―藤枝市ではどのような危機管理対策を行っているのですか。
佐藤 まず前提として、静岡県が平成25年に公表した第4次地震被害想定では、レベル2(※)の地震が発生した場合、市域の多くで震度7や震度6強の揺れが発生。人的被害は、最大で約400人が亡くなると推計されています。
そうした事態に備え、当市では災害時の防災拠点となる公共施設の耐震化や指定避難所のガラス飛散対策を進め、整備率は100%。また、地域防災リーダーの育成にも努め、地域防災指導員数は814人で県内1位です。
杉村 市民の危機管理意識も非常に高く、自主防災組織における市全体の組織率は100%です。
このように、住民と一体となった取り組みを行っているのです。
※ レベル2の地震:あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震。東日本大震災がこれに相当する
―そんななか、感震ブレーカーに注目した理由はなんでしょう。
佐藤 電気火災による出火および延焼火災を未然に防ぐことで、火災被害を軽減させるためです。
前に述べた第4次地震被害想定によると、当市では建物の倒壊や家具の転倒以外に、火災による建物の焼失が最大で約2500棟、人的では約190人という被害が発生することが想定されています。
阪神・淡路大震災や東日本大震災では、発生した火災の約6割は電気が原因だったと報告されています。日頃から「わが家の地震対策3本柱」として「家の耐震化」「家具の転倒防止」「非常用品の準備」の普及・啓発を行ってきましたが、電気火災の防止までカバーしていませんでした。そこで感震ブレーカーの設置費用の一部を補助することで、その設置を推進しようと考えたのです。
事前の啓発活動が奏功し初年度から915世帯に設置
―事業の実施は順調でしたか。
佐藤 はい。設置するには工事が必要なため、まずは地元の電気工事事業協同組合に事業の趣旨を説明。すると、こころよく賛同してもらい、住民の電気工事にかんする問い合わせ先を引き受けてもらうなど多くの支援を受けました。
杉村 さらに自主防災会長などの協力をえて、会合で説明してもらったり、チラシを回覧してもらうなど啓発に貢献してもらいました。
市職員の意識も高く、広報誌やホームページによる周知をはじめ、テレビや新聞に働きかけ、広く取り上げてもらうことができました。
佐藤 メーカーのひとつである、河村電器産業にも協力してもらいました。会合の場や総合防災訓練の場に啓発用の映像とデモ機をもちこんで、「感震ブレーカーがどう機能するのか」を実演しながらわかりやすく説明。行政だけの啓発では限界があるところ、より多くの人に理解してもらえるきっかけになったと思います。
―実施後の反響を教えてください。
杉村 平成28年の6月に申請の受付を開始。昨年度は915世帯に、1984万4000円の助成を行いました。またその相乗効果として、432世帯で1186台の家具固定を実施。住民の危機管理意識が高まった結果だと思います。
佐藤 今回の取り組みは、設置を普及できたのはもちろん、多くの住民に「地震発生時には電気火災が起こりえる」ことを注意喚起できたのが大きいと思います。 今後も危機管理対策を進め、❝安全で安心して暮らせる災害に強いまち「藤枝」❞のブランド力に磨きをかけていきたいですね。