―非常用保存食の備蓄状況を教えてください。
当区への被害が最大となる地震の発生を想定し、予想される避難者1日分の食料を各避難所や災害備蓄倉庫に保管しています。具体的には、アルファ米を約32万食、クラッカーを約25万食保管しているほか、パンやクッキー、みそ汁、粉ミルク、保存水などを用意しています。
―なにを基準に保存食を選定しているのでしょうか。
「安全性がしっかりと確保できているか」を第一に考えています。当区では保存食の採用商品を決める際、保健所職員など食品衛生にかんする専門家の意見を聞き、使用されている原材料や添加物の安全性を十分に調べます。また、供給事業者には、有効保存期間や抗菌検査などの調査証明書を提出してもらいます。
そのほか、数年前から特に注力しているのが、食物アレルギーへの対応。万が一、耐性のない人がアレルギーを引き起こす食材を食べた場合、ショック症状で命を落とす危険もあります。そのため、「アレルギーをもっている人は、怖くて避難所の保存食を食べられない」といった問題があります。
―どうすればその問題を解決できるでしょう。
アレルギー対応の保存食を、一般の保存食とは別に備蓄することです。当区でも平成26年度から、アレルギーに対応したアルファ米の備蓄を始めました。約32万食のアルファ米のうち、15万6000食がアレルギー対応のアルファ米です。また、平成28年度からは、クッキーと粉ミルク製品でアレルギー対応を開始。
これまでもクッキーについては、「避難時の緊張状態でも気軽に食べられるように」といった観点で備蓄を進めていましたが、アレルギー対応の商品はなかなか見つかりませんでした。そんななか、約2年半前に国内初の「アレルギー対応クッキー」として販売が始まった話を聞き、採用を決めたのです。また、乳幼児用の粉ミルクでもアレルギー対応の商品を用意したことで、老若男女すべての住民へのアレルギー対策が整ったと考えています。
緊急時の栄養補給だけでなく「おいしさ」も提供
―アレルギー対応の保存食に対して、住民からはどのような反応がありますか。
町内会や学校単位で実施される防災訓練でサンプルとして保存食を配っており、アレルギーをもつ住民から「本当に安心して食べることができる」という声が聞かれます。また、「とてもおいしい」と喜んで食べていただける姿も。じつは、保存食の採用を決める際には私たち職員が試食し、味や口当たりなどを確認しています。緊急時でも「栄養の補給」だけではなく、おいしく食べていただきたいですから。
―非常用保存食の備蓄について、今後の方針を聞かせてください。
避難するすべての住民に、安心して食べてもらえる保存食の備蓄をさらに推進します。アレルギー対応の保存食は、一般の保存食とくらべてコストは高くなる。それでも、住民の安全確保を最優先に、可能な限りアレルギーに対応した保存食の備蓄増強を検討していく方針です。