※下記は自治体通信 Vol.25(2020年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
20年後には日本の労働力人口の大きな減少が予見されており、自治体は従来の半分の職員でも本来担うべき機能が発揮できる「スマート自治体」に転換することが必要となっている。そんななか、大子町(茨城県)では紙帳票の入力業務において業務効率化を図っているという。大子町役場の担当者2人に、詳細を聞いた。
大子町データ
人口:1万6,495人(令和2年6月1日現在)世帯数:7,297世帯(令和2年6月1日現在)予算規模:162億3,668万3,000円(令和2年度当初)面積:325.76km²概要:茨城県の最北西端に位置し、北は八溝山系を境に福島県、西は栃木県、東は常陸太田市(茨城県)、南は常陸大宮市(茨城県)にそれぞれ境を接している。面積の約8割は、八溝山系と阿武隈山系からなる山岳地で、八溝山をはじめ高笹山、男体山など県内有数の秀峰を擁している。水と緑に恵まれ、奥久慈茶、久慈川鮎、りんご、そば、奥久慈しゃも、こんにゃく、おやき、ゆば、漆、地酒、地ビール、硯など特産品がたくさんある。
年間1万枚超の入力を、ひとりで行っていた
―今回、業務効率化を図ったのはどのような業務でしょう。
佐川 平成27年度から行っている、「タクシー利用助成事業」の紙帳票入力業務です。大子町では65歳以上で車が運転できない方に対し、通常料金の半額で利用できるタクシー券をお渡ししています。タクシーを降りる際、運転手さんが「どの区間を走って料金がいくらかかったか」を手書きで記入。それを事業者に月末締めで、まとめて提出してもらい、集計したうえで割引分を役場が支払う仕組みです。
月平均で約1,100枚のタクシー券が役場に届いており、その入力業務を藤田がひとりで担当していたのです。
藤田 本来業務を別に抱えており、一枚一枚確認してExcelに手入力するのは、本来の業務に集中できない状態につながっていました。
―その業務をどのようにして効率化したのですか。
佐川 NTT東日本の提案で、紙帳票の手書き文字をコンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換するOCR(※)技術にAIを組み込んだ、AI-OCRの存在を知ったのです。類似の他社サービスはインターネットに接続するものが多いなか、同社の『AIよみと~る(LGWAN接続タイプ)』(以下、『AIよみと~る』)はLGWAN内で閉じたシステム構成と聞きました。住民情報を取り扱うため、情報セキュリティが担保されていることが決め手に。実際に、令和2年の1月から導入しています。
※OCR:Optical Character Recognitionの略。光学的文字認識
紙帳票を大量処理する業務に、活用領域を広げていきたい
―効果はいかがでしょう。
藤田 これまで丸4日間かかりきりで処理していましたが、3割ほど作業時間が削減されました。そのぶん、事業者に早く料金が振り込めるようになりました。タクシー券をスキャンしたデータを『AIよみと~る』で読み取り、CSVデータに変換、Excelに貼り付けるだけなので、最初からスムーズに作業できました。さらに、私がぱっと見て読めないような、くずれている文字(上部写真参照)がちゃんと認識できていたときには正直驚かされましたね。
―今後における『AIよみと~る』の活用方針を聞かせてください。
佐川 紙帳票を大量に処理する業務に、活用領域を広げていきたいですね。たとえば、税務課の給与支払報告書入力業務での利用を検討しています。大子町としても、職員の人数が減っているなか、いかにツールを活用して業務効率化を図っていくかが重要だと考えています。今後も積極的に、『AIよみと~る』を活用していきます。