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先進事例2021.03.23

自治体が設置する無線LANは平時だけでなく災害時でも活用できる環境に【多治見市の取組事例】

自治体が設置する無線LANは平時だけでなく災害時でも活用できる環境に【多治見市の取組事例】

岐阜県多治見市 の取り組み

非常時通信網の整備

自治体が設置する無線LANは平時だけでなく災害時でも活用できる環境に【多治見市の取組事例】

教育委員会 教育総務課 主査 岩井 謙之介

教育環境の高度化や観光客の利便性向上、さらには災害時の通信確保など、自治体が公衆無線LANを整備する際の目的はさまざま。活用シーンが広がるなかで、「その用途に応じたシステム選定が重要」と語るのは、多治見市(岐阜県)教育委員会の岩井氏だ。同市ではこのほど、市内公立学校での無線LAN整備に着手している。同氏にその背景や狙いなどを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.19(2019年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

岐阜県多治見市データ
人口: 11万499人(令和元年7月1日現在) / 世帯数: 4万6,735世帯(令和元年7月1日現在) / 予算規模: 739億7,691万3,000円(令和元年度当初) / 面積: 91.25km² / 概要: 陶磁器やタイルなど美濃焼の産地として発展してきた。現在までに、美濃陶芸の人間国宝を4人輩出している。昭和50年代からの丘陵部の宅地開発や平成18年の土岐郡笠原町との合併などにより、現在では人口11万人を超える東濃地方の中核都市となる。市内には開山700年の虎渓山永保寺、設立80年の神言修道院などの歴史的な名所を有する。

災害時には、管理主体を容易に変えられる

―多治見市では、市内の公立小中学校で無線LANの整備を進めていると聞きます。

はい。市内の全21校で無線LANを導入する計画です。国の指針もあり、教育ICTの環境整備は学校現場からも要望が多くありました。なかには、家庭用ルーターを先行的に導入して活用する学校も。しかし、学校の自主性にまかせる整備では普及に限界があり、情報機器の取り扱いに長けた教職員がいなければ、利用が減少してしまうケースがありました。しかも、パスワードが生徒や児童の目に触れる場所で管理されている学校もあり、情報セキュリティ上の問題もあったのです。

そこで、教員委員会が管理主体となり、統一仕様で無線LANを整備する方針を決めました。

―整備にあたって重視したことはなんですか。

校内全域を網羅することが重要と考え、2教室に1台程度のアクセスポイントを設置する方針をとっています。ただし、体育館や一部施設は災害時の避難所としても利用されることが想定されます。そこで、整備にあたっては、市の複数の部署が無線LAN設備の管理主体になることを想定したうえで、機器を選定しました。

―詳しく教えてください。

当市では、公共施設の種類によって管理主体が異なります。たとえば学校であれば教育委員会ですが、公民館であれば文化スポーツ課、本庁舎なら総務課というように。これに対し、災害時に被災地区の無線LANを開放し、防災用SSIDを発行することになった場合、迅速に対応するためには、施設の種類によらず、当該地区で市が所有する無線LANを一体的に操作できる必要があります。そこで多治見市では、今回の小中学校での整備にあたり、クラウド型Wi-Fi設備を導入しました。

クラウド対応が重要に

―評価のポイントはどこですか。

まずは、管理者の階層を自由に構築できるグルーピング機能です。日常の利用では各部署がそれぞれに管理し、非常時にはその管理階層のうえに、上位権限をもった統合的な管理者を容易に設定することができます。市では今後、学校施設以外にも無線LANを整備することが考えられ、その場合は管理主体も増えるでしょう。そこで、いち早く導入する教育委員会としては、必要時にいずれの部署でもWi-Fiがあつかえるように、管理機能の拡張性を重視したのです。さらに、こうした設定変更をクラウド上でできるのも重要なポイントです。

―どういうことでしょう。

クラウド対応であれば、場所や環境の制約が大きく減るので、かりに災害時にサーバ室に入れないような場合でも設定変更が可能になるからです。しかも、非常時にはわずか4ステップで開放できるほか、日本語GUI(※)を完備するなど操作性の高さも評価できます。

すでに導入した2校の学校現場からは、場所を選ばずにインターネット環境を利用でき、設備管理の負担もなくなったと、喜びの声が届いています。こうした日常での利用を促進する一方で、今後は非常時の運用方針を固め、平時・非常時を問わない効果的な運用体制を構築していきます。

※GUI:Graphical User Interfaceの略。マウスなどで操作できるインターフェースのこと

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