長野県高森町の取り組み
電子契約システムの導入①
契約書のデジタル化によって、地元事業者も巻き込んだDXを実現
高森町
総務課 DX推進係 主任 伊藤 健
総務課 財務係 主事 松島 健司
※下記は自治体通信 Vol.44(2022年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
令和3年1月の地方自治法施行規則改正により、自治体が民間企業と電子契約を締結するハードルが低くなったことを受け、電子契約システムを検討・導入する自治体が増えている。高森町(長野県)もそうした自治体のひとつで、システムの導入により、庁内だけでなく地元事業者にもDXが波及していくことに手応えを感じているという。同町の担当者2人に、導入した背景や得られた成果などを聞いた。
[高森町] ■人口:1万2,914人(令和4年8月1日現在) ■世帯数:4,591世帯(令和4年8月1日現在) ■予算規模:120億820万6,000円(令和4年度当初) ■面積:45.36km2 ■概要:中央アルプスと南アルプスに囲まれた信州・伊那谷の南部、天竜川の西岸に広がる段丘に位置している。町の東には四季折々に色を変える仙丈ヶ岳、塩見岳、赤石岳など、南アルプスの3,000m峰を望むことができる。昭和32年に市田村と山吹村が合併し、両村を山頂で結ぶ本高森山に由来して高森町となった。長野県を代表する地域ブランドである、干し柿「市田柿」発祥の町としても知られている。
「契約課」がないため、各担当者が処理していた
―電子契約システムを導入した経緯を教えてください。
伊藤 そもそも当町では、町長の「ICT環境を整備し行政効率を向上させます」という公約を果たすため、全正規職員にテレワーク用PCを配布したほか、議会用にタブレット端末を配布したり、電子決裁システムを導入したりなどのDXに取り組んできました。そうしたなか、ある業者から提案を受けたことで電子契約システムに関心をもちました。そこで、導入効果があるかどうか、年間の契約書数を庁内で調査してみたのです。
―調査の結果はどうだったのでしょうか。
松島 契約書が、庁内で年間約700件存在していました。しかも、当町には契約に関する業務を担う「契約課」がなく、各課の担当者が契約書の処理をしており、押印や郵送といった手間がかかっていたのです。電子契約システムを導入すれば、そうした手間が軽減されるほか、なにより当町と契約している地元事業者の業務負担軽減につながります。結果、導入効果は高いと判断し、システムの検討を開始。そこで、NTT東日本が弁護士ドットコムからOEM提供を受けている電子契約システム『クラウドサイン for おまかせ はたラクサポート』に注目したのです。
―注目した理由はなんですか。
伊藤 3つあります。1つ目は充実したバックアップ体制です。システムの説明を受けた際、導入から運用までフォローをしてもらえると聞き、「導入がしやすい」と感じました。2つ目は、直感的に操作できる点。実際に操作した際、非常に簡単で経験がない人でもすぐに使えると判断しました。そして、3つ目は「適法性」を満たしている点。同システムは、「グレーゾーン解消制度*1」に基づき、国から「問題なく適法に利用できる」という確認を得ていました。そうした点を評価し、令和4年4月から導入したのです。
ICTツールや人材面でも、DX支援を期待
―導入はスムーズに進んだのでしょうか。
松島 はい。両社に職員向けおよび地元事業者向けに説明会を開いてもらい、それ以降は特に問い合わせもなく、運用できています。不明点がある場合など、AIとオペレーターによるチャットなどのサポートがあるため、安心です。また意外だったのは、地元事業者向けの説明会の際、小さい町なのに100人を超える事業者に来ていただいたことです。みなさんの電子契約に対する関心の高さがうかがえましたね。
―導入後の効果はいかがですか。
伊藤 現時点で、約700件のうち約130件が電子化されています。職員の業務効率化はもちろんですが、地元事業者から「収入印紙が不要になり、印刷や郵送する必要がないのですごく楽になった」などの声をもらっています。さらに、ある建設業者さんから「施主さんと住宅の契約を交わす際に電子契約を導入したい」といった相談の声も。結果として、地域にもDXが波及していくことに、手応えを感じています。
―今後の電子契約システムの活用方針を教えてください。
伊藤 まだ約130件ですから、契約書の電子化をさらに進めていきたいですね。金融機関などは業務フローの変更に時間がかかるケースがあるため、こちらからも働きかけながら進めていきたいと考えています。またNTT東日本では、ICTツールやICT人材の提供も可能ということですので、そうした面からもDX支援をお願いしたいですね。
支援企業の視点
電子契約システムの導入②
サポート体制が充実していれば、契約相手の導入もスムーズに進む
東日本電信電話株式会社 ビジネス開発本部 第三部門 サポートサービス担当 主査 横塚 浩章
ここまでは、電子契約システムを導入することによる高森町のDX推進事例を紹介した。このページでは、同町の取り組みを支援したNTT東日本を取材。担当の横塚氏に、自治体が電子契約システムを導入していくうえでのポイントなどを聞いた。
手間がかからない方式が、自治体でも選択可能に
―電子契約システムの導入を検討している自治体は増えているのでしょうか。
増えています。背景としては、令和3年1月に地方自治法施行規則が改正されたことがあげられます。改正前は、契約者双方が電子証明書を取得したうえで、それぞれ署名しなくてはならないという厳密なルールがありました。改正後は、電子契約サービスを提供する「第三者」が立会人になることで、当事者が電子証明書を取得する必要がなくなりました。この方式は電子契約の手間がかからないことから、すでに民間企業の間で普及しており、自治体でも選択できるようになったのです。
―電子契約システムを導入する際に、おさえておくべきポイントはなんですか。
我々は最低限3点をおさえておくべきだと考えています。1点目は、情報セキュリティが担保されているか。高いレベルで情報セキュリティ対策が求められる自治体にとっては必須と言えるでしょう。2点目は、導入がしやすいか。大がかりなシステム改修が必要だったり、操作が難しかったりすれば、コストや手間がかかりますから。3点目は、豊富な導入実績があるか。実績は安心感につながりますし、知名度が高ければ取引先の理解も得られやすいです。たとえば、当社が弁護士ドットコムからOEM提供を受けている電子契約システム『クラウドサイン for おまかせ はたラクサポート』では、3点のポイントを満たしています。
―それぞれどのようにポイントを満たしているのでしょう。
情報セキュリティについては、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)*2」に登録されているほか、LGWANでも利用できます。ちなみに、「グレーゾーン解消制度」でも認められており、適法性も担保しています。また、クラウドサービスのため大きなシステムを導入する必要がなく、直感的に使えることから導入も簡単です。そして、平成27年に提供を開始して以降、自治体や民間企業で幅広く利用され、電子契約市場では、シェアNo.1*3です。
さらに、このシステムには大きな特徴があります。
自治体職員はもちろん、地元事業者も支援
―それはなんですか。
有償ですが、手厚いサポート体制があることです。当社では、電子契約システムを導入する際の運用体制構築や、庁内勉強会および地元事業者への導入説明会も開催します。また、問い合わせにも、チャットやリモート会議などで幅広く対応。自治体職員はもちろん、地元事業者からの問い合わせにも対応します。電子契約は相手の合意があってなされるもの。地元事業者への導入がうまくいかなければ、電子契約自体が成り立ちませんから。そうした、自治体と地元事業者の不安や困りごとをまるごとサポートできるのも、黎明期から地域に密着したインターネットの普及支援を行ってきた当社だからこそです。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
『クラウドサイン for おまかせ はたラクサポート』を普及させることで自治体だけでなく、地域全体のDXも支援していきたいと考えています。また当社では、過去の契約書も含めた書類の電子化や、勤怠管理といったバックヤードのデジタル化、ICTツールやデジタル専門人材の提供も可能です。ぜひお問い合わせください。
横塚 浩章 (よこつか ひろあき) プロフィール
昭和50年、栃木県生まれ。平成8年に日本電信電話株式会社(NTT)に入社後、交換機保守、法人向けシステムエンジニア、社内システム開発、NWサービス開発などの業務を担当。令和2年から現職にて、バックオフィス系サービス開発業務に従事している。
東日本電信電話株式会社
設立 |
平成11年7月 |
資本金 |
3,350億円 |
従業員数 |
4,900人(令和4年3月31日現在) |
事業内容 |
東日本地域*4における地域電気通信業務*5およびこれに附帯する業務、目的達成業務、活用業務 |
URL |
https://www.ntt-east.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 |
NTT東日本 ICTコンサルティングセンタ 0120-765-000 (平日 9:00~17:00 (年末年始を除く)) |
この記事で支援企業が提供している
ソリューションの資料をダウンロードする