自治体が行う郵便関連業務は、集計作業のほかに、封入・封かん作業が含まれるケースもある。この作業では、個人情報を取り扱うことから、いかに誤封入を防いで正確な作業を行うかが課題となる。こうした課題に対し、府中市(広島県)では、作業を機械で自動化することで、誤封入のリスクを低減した。機械導入の背景や具体的な成果について、同市の切原氏と田中氏に聞いた。
府中市データ
人口:3万8,002人(令和3年3月1日現在)世帯数:1万7,220世帯(令和3年3月1日現在)予算規模:385億1,246万6,000円(令和3年度当初案)面積:195.75km²概要:広島県の東南部内陸地帯、福山市から18.5km、三原市から40kmの地点に位置する。「府中」の名は、8世紀ごろにこの地に「備後国府」が置かれ、備後国の政治、経済、文化の中心であったことに由来する。内陸工業都市であり、備後都市圏の一翼を担う。地場産業としての家具づくりは江戸時代から約300年の歴史があり、「府中家具」として知られている。
長時間の単純作業が、誤封入のリスクを生んでいた
―府中市ではどのような業務で郵便物の封入・封かん作業が発生していますか。
田中 税務課では、固定資産税や市県民税、軽自動車税などの納税通知書の送付で、1年間に合計約6万5,000通の封入・封かん作業が発生しています。
切原 税務課以外では、介護保険課や市民課、女性子ども課、健康推進課などの部署でも、封入・封かん作業があり、いずれも職員が手作業で行っていました。
―具体的にはどのような作業を行っていたのでしょう。
田中 帳票を折りたたみ、宛先ごとに文書を集約する「名寄せ」を行ったうえで封筒に入れ、のりづけしていました。特に通数が多いのは固定資産税の通知で、その数は約2万通。約10人がかりで延べ約500時間をかけ、この作業につきっきりで対応していました。
切原 こうした単純作業が長時間続くことで、誤封入のリスクがつねに伴うことは大きな課題でした。名寄せの二重チェックは行っていましたが、疲労すると人は思いも寄らないミスを起こしてしまうもの。職員はみな強い不安を感じながら作業に取り組んでいました。そこで当市は、こうした誤封入リスクの低減や作業時間の短縮を目的に、封入・封かん作業を自動化する機械の導入を検討。ピツニーボウズジャパンの「封入・封かん機」を令和2年に導入しました。
1時間で最大5,400通封入
―封入・封かん機とはどのような機械ですか。
田中 紙折りから、封入、のりづけまで一連の作業を行ってくれる機械です。ピツニーボウズジャパンの機械では、宛先情報を付与したバーコードを印字することで同じ宛名の文書を正確に封入できるため、懸念だった誤封入のリスクを抑えられました。
切原 当市が導入した機種は、1時間で最大5,400通のスピードで処理できるので、作業にかかる時間も大幅に短縮できました。たとえば、1回に約3,000通を発送する介護保険の給付通知では従来、封入・封かん作業に5人で約70時間をかけていましたが、自動化により、2人がかりの2時間半で終えることができました。
職員の業務改善を、行政サービス向上につなげる
―郵便関連業務にまつわる今後の改善方針を聞かせてください。
田中 封入・封かん機を活用できる業務を広げるため、現状で使用している帳票や封筒の仕様変更を検討しています。特に帳票の仕様変更にはコストがかかりますが、手作業にかかる人的コストや職員の精神的負担と比較すれば、自動化によって長期的に得られるメリットは大きいと考えています。
切原 当市では郵便料金計器も同時に導入し、集計業務の簡素化を含めた郵便関連業務の効率化や、郵便料金の削減に成功しました。機械に任せられることは任せ、職員は人にしかできない業務に専念する。そうすることで、職員の業務改善を行政サービスの向上につなげていきたいですね。