埼玉県志木市の取り組み
ネットワーク分離下における生産性向上
ファイル授受に伴う煩雑な作業は「単純なマウス操作」ですべて完結
志木市 総合行政部 デジタル推進課 課長 八木 征利
※下記は自治体通信 Vol.38(2022年5月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
標的型攻撃メールをはじめとしたサイバー攻撃がますます巧妙化するなか、自治体における情報セキュリティ対策の重要性はより一層高まっている。しかし、ネットワーク分離下におけるファイルの授受や、それに伴う無害化処理に煩雑さを感じている職員も多い。こうしたなか、志木市(埼玉県)は、単純なマウス操作だけでファイル授受を完結できる仕組みを構築した。取り組みの詳細を、同市デジタル推進課の八木氏に聞いた。
[志木市] ■人口:7万6,374人(令和4年4月1日現在) ■世帯数:3万5,843世帯(令和4年4月1日現在) ■予算規模:482億376万4,000円(令和4年度当初) ■面積:9.05km2 ■概要:埼玉県南西部に位置する。志木のシンボルとして、新河岸川と柳瀬川、荒川が市内を流れ、歴史上は新河岸川の舟運で栄えた商業都市として発展した。首都近郊25km圏内で、都心まで電車で20分という好条件から、昭和40年頃から人口が急増。住宅都市としても発展してきたが、自然や田園風景も残されている。
ファイル1件の取り込みに、ログインが複数回必要だった
―志木市では、ネットワーク分離下においてどのようにファイルの授受を行っていましたか。
ファイル転送が行える無害化ソフトを導入し、ファイルの授受を行っていました。仮想環境を用いたネットワーク分離により、1台の業務用PCで安全なインターネット利用を実現できていたのですが、ファイル授受に伴う作業は手間がかかり、多くの職員がその煩雑さに不満を感じていました。
―具体的にどういった作業が生じていたのでしょう。
ファイルをダウンロードしたら、まずはリモートデスクトップ*1上で無害化ソフトにログインし、無害化処理を行います。その後、LGWAN環境に切り替え、再度無害化ソフトにアクセスし、ファイルを取り込んでいました。この作業には、リモートデスクトップ上からLGWAN環境に切り替えたり、それぞれの環境で無害化ソフトにログインするため、複数のIDやパスワードを入力したりする必要があったのです。
そうしたなか、ジェイズ・コミュニケーション社から、『SCVX』という仮想ブラウザの提案を受けました。ファイル授受にかかる手間を大幅に低減できる点を魅力に感じ、令和3年11月に導入しました。
―ファイル授受に伴う作業はどのように変わったのですか。
ブラウザ上での単純なマウス操作だけで、ファイルの授受が行えるようになりました。具体的にはまず、Webサイトやメールで取り込みたいファイルを右クリックします。メニューのなかから「ダウンロード」を選ぶだけで自動的に無害化処理が行われ、安全なファイルがLGWAN環境内にある個々人のフォルダに格納されるのです。仮想ブラウザは、LGWAN環境のデスクトップでアイコンをクリックするだけで立ち上がるため、仮想環境とLGWAN環境の切り替えも不要になりました。
インターネットが、圧倒的に使いやすくなった
―導入に対する職員の反応はいかがですか。
「圧倒的にインターネットを使いやすくなった」といった声が多く寄せられています。従来、ファイル1件の授受に5分ほどの時間がかかっていましたが、いまでは数十秒程度に短縮され、職員の生産性は大きく向上しました。総務省はインターネットの利便性を高めるため、次期情報セキュリティモデルとして「β/βモデル」を提言しています。しかし、当市においては『SCVX』によって情報セキュリティの強化と生産性の向上を両立できていることから、当面は現状の「αモデル」を継続する方針です。
支援企業の視点
仮想化と無害化処理の一体運用が、ファイル授受の煩雑さを解消する
ジェイズ・コミュニケーション株式会社 RevoWorksビジネスユニット 営業部 第1グループ 武内 彩
―ファイルの授受が煩雑化してしまう要因はなんですか。
無害化ソフトやファイル転送システムなど、異なるソリューションを組み合わせて使用することです。これにより、複数のログイン操作が生じるほか、複数のIDやパスワードを管理する手間がかかってしまうのです。また、仮想OSによるネットワーク分離を行っている場合は、仮想環境とLGWAN環境の切り替えも作業の煩雑さを増す要因となります。
―そうした煩雑さを解消するにはどうすればよいのでしょう。
ファイル授受に用いるソリューションの数を減らせばよいのです。たとえば、仮想ブラウザと無害化エンジンを一体化させた、当社の『SCVX』は、ブラウザの利用からファイルの無害化までをシームレスに行い、ファイル授受に伴う手間を大きく軽減できます。無害化処理は、「コンテナ」と呼ばれる仮想空間内で実行され、無害化できないファイルに対してもサンドボックス*2チェックが行われるため、高いセキュリティ性も担保できます。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
当社は総務省が「自治体情報システム強靭性向上モデル」を発表した平成28年当時から自治体におけるネットワーク分離を支援してきました。そして『SCVX』を含む仮想ブラウザシリーズ『RevoWorks』は165の自治体に導入されています。こうした豊富な実績に裏打ちされた開発力を活かし、今後も自治体における情報セキュリティ対策と生産性向上に貢献していきたいですね。
武内 彩(たけうち あや) プロフィール
昭和62年、埼玉県生まれ。平成22年に武蔵大学を卒業後、埼京東和薬品株式会社に入社。医薬品業界、金融業界の営業を経験し、令和2年、ジェイズ・コミュニケーション株式会社に入社。おもに『RevoWorks』シリーズの営業を担う。
ジェイズ・コミュニケーション株式会社
株式会社両備システムズ
ジャパンシステム株式会社
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