
神奈川県秦野市の取り組み
空撮による森林調査
森林に広がる樹木病害の状況を、ドローンで網羅的かつ詳細に捕捉
※下記は自治体通信 Vol.36(2022年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
環境保全や林業活性化を目的に、域内に擁する森林を管理することは、自治体が担う重要な役割のひとつである。しかし、適切な管理につなげるために、広大な森林の現状をつぶさに把握することは簡単なことではない。こうしたなか、秦野市(神奈川県)では、樹木病害の感染状況を把握するため、ドローンを活用して森林調査を実施した。取り組みの詳細や調査で得られた成果について、同市担当者の腰塚氏に聞いた。

目視に頼る現地踏査では、状況把握に限界があった
―秦野市では、どのような森林管理を実施していますか。
近年は、樹木の「ナラ枯れ*1」被害対策に注力しています。ナラ枯れは当市で平成30年度に初めて発見されて以来、市内全域の森林・里山に急拡大しました。木が枯れると倒木や落枝の危険が生じるため、現在は散策路や建物に近い感染木を優先的に伐採する計画を立てています。しかし、被害状況を事前に把握するために職員が森林に立ち入る現地踏査では、その成果に限界を感じていました。
―それはなぜでしょう。
現地踏査を行うにはまず、森林の外から葉の色を確認し、ナラ枯れと思われる木々に見当をつけてから森林に入るのですが、遠方から目視で確認できる範囲には限りがあるからです。しかし、そこでナラ枯れに気づかず放置してしまうと、被害が拡大する恐れがあるため、現在の状況をつぶさに把握することは喫緊の課題でした。
そうした折、JDRONEからドローンを活用した森林調査の提案を受けました。空撮であれば、広範囲の森林の状況を網羅的に把握できると期待し、まずは多くの散策客が訪れる弘法山公園を対象に、令和3年9月に調査を実施しました。
―具体的に調査はどのように行ったのでしょう。
カメラやセンサーを搭載したドローン3基を飛行させ、森林全体を空撮しました。調査対象となる森林面積は約20haあり、現地踏査ならば1週間以上かかると想定されますが、ドローンによる空撮はわずか3日間で完了。職員が森林に立ち入る必要もないので、ケガや事故のリスクもありません。
また、ドローンを使った調査では、現地踏査では得られなかったような詳細な木々のデータを取得することで、より正確に被害状況を把握することができました。
複数の画像データを取得し、ナラ枯れの位置と状況を把握
―たとえば、どのようなデータを得られたのですか。
ひとつは「オルソ画像」です。これは、航空画像を地図データに重ねやすいようひずみや角度を補正したもので、木々の位置を正確に捉えられます。もうひとつは、赤外線で植生の健康状態を可視化する「マルチスペクトル画像」です。これにより、人間の目では判断できない枯損木*2の有無も把握できました。
このほか、ドローンでは空撮をする際に位置データも取得するため、それを既存のGISに重ね合わせることもできます。これによって今後、伐採作業を行う際、枯損木がある場所に迷わず到達することができると期待しています。
―森林管理に関する今後の方針を聞かせてください。
調査で得られたデータを伐採や被害拡大防止に活かし、健康で安全な森林を取り戻していきたいですね。伐採木は、現地でウッドチップ舗装に用い、ヤマビルや鳥獣害への対策を目的とした環境整備を図ります。このほか、土砂崩れの防止を目的とした間伐を行う計画もあります。これらの作業を行う際にも、森林の状況を網羅的かつ詳細に把握できるドローンが活用できると期待しています。
支援企業の視点
ドローンを使った森林調査は、事業者選びが成功のカギになる
ソリューションサービス部 林業技士・測量士補 水野 大二郎
ソリューションサービス部 測量士 久下 義矩


―ドローンを活用した森林調査に関心をもつ自治体は多いのでしょうか。
久下 はい。現地踏査に比べて労力がかからず安全で、衛星写真や航空写真を使った調査よりもタイムリーに現状を把握できることから、ドローンを使った森林調査に注目する自治体は増えています。ただし、ひと口に森林調査と言っても、樹木病害の被害調査や、立竹木調査*3など、それぞれに目的や、取得が必要なデータが異なります。そのため、ドローンによる森林調査を委託する際には、事業者選びが非常に重要となってきます。
―事業者選定のポイントを教えてください。
水野 調査に関する専門知識が豊富な事業者を選ぶことです。たとえば当社では、ドローンの操縦技術にくわえ、林業や測量などの専門分野をもつ社員が多数在籍しています。そのため、調査の目的や必要な成果物に合わせて、ドローンに搭載する機材や飛行計画を適切に検討できます。また、ドローンを使った森林調査の場合、空撮写真からいかに森林の様相や形態を把握するかが重要ですが、当社ではリモートセンシング技術によって詳細な分析が可能です。こうした専門的な知見とドローン運用の豊富な支援実績を活かし、自治体における森林管理の課題を解決していきたいですね。
設立 | 令和元年7月 |
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資本金 | 9,800万円 |
従業員数 | 25人(令和3年11月現在) |
事業内容 | ドローンに関する導入コンサルティング、ソリューション開発、ドローン運用サービス、ドローンに関する教育・研修事業など |
URL | https://jdrone.tokyo/ |
お問い合わせ電話番号 | 03-4236-0080 (平日9:00~18:00) |
お問い合わせメールアドレス | contact@jdrone.tokyo |
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