが重要だと考えます。

    このような課題を抱える自治体は全国に少なくないと思いますので、我々、JITとしては、環境整備に対するさまざまなデータの分析や施策のご提案をすることにより、皆さまのお力になれたらと考えています。

    ──消費額の拡大に向けた富裕層の取り組みが重要だと言われていますが、どのように獲得していけばいいのでしょうか。

    富裕層のお客様は、旅行に「特別感のある体験」を求めている傾向にあります。シームレスなサービス提供、プライベートな空間やそれに伴う時間的な融通、唯一無二の体験などを旅行の目的とされるお客様が多いため、富裕層をターゲットとされる場合にはブランドや高級品といった「モノ」から消費拡大のみを捉えるのではなく、「コト」の提供に着目した取組みやサービスの検討が重要です。

    その上で、富裕層を保持している海外事業者との連携を行い、デジタルマーケティングや新しい技術を活用し、観光コンテンツの魅力をアピールする必要があると考えています。

    ──コト体験・消費、富裕層へのアプローチ以外にも、アジア市場に向けた有効な施策はありますか?

    アジア市場に特化したことではありませんが、以下の施策を総合的に対応することで、訪日インバウンド需要を取り込みつつ、市場を発展させることが可能だと思います。

    • デジタルマーケティングの強化
    • オンライン予約・購買促進
    • 多言語対応サービス
    • 観光地の多様化(伝統的な観光地だけでなく、自然、文化などに焦点をあてた新たな体験プログラム開発)
    • 旅行パッケージのカスタマイズ化(予算、好みに合わせた豊富なプラン提供)
    • 安心・安全対策
    • 地元事業者との連携
    • 新しい技術の活用(例:ARを活用した観光ガイド、スマートホテルなど)

    我々が旅行会社としてすぐにご提案できる施策としては、「デジタルマーケティングの強化」や「オンライン予約・購買促進」「地元事業者との連携」が挙げられます。
    各事業者の皆さまと連携しながら、Trip.comグループのプラットフォームを活用し、例えば、価格が高めの休日や土日祝日ではなく、なるべく平日に来ていただけるようなアプローチをする。または、観光需要の分散化・平準化に貢献して混雑緩和するなど、我々だからできるご提案を、宿泊施設を中心としたパートナーの皆さまにも訴えていきたいと思っています。

    旅ナカにおけるDX化はもちろん重要ですが、旅マエにおけるDX化もある程度必要です。事前に予約してもらうことで現地での混雑を緩和できます。旅行会社と行政がそれぞれできることで地域の価値を高めていく。この両面が必要だと思います。

    4 JIT・JTBがご提案、ご協力できること



    ──JITとしては、このアジアマーケット獲得を目指している地方自治体やDMOに対して、今後、どのような提案をしていきたいと考えていますか?


    1 訪日マーケティング基盤構築・活用 仕入強化・訪日プロモーション
    2 世界最大級の旅行会社Trip.comグループの訪日市場情報、およびプラットフォームの活用

    例えば東アジアの国でも、香港と台湾、中国、韓国でも、微妙にお客様の傾向が違います。リピート率や宿泊日数、好きな地域や流入経路など、マーケットごとに違うので、まずはその整備が必要です。その中で、JTBグループとしてさらなる強化が必要な中国市場に対しては、「Trip.com」グループが運営する中国市場向け旅行予約サイト「Ctrip」を活用したプロモーションの強化をしていきたいと考えています。「Ctrip」を活用することで告知して魅力を伝え、実際の訪問までの一連の流れを設計してプロモーションを実施することが可能です。

    さらには、コンテンツ開発、プラン策定、プロモーション、商品販売等を行い、プロモーション後は事業の効果測定と今後の打ち手の策定まで寄与できることが理想です。「Ctrip」には年間200万円以上の旅行消費をするユーザーが約600万人います。旅行消費が高いユーザーへアプローチができるような提案もしてまいります。

    ──JITに相談したいと思ったらどのようにしたらよいのでしょうか?

    JTBの法人営業担当まで相談いただければ、それぞれの担当が、我々JITなどのグループ会社を必要に応じてアサインし、トータルでご提案する流れとなります。日頃、皆さまのお悩みに伴走させていただいているJTBの営業担当者とともに、我々JITも一丸となってお力添えできればと考えています。

    ──インバウンド需要を取り込みたいと考える自治体やDMO、企業の担当者の方にメッセージをお願いします。

    旅行の目的や志向が細分化し、絶えず変化していくなかでは、そのニーズをとらえていくことが肝要です。現在、訪日インバウンドは、円安という追い風もあり、活況を呈しています。今こそ失敗を恐れず、さまざまなチャレンジをしてみる良い機会ではないでしょうか。我々JITも挑戦をするべく立ち上がった組織ですので、ともに邁進できれば幸いです。

    数ある旅行先の中で、まずは日本を旅行先として選んでいただくことが重要です。そのためには、自治体や観光地が単体で魅力を発信するだけでなく、日本全体での過ごし方を想起した上で各自治体や観光事業者が特色を打ち出し、訪日インバウンド旅行者を惹きつけることが需要創出につながります。また、訪日インバウンド旅行者の受入れ課題の多くは、言語に起因するものだと考えられています。これについても、単に「言葉」とひとくくりにせず、予想される懸念点を分類し、対策の度合いを検討していくことも大切です。

    例えば、日本人のお客様と同等のおもてなしを実現するためのヒアリングが難しいという意味での「言葉」の課題なのか、ルールや注意事項などの守っていただきたいこと、必ず理解していただきたいことの周知ができないといった課題なのか。課題によって対策もさまざまです。すべての課題を同時に解決しようと気負わずに、優先度やリソースとのバランスによって懸念点を払拭できれば良いのではと考えています。

    JTB各都道府県の営業担当にご相談いただければ、私たちが皆さまに代わって情報を集め、誘客できる施策を一緒に考えます。皆さまのチャレンジにお役立てできるよう、努めていきたいです。

    5 まとめ

    今後の訪日インバウンド需要の鍵はアジア圏にあり、特に訪日旅行者の構成比が高い隣国、東アジアのマーケットに向けたコンテンツの充実とプロモーションが重要です。さらに中国市場はこれからの復活が期待されるため、それに備えた準備をして、すぐに対応できる体制を整えておくことをおすすめします。

    「Trip.com」グループとJTBの連携強化を目的に設立されたJITは、アジア圏を中心とした訪日インバウンド需要を取り込みつつ、訪日インバウンド市場を今後も発展させるためのご提案が可能です。ぜひ一度、JTB営業担当者までご相談ください。

    株式会社JTB
    設立1912年
    資本金1億円
    代表者名代表取締役社長執行役員 山北 栄二郎
    本社所在地

    〒140-0002
    東京都品川区東品川二丁目3番11号 JTBビル

    事業内容

    旅行を基盤としたツーリズム事業を中心に、地方創生にまつわるエリアソリューション事業、企業・地方自治体・教育機関に向けたビジネスソリューション事業を展開しています。

    URLhttps://www.jtbbwt.com/government/

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