

※下記は自治体通信 Vol.50(2023年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
災害時の初動対応を早めるため、遠隔から安全に情報収集や救援活動を行えるドローンに注目する自治体は多い。こうした状況に対して、ドローンの運用支援で豊富な実績をもつJDRONEの廣江氏は、「自治体で配備が進む小型の機体では、広域災害の現場においてドローンの優位性を十分に発揮しきれない」と指摘する。指摘の詳細や具体的な解決策を同氏に聞いた。

機体から1~2km離れると、小型ドローンは制御が困難に
―災害対策用にドローンを配備する自治体は増えていますか。
はい。令和4年度に、防水性能等級3以上で動画撮影機能を有した災害対応用ドローンの調達が「緊急防災・減災事業債」の対象となったことで、全国の消防本部で配備が進んでいます。ドローンを配備済みの消防本部は令和4年4月時点で全体の59.3%を占め、その比率はいま、さらに高まっていると予想されます。しかし、広域災害時にドローンの優位性を発揮できる調査・救援体制はまだ十分に整っていないと当社は考えています。
―どういうことでしょう。
現在、消防本部で配備されている小型のドローンは、2.4GHz帯の電波を使うのが一般的で、操縦者が機体から1~2㎞でも離れると電波が届きにくくなるため、操縦や映像の伝送が難しくなります。そのため、広域災害の現場でドローンを利用する場合、操縦者は危険な場所に近づきながら機体を操縦する必要が生じます。また、一般的な小型ドローンはバッテリー駆動のため、飛行時間が30~40分程度と任務遂行にかけられる時間も長くありません。そもそも、実際の広域災害時に求められるのは、遠く離れた場所から安全に操縦でき、なおかつより多くの任務を遂行できる機体です。そこで当社では、災害時にそうした機体を自治体に代わって運用するサービスを提案しています。
―具体的に、どのような機体を使用するのですか。
ヤマハ発動機製の無人ヘリコプター『FAZER(フェザー) R G2』を使います。衛星通信機能を搭載できるのが最大の特徴で、「圏外」というものがなく、理論上は地球上のどこからでも機体を操縦できます。最大積載重量は33㎏と大きく、カメラのほか、各種計測装置やウインチなど、さまざまな目的に合った機材や物資を搭載可能です。さらに、動力にはガソリンエンジンを採用しているため、飛行時間が100分と長く、衛星通信で操縦する場合、航続距離は90㎞に達します。ただし、『FAZER R G2』は非売品です。同機体の保有と運用はメーカーから数少ない企業にしか認められておらず、当社はその一社なのです。

放射線災害などの現場へも、安全な活動を支援できる
―その機体の保有と運用を認められているのはなぜですか。
JDRONEの複数の技術者が、ヤマハ発動機と長年にわたって無人ヘリを使った調査活動をともに展開してきた実績があるからです。特に『FAZER R G2』は、福島第一原子力発電所事故による放射性物質拡散状況の調査に活用されてきました。衛星通信機能を使った実用実績はまだありませんが、当社は今年1月、『FAZER R G2』を衛星通信で操縦し、東京都の荒川上空を飛行させ空撮映像をリアルタイムに地上に伝送する実証実験を行っています。離着陸時以外は現場から約270㎞離れた福島県南相馬市内から機体を操縦しました。機体は約14㎞にわたり飛行を続けましたが、その間、映像伝送は途切れることなく、衛星通信を使った無人ヘリの実用性を検証できました。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
『FAZER R G2』は、放射性物質などによるNBC災害*の現場でも、安全な活動支援に貢献できると確信しています。当社では、万一の事態に備えたドローン活用で幅広く協力する「防災協定」の締結も提案できます。関心のある自治体のみなさんはご連絡ください。
*NBC災害 : 核(nuclear)、生物(biological)、化学物質(chemical)による特殊災害のこと

設立 | 令和元年7月 |
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資本金 | 9,800万円 |
売上高 | 3億7,700万円(令和4年3月期) |
従業員数 | 28人(令和5年4月末現在) |
事業内容 | ドローン運用サービス、ドローンに関する導入支援コンサルティング、教育・研修事業など |
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