※下記は自治体通信 Vol.57(2024年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体業務のデジタル化が積極的に行われている一方で、給食費をはじめとした学校徴収金は、アナログで管理されているケースが多い。そうしたなか、自治体に対してデジタル活用支援を行っている日本ソフトウエアマネジメントの高橋氏は「文部科学省は給食費の公会計化で教職員の作業負担を軽減しようとしているが、根本的な解決につながらないため、学校徴収金全体の管理を見直す必要がある」と話す。その理由と解決策を、同社の蒲池氏を交えて聞いた。
高橋 将順たかはし まさのり
昭和53年、福島県生まれ。平成12年、日本ソフトウエアマネジメント株式会社に入社。通信、料金、契約などのシステム開発にSEとして携わる。平成30年より、自社製品の営業に従事している。
日本ソフトウエアマネジメント株式会社
岡山事業所 係長
蒲池 愛かまち あい
平成5年、熊本県生まれ。令和元年、日本ソフトウエアマネジメント株式会社に入社。学校徴収金管理システムの運用サポート、アウトソーシング業務に携わる。令和5年より、岡山事業所にて保護者ポータルサイトを含む給食費管理アウトソーシング業務に従事している。
給食費を公会計化しても、教職員の管理業務は残る
―給食費の公会計化が、教職員の作業負担軽減の根本的な解決につながらない理由はなんですか。
高橋 学校徴収金をめぐる管理業務は、なにも給食費だけにとどまらないからです。給食費が公会計化されると、給食費の管理業務は現場の教職員から教育委員会に移ります。そうすると、保護者への給食費の徴収管理や未納者に対する督促対応といった業務は教育委員会が行うようになります。しかし、これで現場の教職員が管理業務から解放されるというわけではないのです。
―ほかにどのような管理業務があるのでしょう。
蒲池 たとえば、給食実施日の年間管理計画や喫食者の管理といった業務は、引き続き現場の教職員が行わなければなりません。昨今、給食費の無償化に取り組む自治体が増えており、「無償化されれば給食費に関する管理をする必要がないのでは」という声が聞かれますが、それは誤解です。
高橋 徴収金は給食費だけでなく、教科書の購買など多岐にわたり、こうした管理業務も引き続き、現場の教職員が行わなければなりません。ですから、教職員の本来の業務である、児童・生徒と向き合うための環境を生み出すためには、こうした学校徴収金に関するあらゆる管理業務を効率化させる必要があり、そのためには業務を一括してデジタル化するのが一番の解決策なのです。
一連の業務を、アウトソーシングできる
―どうすれば、一括してデジタル化できるでしょう。
蒲池 当社が自治体向けに提供している各種パッケージを組み合わせれば、可能です。具体的には、学校給食管理システム『給食マネージャ』と学校徴収金を管理するシステム『徴収マネージャ』、購買・支払いを管理する『購買マネージャ』を連携させるのです。そうすれば、保護者から集めた徴収金を事業者に支払うまでの一連の流れを管理できます。ちなみに、『購買マネージャ』はインボイス制度や電子帳簿保存法に対応できるほか、事業者への支払いを「名寄せ」でき、余分な振込手数料が発生することはありません。
高橋 未納の督促などは、保護者とのやりとりをデジタル化した「保護者ポータルサイト」で行えます。こちらは通常の連絡業務にも利用でき、保護者への連絡事項を印刷して封入・封かんする負担も生じません。また、入出金管理システム『個人出納帳』を加えれば、児童・生徒ごとの収支状況を管理でき、「子どもにいくら費用がかかっているか」といった保護者ごとの問い合わせにも対応することが可能です。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
高橋 当社のパッケージを活用すれば、現場の教職員だけでなく教育委員会の業務負担軽減にもつながります。また『まるごとスマート』というサービスを使えば、一連の業務をアウトソーシングすることも可能です。「保護者ポータルサイト」を活用すれば、ラーケーション*に伴う欠食届のような、自治体ごとの申請も簡単に行えるので、興味のある自治体のみなさんはぜひ活用してほしいですね。
*ラーケーション: 「ラーニング」と「バケーション」を組み合わせた造語で、余暇中に学ぶ行為を指す