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先進事例2020.12.02

基幹システムからほしい情報を掘り出し、より確度の高い政策づくりに活かす

基幹システムからほしい情報を掘り出し、より確度の高い政策づくりに活かす

鹿児島県鹿屋市の取り組み

客観データにもとづく政策推進

基幹システムからほしい情報を掘り出し、より確度の高い政策づくりに活かす

鹿屋市
総務部 情報行政課 課長 中尾 明徳
総務部 情報行政課 井上 泰二

※下記は自治体通信 Vol.21(2019年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


効果的な政策推進に向けて、客観データを活用し、政策立案を進める「EBPM(※)」が注目されている。一方で、「データの集め方や、活用の仕方がわからない」と悩む自治体は多い。そんななか、基幹システムのデータを活用してEBPMの実証実験を行ったのが鹿屋市(鹿児島県)だ。担当者に、実証実験で得られた効果などを聞いた。

※EBPM:Evidence-based Policy Makingの略。客観的証拠にもとづく政策立案のこと

鹿児島県鹿屋市データ
人口:10万1,768人(令和元年9月1日現在) / 世帯数:4万5,730世帯(令和元年9月1日現在) / 予算規模:788億6,188万6,000円(令和元年度当初) / 面積:448.15km² / 概要:鹿児島県の東部に位置する大隅半島における、行政・経済・産業の中核都市。平成18年に、旧鹿屋市、吾平町、輝北町、串良町が合併し、約2倍の広さとなった。輝北町は「日本一星空がきれいに見える町」として知られる。市内には、国内唯一の国立体育大学である鹿屋体育大学がある。
鹿屋市
総務部 情報行政課 課長
中尾 明徳なかお あきのり
鹿屋市
総務部 情報行政課
井上 泰二いのうえ たいじ

中小地方都市の政策立案こそ、「過去の経験」から脱すべき

―鹿屋市では、どのように政策の立案を進めていたのですか。

井上 基本的には、住民の意見や庁内での議論をもとに、現状の把握と課題の分析を行い、過去の経験や政策事例を参考にしながら進めています。しかし昨今、よりデータを活用した政策の検証も必要だと考えるようになったのです。

―それはなぜでしょう。

中尾 2年ほど前、国が「政策立案におけるEBPMの重要性」について言及したことがきっかけです。当市のような中小規模の地方都市は、少子高齢化対策や新たな産業振興などの重要政策を成功させなければ、持続的な自治体経営ができなくなる可能性が高いです。そのため、データ活用を通じたEBPMを、全庁をあげて推進する必要性を感じたのです。以前から、当市もデータは活用していましたが、過去の経験や実績を頼りにした政策づくりが主流でした。そうしたなか、当市の基幹システムを構築している民間企業から、EBPMの推進について提案を受けたのです。

―どのような提案ですか。

井上 住民票情報、住民税情報、健康保険の利用状況などが網羅されている、基幹システムのデータを活用するものです。個人情報を含むデータは、平成27年の個人情報保護法改正により、匿名化を条件に活用できるようになりました。そこで、平成30年5月から半年間、実証実験を行い、政策の検証に有用なデータが得られるかどうかを検証しました。

客観的データを活用すれば、的を絞った政策が打ち出せる

―成果は得られましたか。

井上 ええ。定住政策、産業振興政策、学校の統廃合政策など、さまざまな政策立案に有効なデータ抽出ができるとわかりました。たとえば、住民票の転出情報と住民税からわかる年収情報を組み合わせると、「5年以内に転出した年収別世帯構成」がわかります。そこから「低所得世帯の転出が多い」とつかめれば、「定住促進に向けて、新たな雇用を生む政策の必要性」を訴えられます。そのため、より的確に現状を確認できると感じました。

―データはどのように抽出するのでしょう。

中尾 組み合わせる情報を設定すれば、民間企業の処理ツールが基幹システムから自動抽出してくれます。さらに、グラフ化やヒートマップ化など視認性を高める加工もしてくれます。実証実験では、250以上のデータを抽出しました。基幹システムの情報が更新されれば、抽出データも更新されるため、つねに最新で有益な情報が得られます。そのため、全職員が自分のパソコンからいつでもデータを活用できるようにしました。

―EBPMの推進に向けた、今後の方針を聞かせてください。

中尾 今回の実証実験で、政策立案につながるデータを集め、分析できる基盤は整いつつあります。今後は、データを有効活用できるよう、データ分析の研修会などを積極的に開きます。さらに、県内で同じ基幹システムを利用している5つの市とも協同でEBPMに取り組み、広域的な政策立案の際にデータを連携していきたいです。

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