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先進事例2022.05.16
河川の治水・浸水対策

高精度な水位予測システムの導入で、河川の氾濫を未然に防ぐ体制を構築

[提供] 株式会社構造計画研究所 RiverCastチーム
高精度な水位予測システムの導入で、河川の氾濫を未然に防ぐ体制を構築
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株式会社構造計画研究所 RiverCastチーム
株式会社構造計画研究所 RiverCastチーム

神奈川県川崎市の取り組み

河川の治水・浸水対策

高精度な水位予測システムの導入で、河川の氾濫を未然に防ぐ体制を構築

川崎市 建設緑政局 総務部 企画課 河川計画担当 主任 近藤 樹一
[提供] 株式会社構造計画研究所

※下記は自治体通信 Vol.38(2022年5月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

近年、集中豪雨の激甚化や頻発化に伴い、自治体においては、河川の氾濫リスクに備えた治水・浸水対策の強化が急務となっている。そうしたなか、川崎市(神奈川県)では、河川の水位予測システムを活用した実証実験を行い、令和3年度から導入しているという。導入にいたるまでの経緯や今後の活用方針などを、同市建設緑政局 総務部 企画課の近藤氏に聞いた。

[川崎市] ■人口:153万8,721人(令和4年4月1日現在) ■世帯数:75万8,750世帯(令和4年4月1日現在) ■予算規模:1兆5,490億7,081万円(令和4年度当初) ■面積:144.35km2 ■概要:神奈川県の北東部に位置し、横浜市と東京都に挟まれた、細長い地形を成している。かつては東海道などの宿場町として栄え、京浜工業地帯の一角をなす臨海部を中心に工業都市として発展。近年では、北西部などで宅地化が急速に進み、大規模なベッドタウンとしての一面も持つ。西から、麻生区・多摩区・宮前区・高津区・中原区・幸区・川崎区の7区で構成されている。非都道府県庁所在地としては、全国唯一となる100万都市。
川崎市
建設緑政局 総務部 企画課 河川計画担当 主任
近藤 樹一 こんどう じゅいち

限られた職員と予算で、河川を守る必要がある

―川崎市では、河川の治水・浸水対策を行ううえでどのような課題がありましたか。

 限られた職員と予算で、いかに河川施設の維持管理および運用を行っていくかという点ですね。そもそも当市は、多摩川右岸に位置しており、市内を平瀬川や五反田川など多摩川水系に属する多くの管理河川が流れています。管理者として、治水安全度を確保するため、護岸などの河川施設を適切に維持していく使命があります。ただ当市は、東京や横浜のベッドタウンとして市内人口は増加傾向にあるものの、ふるさと納税などの影響からそれに比例した税収増が得られていない現状があります。また、行政職員数の減少やベテラン職員の退職により、次第に河川管理業務に精通した職員の育成や確保も困難になってきました。

―そうしたなか、どんな対策を講じたのでしょう。

 令和元年10月から、民間企業や団体を対象に「河川の実証フィールド提供」を開始しました。これは、市内河川インフラを無償で開放し、ICTなどを使った水位予測や施設の点検方法などの技術開発に役立ててもらおうという取り組みです。そして、有用だと判断した場合、実際に導入していこうと。この3年間で、約20社がこのフィールドを使った実証実験に取り組んでいます。そのなかでも、一番に手をあげてもらったのが構造計画研究所であり、約2年間にわたって実証実験を行いました。

―どのような実証実験ですか。

 同社が開発した、リアルタイム洪水予測システム『RiverCast』を活用した実証実験です。これは、クラウド型のシステムを使い、自動取得した河川の観測水位および降雨情報を用いて、30分ごとに15時間先までの水位変動を予測するというもの。当市では、市内および近傍5地点において、水位予測を約2年行いました。

職員の生活や安全を、守る観点からも有用

―結果はいかがでしたか。

 予測精度が高く、特に各支川が多摩川に合流する下流域において、有用であるということがわかりました。たとえば、大雨が降れば、場合によってはポンプで水をくみ上げたり、水門を閉めたりする作業が必要になります。その際、水位予測に基づいて行動すれば、適切なタイミングで稼働できます。また、以前は万が一に備えて、業務時間外や休日に関係なく職員に待機してもらう必要がありましたが、そうした「時間外の待機」といった指示をする機会が減らせます。職員の生活や安全を守るという観点からも、もっとも有用だと考えられる下流域の1地点に、令和3年度から本格導入しました。

―今後における同システムの活用方針を教えてください。

 令和3年度は豪雨の頻度が低かったため、『RiverCast』を活用する機会はありませんでしたが、限られた職員数で今後に備える意味でも、心強い存在だと考えています。また現在は、河川管理といったハード面で活用していますが、将来的にはソフト面においても、住民に対して避難をうながす判断材料の一つになりえるのではないかと、個人的には考えています。


支援企業の視点

カンや経験に頼らない水位予測が、水害対策の新たな判断基準となる

株式会社構造計画研究所 社会デザイン・マーケティング部 公共企画室 山口 裕美子
[提供] 株式会社構造計画研究所
株式会社構造計画研究所
社会デザイン・マーケティング部 公共企画室
山口 裕美子 やまぐち ゆみこ

―河川の治水・浸水対策への関心は、自治体で高まっていますか。

 はい、高まっています。近年、全国で局所的な豪雨災害が頻発しており、過去に氾濫した記録がない中小河川においても水害が発生しています。監視が必要な河川が増加していることからも、治水・浸水対策は自治体にとっては喫緊の課題になっていると言えるでしょう。

―対策を行っていくうえでのポイントはなんでしょう。

 ICTを活用した対策を積極的に進めていくべきです。従来であれば、観測水位や降雨情報に基づいて、担当者がカンや経験によって対策を講じていたと思います。ただ、近年は過去にないような豪雨だったり、経験豊富な職員の減少だったりで、そうした対策では、想定外の事態が起こりうる近年においては後手になる可能性が高くなっています。たとえば、当社が提供している『RiverCast』は、東京大学生産技術研究所との共同開発により、公的情報では得られないピンポイントな水位変動をリアルタイムに予測します。確率的な予測情報により、「いつ」「どこで」「どれくらい」危険が迫っているかの事前把握が可能で、その後の対策の判断基準となりえるのです。また、クラウド型のため、大がかりな設備投資が不要で、早期導入が可能です。

―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。

 現在『RiverCast』は、実証実験を含めて13自治体65地点での利用実績があります。これをさらに広めていくことで、河川管理部門はもちろん、危機管理部門における支援も行っていきたいと考えています。

山口 裕美子(やまぐち ゆみこ) プロフィール
宮城県生まれ。平成18年、株式会社構造計画研究所に入社。解析コンサルティング業務に従事した後、現職にて水害対策ソリューションを中心に公共系の営業を担当している。プライベートでは4児の母。
株式会社構造計画研究所
設立 昭和34年5月
資本金 10億1,000万円
従業員数 636人(令和4年4月1日現在)
事業内容 建物の構造設計業務から構築物を取り巻く自然現象の解析やシミュレーション業務、情報通信分野でのソフトウェア開発、製造分野へのCAD/CAEのソフトウェア販売やカスタマイズ、人間の意思決定支援分野でのコンサルティングサービスなど
URL https://www.kke.co.jp/
サービスURL https://www.weather.kke.co.jp/
お問い合わせ電話番号 03-5342-1031 (平日9:00〜17:00)
お問い合わせメールアドレス weather@kke.co.jp
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