―遠隔合同授業の実証実験に参加した背景を教えてください。
市町村合併で市域が拡大した本市は、旧行政区の間でさまざまな環境の違いが生まれています。そのひとつが教育環境です。少子化が加速する旧町行政区では全校生徒十数人、複式学級(※)を編制せざるをえない小規模校もあります。
他方、本市ではかねてより「小学校の統廃合はしない」という方針を掲げてきました。「小学校は、地域の活力を維持するために欠かせない存在」との理念があるからです。この方針を堅持するために、ICTを活用した遠隔合同授業に可能性を見出しました。
※複式学級 : 2つ以上の学年をひとつにした学級のこと
―実証実験の成果をどう評価していますか。
教育現場での反応は非常によいです。それは子どもたちの表情にもっとも表れています。子どもたちがイキイキとしている学習風景を見て、「これは間違いじゃないな」との想いを深めています。また、地域住民からも「地域間格差を埋められる」と期待の声が寄せられています。全国からも注目を集めており、今後、市内はもとより、全国展開のモデルになりえると自負しています。
―今後の市政ビジョンを聞かせてください。
人口減少社会を前に自治体の存続が各地で議論されるなか、選ばれる自治体になるには、教育は重要なテーマのひとつです。教育環境の先進性は人を呼び込む「魅力」であると考え、今後も教育分野のトップランナーであり続けます。そのためには、国からの補助金を待っているのではなく、民間企業とのコンソーシアムを積極的に進め、勝ち残りをめざしていきたい。そして他の地域に暮らす人々がうらやむ“ワクワク度日本一”の西条を実現していきます。
―西条市での遠隔合同授業実証実験のコンセプトはなんですか。
ひと言でいえば、一体感を生み出すことです。西条市の実証では、遠隔地の教室にいる教師や児童を教室に設置した2面の大型スクリーンに等身大で映し出します。手を伸ばせばあたかも友だちや先生にふれられるかのような臨場感をもたせた「バーチャルクラスルーム」を実現することにこだわっているのです。これにより、同じ空間で、多人数で授業をしている感覚が得られるので、「練り合い活動の不足」といった小規模校のデメリットを解消できるのです。
―遠隔合同授業を成功させるためのポイントはなんでしょう。
現場の先生が簡単に使いこなせるシステムをいかに構築するかがポイントです。西条市では、遠隔合同授業システムの中核として、大手事務機器メーカーが提供するWeb会議システムを採用。ボタンひとつで接続でき、授業が終わるまで一切の操作が不要です。そのうえ、事業者の協力のもと、プロジェクターやスピーカー、スクリーンなどの周辺機器もボタンひとつで自動的にスタンバイできる仕組みを構築。年間150時間の活用シーンでも問題なく稼働しており、先生たちは授業に集中できています。
―この成果を今後、どのように実用化していく考えですか。
遠隔合同授業の横展開として、市内の中学校への導入を考えています。さらに、今後新たな学習指導要領で推進される「外国語教育」や「キャリア教育」への活用を期待しています。海外のクラスとつないで英語力を試したり、民間企業とつないで職場体験に活用することで、一体感、臨場感のあるシステムならではの効果が発揮されるでしょう。平成29年11月24日には遠隔合同授業実証事業の「研究発表大会」を西条市で開催し、最新の成果をお示しする予定です。