Overview 概要
自治体DXではこれまで主に業務効率化に向けた取り組みが中心でしたが、近年は書かない窓口やリモート窓口など、住民との接点を多様化・充実化していくフロントヤード改革が重視されるようになりつつあります。フロントヤード改革が進むことで、これからの庁舎窓口にはどのような変化が起こるのでしょうか。窓口の役割や空間構築の観点でひも解いていきます。
Report レポート
フロントヤード改革とは?
令和5年に総務省から示された「地域DXの推進に向けた取組について」では、自治体DXのひとつとして、フロントヤード改革の推進が打ち出されました。
フロントヤード改革とは、デジタルも取り入れながら住民と行政との接点を多様化・充実化していくことで、住民の利便性を向上させ、庁舎空間が手続きの場から多様な主体との協業の場に変化していくことをめざす取り組みです。
具体的にはオンライン申請の推進・強化や多様な窓口の実現、マイナンバーカードの利活用の推進などを通して、住民視点に立った創意工夫による行政サービスの充実、進化をめざします。また、内部事務(バックヤード)とのデータ連携によって業務を効率化しながら各種データを収集し、データドリブンな行政経営を行うと同時に、人的資源の最適配分につなげるねらいもあります。
自治体におけるフロントヤード改革が必要な背景
今、なぜ国はフロントヤード改革に力を入れているのでしょうか?その背景にはまず、少子高齢化や人口減少による行政の人手不足が挙げられます。また、社会のデジタル化に伴い、申請や手続きに対する住民の意識やニーズも多様化しているため、長い時間をかけて対面で丁寧に対応することが必ずしも満足につながるとは限りません。
業務改革や効率化によって人手不足による行政サービスの低下を防ぐと同時に、空いた時間や空間を活用して、交流や協業、相談など、ニーズに合わせた付加価値を生み出していくことが期待されています。
自治体DXの推進におけるフロントヤード改革とバックヤード改革の役割
自治体DXの推進として、フロントヤード改革・バックヤード改革を推し進めることで、データドリブンな行政経営を行うことが掲げられており、それぞれの関係は以下の図のようになっています。
フロントヤード改革では、住民との接点や空間のあり方を見直し、オンライン申請やマイナンバーカードの利活用の推進・強化や、多様な窓口の実現をめざしています。一方、バックヤード改革では、フロントヤード改革を支える内部事務の業務改善や、基幹業務システムの標準化・共通化に合わせた内部委託事務のシステム整備、AIやRPAの活用に取り組みます。
この両輪の改革を通して多様なデータの収集・連携が可能になり、収集したさまざまなデータを企画立案や意思決定に活かすデータドリブンな行政経営が可能になることをめざしています。
フロントヤード改革の実現に向けた取組み方法
フロントヤード改革を進めるにあたって、現状の業務をそのままデジタル化するのではなく、まずはムダや過剰、非効率な部分を見直し、ありたい窓口像を確定させて業務フローや組織構造などを再構築する、バックヤードも含めた窓口BPR(業務改革)を実施することが重要です。そのうえで必要なシステムを整備し、そのシステムを効率的に運用できる庁舎空間のあり方を検討していくことで、「書かない」「迷わない」「待たない」窓口、将来的には「行かない」窓口の実現をめざしていきます。
フロントヤード改革によって起こる庁舎窓口の変化
フロントヤード改革が進むと、住民側にも自治体職員側にも、より良い変化が期待できます。例えば、従来窓口で対面で行っていた手続きを、少しずつオンラインに移行していき、将来的には自宅や公民館などの公共施設でも行えるようになったり、サポートを受けられるようになることをめざしています。
また、システムの標準化・共通化やガバメントクラウド活用によってデータ連携が進めば、窓口と執務スペースが隣接している必要はなくなり、業務の目的に合わせて庁舎内・外で働く場所を選べるABW*が可能になります。
「書かない窓口」が実現すれば庁舎内の記帳台や専用カウンターも不要になり、ペーパーレス化が進めばキャビネットなども減らせて、バックヤードの集約化も可能になります。それに伴い、庁舎空間の役割も変化していくことが予測されます。
*Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略。仕事(業務)の内容に合わせて、働く「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のこと。
住民と行政との接点が多様化(オムニチャネル化)していくことで、これまで手続きの場として使用されてきた窓口スペースを、新たな価値を創出する地域の拠点としていくことが期待されます。
例えばNPO団体や市民との協業スペースやコワーキングスペース、ラウンジやカフェなど、さまざまな交流の場として活用することが考えられます。
「書かない窓口」から「行かない窓口」への進化に合わせて、庁舎内スペースの役割も変わります。フレキシブルに変化に対応できる空間づくりが求められ、すでに実証実験の取り組みを行う自治体も出てきています。
コクヨが考える未来の窓口理想形とは
今後庁舎内スペースはどのようなレイアウトになっていくのか。コクヨが考えるこれからの窓口の理想形や庁舎の空間構築について、段階を追いながら、イメージパースをふんだんに取り入れた資料として「フロントヤード改革で変わる庁舎窓口」を作成いたしました。先進事例として都城市(宮崎県)と桑名市(三重県)での取り組みもご紹介しています。
ぜひご一読いただき、未来の窓口をイメージする参考としてご活用ください。
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