山梨県市川三郷町の取り組み
郵便関連業務の効率化①
郵便物の集計作業を自動化し、省力化とコスト低減を同時に実現
市川三郷町 総務課 課長 一瀬 浩
※下記は自治体通信 Vol.42(2022年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体では日々、多くの通知物や帳票を住民に発送している。その際は、職員が全庁ぶんの郵便物を集計する作業に手間をかけているケースも少なくない。こうしたなか、市川三郷町(山梨県)は、郵便物の集計作業を自動化し、業務の省力化を実現した。さらに、「郵便物の発送コストを低減させることもできた」と話す同町総務課の一瀬氏に、取り組みの詳細を聞いた。
[市川三郷町] ■人口:1万5,035人(令和4年8月1日現在) ■世帯数:6,660世帯(令和4年8月1日現在) ■予算規模:149億8,720万5,000円(令和4年度当初) ■面積:75.18km2 ■概要:甲府盆地の南西に位置する。曽根丘陵および丘陵性山地と富士川に囲まれた平坦地と中山間地が広がる。肥沃な土壌を活かした農業、和紙・花火・印章などの伝統産業が盛ん。「百祭り」と称されるほど、祭りが盛んな町としても知られる。町内を縦断するJR身延線の駅を7つ有しており、中部横断自動車道のインターチェンジが設置されるなど、交流の結節点としての発展が期待される。
時間内での集計に精一杯で、割引適用に手が回らなかった
―市川三郷町ではどのような郵便物発送業務を行っていましたか。
まず、各部署の職員が14時までに郵便物を総務課へ集めます。次に、総務課の職員がこれらを1通ずつ数えたり、重さを量ったりして、郵便物の数と料金をまとめた「差出票」を作成。これを郵便物とともに、16時に郵便局員へ手渡していました。その間、職員はこの集計作業に追われっぱなしになることが通常で、ときには郵便局員を待たせてしまうこともありました。集計に誤りがあれば郵便物を発送できなくなってしまうので、担当職員は限られた時間で大量の郵便物を処理するこの作業に毎日、心理的な負担を感じていました。
同時に、集計作業にかかる負担はコスト面におけるムダの発生にもつながってしまっていました。
―どういうことでしょう。
担当職員は日々、すべての郵便物を集計して差出票をつくるのに手一杯で、割引料金の適用を念頭に入れた集計まで行えていなかったのです。たとえば、郵便物を「郵便区内特別郵便物」として割引料金で発送するには、同一の郵便区内宛で、同一の重量帯の郵便物を100通以上集める必要があります。しかし、これらの条件を満たすよう取りまとめる作業には手が回らず、コスト面でムダが生じていたのです。このように、労力とコストの両面で課題を感じていたときに知ったのが「郵便料金計器」という機械の存在でした。
―郵便料金計器とはどのような機械なのですか。
郵便物の数や重さを自動で計測し、郵便局から承認を得た印影と料金を印字する機械です。この機械に通した郵便物を発送する場合は、差出票の作成も不要になります。この機械を活用すれば、業務効率化に向けた確かな効果を得られると期待し、平成26年に、自治体での導入実績が豊富なピツニーボウズ製の機械を導入しました。
―導入成果を教えてください。
1分当たり最高180通という高速処理がなされるため、集計作業にかかる職員の負担を大きく軽減できました。郵便物を機械に通す作業は、郵便物を発送する部署や総務課の職員が行っていますが、現在ではそれぞれ10~20分程度の単純作業となっています。また、導入によって時間的な余裕が生まれたことで、郵便区内特別郵便物の適用も増やせました。
さらに、割引料金の適用以外でも、郵便物発送コストの低減を実現しています。
部門別の集計データ蓄積が、コスト意識醸成につながった
―機械の導入がどのようにコスト低減につながったのですか。
郵便物を機械に通す際に部署名を設定することで、郵便物の数や料金といったデータを部署別に蓄積できるため、まずは全庁における発送実績を「見える化」しました。当町は以前、郵便物発送など「通信運搬費」の予算はすべて総務課に割り当てられていたのですが、郵便物の発送履歴をもとに、それぞれの部署に配分する体制に見直したのです。それにより、郵便物発送に関するコスト意識が各部署で醸成され、「同一の宛先への郵便物は1回の発送にまとめる」といった工夫が生まれ、コスト低減につながっていったのです。
―今後の活用方針を聞かせてください。
郵便料金計器を約8年にわたり使用しているものの、まだ活用しきれていない機能に「任意のテキストやイラストを印字する」というものがあります。ほかの導入自治体では、部署名が記載された専用の封筒を発注しなくとも、部署名を無地の封筒に印字することでコスト削減につなげられたという活用事例を聞いています。こうした、さまざまな機能の活用や、ほかの自治体における郵便料金計器の運用事例も参考に、さらなる業務効率化を研究していきたいですね。
福岡県柳川市の取り組み
郵便関連業務の効率化②
自動計測による正確な集計で、厳格化する適正収納に対応
柳川市 総務部 総務課 庶務法制係 永島 佑哉
郵便物の集計を手作業で行っている自治体のなかには、「作業の正確さ」に課題を感じているケースも少なくない。特に割引料金を適用する場合は、郵便局による「適正収納」の厳格化が進み、より慎重な作業が求められている。こうしたなかで柳川市(福岡県)は、「郵便料金計器」の機能により職員の作業負担を抑えながらも正確な処理を実現している。取り組みの詳細を、同市総務課の永島氏に聞いた。
[柳川市] ■人口:6万3,483人(令和4年6月末現在) ■世帯数:2万6,162世帯(令和4年6月末現在) ■予算規模:787億6,303万5,000円(令和4年度当初) ■面積:77.15km2 ■概要:福岡県南部、筑後平野の西南端に位置する。北は大川市、大木町、筑後市、東はみやま市に接し、南は有明海に面している。大部分は、古くから開拓・干拓された大小規模の干拓地が魚鱗状に広がる海面干拓地帯となっている。有明海は干満差日本一で大潮時には6mに達し、干潮時には広大な干潟が現れる。平成26年には、同市出身の詩人、北原白秋の詩情を育んだ水郷柳川の風景が国の名勝に指定された。
独自に効率化を試みるも、効果を得られなかった
―柳川市では、郵便物の集計作業をどのように行っていましたか。
各部署から集まる郵便物を総務課の会計年度任用職員が集計していました。その職員は作業に慣れていたため、普段は大きなミスもなく集荷時間までに集計を終えられていました。ただ、その職員が不在の場合は、私やほかの職員が代わりに集計していたため、作業の煩雑さを実感していました。まずは、郵便物を「定形・定形外」といった形状別に分けたうえで、次に重量や特殊取扱郵便の種類から適正な料金を確認しなければなりません。そこからさらに郵便物の数を数え、料金を足し込んでいくのです。近年は郵便局による「適正収納」が厳格化しているため、正確さを保ちながら時間内に集計を終えることは心理的負担が非常に大きな作業でした。そのため私は、だれでも正確かつ迅速に集計できる方法をいくつか試みてみました。
―具体的に、どのような方法を試みたのですか。
最初は、Excelを使って郵便料金を簡単に算出できる集計票を独自に作成してみました。しかし、はじめに郵便物を種類別に分ける作業は依然として必要でしたし、料金体系があまりにも複雑なため、入力項目の数も多くなり、効率化の効果は得られませんでした。
そこであらためて着目したのが、以前にピツニーボウズジャパンから提案を受けたことがあった「郵便料金計器」でした。郵便物の集計を自動化するこの機械ならば、職員が煩雑な作業に追われる現状を改善できるはず。自ら集計作業を経験したことでその確信を得られ、今年3月に導入しました。
設定した重量を超えた場合は、料金印字を自動で停止できる
―導入成果はいかがですか。
形状や重量が異なる郵便物を一緒に通しても1通ずつ正確な料金を印字できるので、職員は複雑な料金体系のことを意識することなく、簡単に集計を行えるようになりました。また、一定の条件を満たすことで料金が割り引かれる「郵便区内特別郵便物」を集計する際は、「重量制限機能」が役立っています。これは、あらかじめ機械に設定した重量を、実際の郵便物の重量が超過した場合に、料金を印字せず稼働を自動停止する機能です。この機能を使えば、設定した重量帯の郵便物だけに対して印字できるのです。
―今後の活用方針を聞かせてください。
将来、郵便区内特別郵便物を発送する際には、1g単位の重量ごとに郵便物の数を票に記載する必要が出てくると聞いていますが、ピツニーボウズ製の郵便料金計器では、そのような票を自動で作成する機能もあるそうです。こうした機能を活用することで、職員の業務負担を増やすことなく適正収納に対応していきます。
支援企業の視点
郵便関連業務で増え続ける負担。自動化こそが抜本的な解消策に
ピツニーボウズジャパン株式会社
Sending Technology ソリューションズ
営業本部 福岡支店 支店長 小嶋 大介
―自治体における郵便関連業務の負担は増えているのですか。
まず、コロナ禍を背景に住民へ届ける通知物や帳票が増えたことで、職員の業務量は増大しています。さらには、郵便局による適正収納の厳格化が進んでいることで、自治体の集計作業はこれまで以上に高い正確性も求められ、同様に業務負担の増大につながっています。
―そうした業務負担に、どのように対応していけばよいのでしょう。
業務量と正確性のいずれの課題についても、作業の自動化こそが負担軽減に向けた「最適解」になると当社では考えています。当社の「郵便料金計器」は、形状や重量を自動で計測できるなど、集計作業を効率化させる機能が充実しているのが特徴です。タッチパネルの操作やバーコードの読み取りで行える「部署・科目別の集計」、一定の重量を超えた郵便物には集計処理を行わない「重量制限」なども、多くの導入自治体から評価されている機能です。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
当社では、自治体における郵便関連業務を効率化するソリューションとして、郵便料金計器のほかに「封入・封かん機」という機械も提案できます。これは、郵便物を宛先ごとにまとめる「名寄せ」から封入、のりづけまでを自動化する機械で、さまざまな帳票の封入作業が発生する税務や福祉といった部門から多くの引き合いがあります。郵便関連業務に課題を感じている自治体のみなさんは、お気軽にご連絡ください。
小嶋 大介 (こじま だいすけ) プロフィール
昭和44年、奈良県生まれ。観光専門学校を卒業後、商社へ入社。その後、佐川急便株式会社を経て、平成19年にピツニーボウズジャパン株式会社に入社。平成26年より現職。山口県、九州全域および沖縄県での新規顧客開拓に従事。
ピツニーボウズジャパン株式会社
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