※下記は自治体通信 Vol.26(2020年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
情報セキュリティ強靭化のため、多くの自治体は「三層の分離」を物理的なPC端末の分離によって実現させた。しかしその結果、業務ごとに異なる端末を利用しなければならず、業務効率の低下を招くことに。こうした課題に対し、宇城市(熊本県)は、仮想化技術の導入により、全職員が1人1台の端末で業務を遂行できる環境を整備した。情報統計課の蛇嶋氏に、環境整備の詳細や得られた成果について聞いた。
宇城市データ
人口:5万8,558人(令和2年6月末日現在)世帯数:2万4,672世帯(令和2年6月末日現在)予算規模:553億1,540万8,000円(令和2年度当初)面積:188.61km²概要:熊本県の中央に位置し、平成17年、海沿いと山側の5町が合併して誕生。温暖な気候で農作物の栽培が盛んでありながら、県内市街地までも通勤圏内であるため、ベッドタウンとしての役割も担う。背後の山を削り、海を埋め立てて新たに築造された、三角町の三角西港は、平成27年に「明治日本の産業革命遺産」のひとつに登録された。
自席でブラウザ閲覧ができず 毎回Webページを印刷
―宇城市ではどのように「三層の分離」を実施していましたか。
LGWAN接続系とインターネット接続系、個人番号利用事務系の端末をそれぞれ用意し、Web分離を行っていました。庁内業務の中心であるLGWAN系の端末は、全職員分を確保できず共同で利用。また、インターネット系端末は利用者も多く、順番待ちになる場合もありました。
―業務効率の低下を招きますね。
ええ。さらに自席でブラウザを開きながら仕事を行えないので、調べ物のたびにWebページを印刷する必要があり、手間や紙のコストが生じていました。こうした課題は、全職員に対するLGWAN系端末の整備を前提とし、インターネット系からの画面転送方式による分離で解消できると考えました。そこで、ジェイズ・コミュニケーションが提供する仮想ブラウザ方式の分離ソリューション『RevoWorks SCVX(以下、SCVX)』を今年4月に導入したのです。
―どのような製品ですか。
サーバ内に生成される、「コンテナ」と呼ばれる仮想空間内でブラウザを開き、画面転送を行う仕組みです。事業者選定では、専用ブラウザを使う製品を検討しましたが、Web利用における汎用性が不安でした。その点『SCVX』は広く普及している『Firefox』を使用しており、導入の決め手に。従来別のブラウザで使っていたeラーニング教材が使えるなど、ブラウザの違いによる不便は感じていません。
導入後は、全職員が自身のLGWAN系端末からワンクリックでインターネットに接続でき、1台のPCで庁内業務とWeb利用を行えるので、インターネット系端末の台数も減らせました。LTE閉域網を利用して行っているテレワークも、職員に不便さを感じさせず活用できています。
全職員に端末が行き渡り、業務改善ツールも導入できた
―ほかにどのようなメリットを感じていますか。
『SCVX』では簡単なクリック操作でファイルを無害化できるので、従来のように県が提供する自治体セキュリティクラウドシステムにわざわざ接続し、ファイルを受信する必要もなくなりました。また、LGWAN系の端末が全職員に行き渡ったのを機に職員用のチャットツールも導入。業務効率の向上にメリットを感じています。
―セキュリティ対策に関する今後の方針を聞かせてください。
総務省によるセキュリティ対策の見直しを受け、宇城市独自の対策モデルを構築していきます。ここ数年、インターネットをIEで閲覧したいニーズがまだ残っています。こうした課題に対してジェイズ・コミュニケーションは、『RevoWorks』シリーズで対応可能と聞いています。職員の職務内容に応じたWeb分離を実現し、セキュリティ維持と業務効率化を両立していきたいですね。