香川県綾川町の取り組み
体育館への空調設備の導入
まだまだ続く熱中症の危険は、大風量の「移動式エアコン」で防げ
綾川町
健康福祉課 課長補佐 大谷 浩之
※下記は自治体通信 Vol.33(2021年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
新型コロナウイルスワクチンの接種が全国的に進むなか、自治体関係者によると、接種会場として体育館を活用する際の障壁が「空調の未整備」だという。夏場の熱中症リスクの高まりが背景にあるが、新たな整備には工期や膨大なコストがかかるため、体育館の使用を断念した自治体も多いようだ。そうしたなか、綾川町(香川県)は、町内の総合運動公園体育館に「移動式エアコン」を導入し、接種会場として活用した。担当者に、整備の経緯や得られた効果などを聞いた。
[綾川町] ■人口:2万3,677人(令和3年8月1日現在) ■世帯数:1万70世帯(令和3年8月1日現在) ■予算規模:191億1,196万4,000円(令和3年度当初) ■面積:109.75km2 ■概要:香川県のほぼ中央に位置し、平成18年3月に綾上町と綾南町が合併して誕生した。町の南部には山林が広がり、北部は小山に囲まれた起伏の多い丘陵地で形成されている。町名の由来にもなった清流綾川は、南東部の山中に源を発して北西部に流れ、府中湖を経て坂出市に流入。綾川上流の柏原渓谷は讃岐百景の一つで、水と緑の豊かな美しい自然が広がっている。
工事で会場使用が中断すれば、ワクチン接種が進まなくなる
―総合運動公園体育館に空調を整備した経緯を教えてください。
当町には、約2万2,000人のワクチン接種対象者がいます。接種を効率的に進めるためには、多くの住民を一堂に集められる場所が接種会場に適しているわけですが、密を避けるためにも広ければ広いほどいい。そこで、接種会場のひとつとして、約1,000m2の広さがある総合運動公園体育館を活用することを決めました。
しかし当時、総合運動公園体育館は空調が未整備でした。接種の受付、医師による予診、接種、経過観察まで含めると、接種者は1時間ほど体育館に滞在する必要があります。なかには体力的に弱い方も来場するため、夏場の熱中症リスクを回避するためにも空調の整備は必須でした。そこで、4月からのワクチン接種開始と並行して、空調整備に向けた検討を始めたのです。
―どういった検討を行ったのでしょう。
空調整備の際、工事の影響で会場が使用できなくなれば、ワクチン接種が進まなくなります。そこで、大がかりな工事が不要で、短い工期ですむ空調の整備を検討しました。そうしたなか、当町の総務課からイーズ社の移動式エアコン『スポットバズーカ』を紹介されたのです。町内の災害避難所における空調の整備に向けて、同課が検討している設備のひとつだということでした。
―どのような設備ですか。
配管工事が不要な移動式エアコンであるため、数日で設置が完了します。冷房と同時に除湿も行うことができ、ファンと熱交換器を組み合わせた独自構造によって、50m先まで届く冷風を吹き出せます。大風量の冷風が遠くまで届くため、通常のエアコンの約半分の設置台数ですみ、導入コストを抑えられるとのことでした。
そこで、イーズ社に問い合わせてデモ機を借り、試験運転してみたところ、広い体育館でも十分な冷房効果が得られると実感し、導入を決めました。
窓や扉を開放しても、冷房効果を維持できる
―導入後の効果はいかがでしょう。
工事は2日ほどで終わり、会場の使用を中断せずにすみました。全体で8台を整備し、6月中旬から運転を開始しています。多くの接種対象者が集まるため、換気のために体育館の窓や扉を開放しているのですが、大風量の出力があるおかげで、冷房効果を維持できていますね。
―今後の運用方針を聞かせてください。
今回の空調整備は、ワクチン接種の促進がおもな目的だったため、対象者のワクチン接種が終わり次第、『スポットバズーカ』は総合運動公園体育館からいったん撤去します。そして、町内の2つの中学校体育館に4台ずつ設置して、今後は学校教育課が導入効果を検証するといった流れを予定しています。
『スポットバズーカ』は、レンタルもできると聞いています。そうなれば、夏場の暑い時期に屋外で開く健康イベントなど、一時的な活用も検討できますね。
支援企業の視点
大風量のエアコンだから「移動式」でも広い空間を冷やせる
株式会社イーズ
西日本支店・エンジニアリング営業部 担当部長 藤田 一徳
―体育館に空調設備を導入する自治体は増えていますか。
間違いなく増えています。児童や生徒の熱中症リスクの回避のほか、ときに避難所となる体育館の機能強化のために、空調整備を検討する自治体が急速に増えています。さらに、新型コロナウイルスワクチンの接種会場として体育館を活用する自治体は多く、当社にも「すぐに空調を整備したい」といった問い合わせが数多く入っています。
―空調を整備する際、ポイントはなんでしょう。
特に整備を急ぐ場合は、配管工事の必要がない移動式のエアコンが適しています。しかし、従来の移動式エアコンは、パワーが小さい機種が多く、体育館のような広い場所での冷房効果が期待できません。その点、当社の移動式エアコン『スポットバズーカ』は大風量が特徴で、冷房と同時に除湿も行うため、「WBGT*1」を下げる効果があります。また、パワーが大きく遠くまで冷風を届けられるため、一般的な広さの体育館の場合、設置台数は通常のエアコンの約半分、すなわち導入コストも半分程度になります。このような特徴が評価され、これまで500校近くの体育館に『スポットバズーカ』が設置されています。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
初期の導入費用を抑え、支払い額を平準化できるよう、リース契約にも対応していますが、さらに最短3ヵ月からの短期レンタルのサービスも始めました。今後も危険が続く熱中症への対策強化を考えている自治体の方は、ぜひお問い合わせください。
藤田 一徳 (ふじた かずのり) プロフィール
昭和43年、福岡県生まれ。平成25年、株式会社イーズへ入社し、農業系と産業系のマーケットに従事。令和2年から、おもに公共領域の業務を担当する。
株式会社イーズ
設立 |
平成13年9月 |
資本金 |
5,500万円 |
従業員数 |
43人(令和3年1月現在) |
事業内容 |
電気・空調・給排水・衛生などの機器、機械設備、建設用資材工具などに関する技術の調査、開発、設計、製造、販売、賃借事業、施工、輸出入、保守管理およびコンサルティング |
URL |
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