愛知県西尾市の取り組み
地域包括ケアに関する情報発信①
介護予防情報を網羅的に発信し、地域包括ケアの拡充につなげる
西尾市
健康福祉部 長寿課 課長補佐 髙須 一成
健康福祉部 長寿課 地域支援事業担当 杉浦 弘樹
※下記は自治体通信 Vol.36(2022年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
地域包括ケアシステムの拡充を目指す自治体においては、住民やボランティア、民間企業などが提供する「インフォーマルサービス」をいかに周知し、利用促進につなげるかが課題となっている。こうしたなかで西尾市(愛知県)では、インフォーマルサービスの最新情報をWebサイトに集約し、より確実に利用者らに届ける仕組みを構築した。取り組みの詳細について、同市長寿課の髙須氏と杉浦氏に聞いた。
[西尾市] ■人口:17万861人(令和4年1月1日現在) ■世帯数:6万6,483世帯(令和4年1月1日現在) ■予算規模:1,124億7,878万6,000円(令和3年度当初) ■面積:161.22km2 ■概要:愛知県の中央を流れる矢作川流域の南端に位置する。鎌倉時代に足利義氏によって築かれたと伝えられる「西条城」は、この地域の拠点として発展を続け、「西尾城」と改称された江戸時代に城下町がつくられた。昭和28年に市制を施行。西三河南部地域の中核的な都市として、自動車関連産業の発展とともに成長を続けてきた。
住民と直接かかわる関係者へ、いかに情報発信するかが課題
―西尾市では、インフォーマルサービスの情報収集をどのように行っていますか。
杉浦 長寿課や地域包括支援センターなどに所属する合計12人の生活支援コーディネーター(以下、SC)が、市内の公共施設や商店などに足を運び、介護予防のためになるインフォーマルサービスの情報収集を行ってきました。令和元年度にはこれらの情報を集約できるシステムを導入し、異なる組織に所属するSC同士で情報を共有できるようになりました。しかし、住民と直接かかわるケアマネジャーをはじめとする医療・介護関係者には、このシステムがあまり利用されない状況が続いていました。
―それはなぜでしょう。
杉浦 インフォーマルサービスに関する情報はもともと、医療・介護関係者が、SCに直接問い合わせる習慣ができていたため、新しいシステムを利用するメリットを感じてもらえなかったのです。しかし当市としては、単発的な問い合わせに応じるだけでなく、市内に1,500近くあるインフォーマルサービスを常時、網羅的に示すことで、より多くの利用につなげたいという想いがありました。
髙須 そうした折に我々は、このシステムとは別に導入していた社会資源把握支援サービス『けあプロ・navi』に、SC向けの機能が追加されることを知りました。『けあプロ・navi』は、地域包括ケアシステムにかかわる事業者情報を集約・発信できるWebサービスで、すでに多くの医療・介護関係者が日常利用していました。そこで、令和3年7月からインフォーマルサービスに関する情報の集約・発信も『けあプロ・navi』に一本化することを決めたのです。
普段使いのツールに掲載され、具体的な照会が増加した
―どのような効果を得ることができましたか。
杉浦 「この通いの場にはどういった人が集まるのか」「この活動は要介護1の方でも参加できるのか」といった具体的な照会が、SCに多く寄せられるようになりました。これは、SCが把握しているインフォーマルサービスの情報を、医療・介護関係者に確実に発信できていることの証だと思います。『けあプロ・navi』のサイトには、医療機関や介護事業者などの基本情報のほか、設備の空き状況といったさまざまな「社会資源」の情報が集約されています。医療・介護関係者がこれらの情報を収集するために、『けあプロ・navi』を普段使いするなかで、インフォーマルサービスに関する情報を検索する習慣も生まれ、SCへの照会増加につながったのだと考えています。
髙須 これらの情報はトーテックアメニティの「情報センター」が定期的に内容を更新してくれるため、当市職員にとっては、手間をかけず、つねに鮮度の高い情報を発信できるメリットも感じています。また、SC向けの機能である「活動記録」や「掲示板」にさまざまな情報が蓄積されるため、SCに人事異動があった際でも、ツール自体が有用な引継書としての役割を果たせると期待しています。
―今後の活用方針を聞かせてください。
杉浦 民間企業が高齢者向けに提供する出張サービスやセミナー、地域住民によるボランティア活動などの情報もサイトに掲載していきたいと考えています。『けあプロ・navi』を、SCや医療・介護関係者、住民などにおける共通のコミュニケーションツールとして活用することで、地域包括ケアシステムの充実を図っていきたいですね。
支援企業の視点
地域包括ケアに関する情報発信②
住民による社会資源の利用促進は、情報の「集約と発信」がカギに
トーテックアメニティ株式会社
公共医療システム事業部 公共東日本営業部 第2営業グループ 課長 本間 大士
公共医療システム事業部 公共中部営業部 第2営業グループ 川合 君佳
これまでは、インフォーマルサービスに関する情報の収集・発信をWebサイト上で実現した西尾市の事例を紹介した。ここでは、同市を支援したトーテックアメニティを取材。住民によるインフォーマルサービスの利用を促すポイントについて、同社の担当者2人に聞いた。
所属が異なるSC間で、いかに情報を集約するか
―インフォーマルサービスの利用を促すにあたり、自治体にはどういった課題がありますか。
本間 まずは、各SCが発掘したインフォーマルサービスの情報を、関係者間で共有しにくいことです。個々のSCは、自治体や社会福祉協議会、地域包括支援センター、NPO法人など異なる組織に所属するほか、「日常生活圏域」や自治体における主管部署の違いにより、情報の共有がスムーズに行われていないケースが少なくありません。
川合 また、集約した情報を、いかにケアマネジャーやかかりつけ医などの事業関係者に届けるかが、もうひとつの課題となります。実際、インフォーマルサービスを直接住民に紹介する役割を担うのは、こうした方々であるからです。
そこで当社では、これら2つの課題を解決し、インフォーマルサービスの利用促進につなげるソリューションとして、『けあプロ・navi』を提案しています。
―詳細を聞かせてください。
本間 まず、SC間の情報共有を支援する3つの基本機能を紹介します。「資源情報の登録」機能では、「一部関係者のみに公開したい資源」や「一般に周知したい資源」など、ニーズにあわせて柔軟に情報の公開設定ができます。「活動記録」機能では、活動内容や特定の団体に対する支援経過など、事例の蓄積が可能。こうした記録は、SCの支援におけるノウハウの集積につながります。「掲示板」機能では、議題別に情報共有・意見交換をチャット形式で行え、SCや協議体内の有効な情報共有ツールとしても活用できます。
川合 さらに『けあプロ・navi』の特徴として、ケアマネジャーへ効率的に情報を届けるための仕組みがあげられます。
鮮度の高い情報が、関係者の普段使いを促す
―具体的にどういった仕組みがあるのですか。
川合 介護事業所の新規指定や廃止、空き情報、職員体制といった事業所情報のほか、自治体や厚生労働省の通知など、業務上重要な情報を集約できる仕組みです。これにより『けあプロ・navi』は、ケアマネジャーがケアプラン作成といった日常業務を行ううえで欠かせない情報取得手段となり、「普段使い」を促せます。ここにインフォーマルサービスの情報が掲載されることにより、住民の利用を促すこともできます。『けあプロ・navi』のサイト運営においては、当社が掲載内容の更新を支援するため、情報はつねに「活用できる状態」に鮮度が保たれます。
また『けあプロ・navi』は、さまざまな「医介連携ツール*1」と連携できるのも特徴です。これにより、利用者は目的の違いによってツールの使い分けがよりスムーズに行えます。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
本間 『けあプロ・navi』は、介護保険制度が始まった平成12年度から提供を開始し、制度や事業の変遷に伴って進化してきました。今後も、自治体のニーズをていねいに汲み取りながら地域包括ケアシステムの推進に貢献していきます。『けあプロ・navi』は高齢福祉にとどまらず、障害福祉や育児を含めた重層的支援のほか、介護人材やボランティアの募集などにも幅広く活用でき、その事例も豊富です。関心のある自治体のみなさんは、お気軽にご連絡ください。
本間 大士 (ほんま ひろし) プロフィール
昭和57年、宮城県生まれ。平成16年に宮城大学を卒業後、イートス株式会社に入社。自治体向けパッケージソフトの営業・企画を担当。平成30年、トーテックアメニティ株式会社に入社。令和元年より現職。おもに自治体福祉部門向け自社ソリューションの営業全般を担う。
川合 君佳 (かわい きみか) プロフィール
平成8年、岐阜県生まれ。平成31年に愛知県立大学を卒業後、トーテックアメニティ株式会社に入社。同年より現職。おもに自治体福祉部門向け自社ソリューションの営業を担う。
トーテックアメニティ株式会社
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