※下記は自治体通信 Vol.51(2023年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
コロナ禍や物価高騰を受けて、住民に対して給付金支援などを実施する自治体が増えている。三重県は令和4年度に「三重県低所得のひとり親世帯への生活応援給付事業」(以下、給付事業)を実施し、電子マネーまたはギフト券を対象世帯に給付。事務局業務にてビジネス・プロセス・アウトソーシング(以下、BPO)を活用することで、多岐にわたる給付業務を着実に遂行できたという。同県の担当者2人に、取り組みの詳細を聞いた。
[三重県] ■人口:173万636人(令和5年6月1日現在) ■世帯数:75万2,292世帯(令和5年6月1日現在) ■予算規模:1兆2,253億3,841万5,000円(令和5年度当初)
■面積:5,774.48km² ■概要:伊勢湾と太平洋に面し、南は和歌山県、西は奈良県、京都府、北は滋賀県、岐阜県、愛知県と接している。「伊勢神宮」や世界遺産「熊野古道」、伊賀忍者発祥の地、リアス式海岸など、美しい自然や名所旧跡が数多く存在するほか、海山の幸に恵まれていることから、美し国(うましくに)と称されている。四日市萬古焼、松阪牛、伊賀牛、伊勢えび、伊勢茶、真珠、熊野地鶏などの特産品がある。
三重県
子ども・福祉部 子育て支援課 子育て家庭支援班 課長補佐兼班長
沖中 順子おきなか じゅんこ
※肩書きは当時のものです
三重県
子ども・福祉部 子ども福祉・虐待対策課 家庭福祉班 主幹兼係長
平澤 貴子ひらさわ たかこ
県が主体となって、給付事業を実施
―三重県が実施した給付事業の概要を教えてください。
沖中 厳しい状況に置かれている県内のひとり親世帯を対象に、三重県が経済的支援を行うという取り組みです。県内で利用率が高い電子マネーの『WAON(みえ 子育てWAON)』またはJCBギフト券(2種類とも以下、金券)2万円分を児童扶養手当受給者世帯に給付。県内29市町において同じ給付内容とし、県が主体となって実施することにしました。
―実施するうえで懸念はありましたか。
平澤 この事業では、対象世帯への案内文書作成および発送や、金券のどちらを選択するかをWebと郵送の2つの方法で受け付ける意向確認業務、金券の発送、電話での問い合わせ対応など、業務が多岐にわたりました。都道府県がこのような給付事業を行うのは珍しく、当県としても初めての取り組みだったため、これらの事務局業務をBPOとして民間に委託することに決定。企画提案コンペを実施した結果、もっとも評価が高かったJPメディアダイレクトと契約締結するに至りました。
―給付事業は順調に進んだのでしょうか。
沖中 契約締結後は同社とスピーディに打ち合わせを重ねることで、手探り状態ながら、比較的順調に進めることができました。なかでも、同社への一括委託に基づいた支援には何度も助けられました。
―具体的に教えてください。
平澤 給付対象世帯への文書発送から申込受付、仕分け、金券の発送まで、Webと郵送のそれぞれに要する業務と所要時間について、綿密なスケジュールを作成してもらいました。郵便事業に精通している日本郵政グループの同社ならではの提案だと実感しましたね。また、申込用紙には外国語表記もあったのですが、開始後、おもに外国籍の住民が「金券を受け取らない」「希望する金券」の両項目にチェックをつけて申し込む事例が数件発生。同社からの連絡により、「受け取らない」にチェックがあっても意思確認をする対策を速やかに講じることができました。さらに、約2割の対象世帯の申込ペースが遅かったため、急きょ、再通知のハガキを発送し、申込率が急上昇しました。分離発注ではなく一括委託だからこそ、こうした支援を得られたのだと思います。
「ふさわしい準備ができた」受給者からのうれしい声も
―結果はどうでしたか。
沖中 最終的に、対象の96%以上の世帯に給付を届けることができました。また、ある受給者から「子どもの門出にふさわしい準備ができました」という、うれしい声もありましたね。こうした結果を出せたのも、同社はもちろん、部局内や県内市町における職員の協力があってのこと。正直大変でしたが、今後このような事業に取り組む場合も、今回の経験を活かしてスムーズな業務運営を行っていきたいですね。
業務を一括発注できる委託先なら、細やかな事務局運営が可能になる
株式会社JPメディアダイレクト
営業推進本部 第1営業部 担当部長
馬場 智一ばば ともかず
昭和52年、東京都生まれ。日本郵便株式会社で約21年間法人営業に従事し、令和4年、株式会社JPメディアダイレクトに入社。現在は、BPO業務領域の営業を担当している。
―事務局業務を民間委託するケースは多いのですか。
民間委託するかどうかは、自治体の規模などによって判断が分かれるところですが、コロナ禍や物価高騰を背景に国や自治体が住民に対して給付金を送るといった急を要する事業は増えています。そういった意味では、すぐに体制を整えるべく、BPO業務の実績を有する民間企業へ委託するニーズは以前より多いと考えられます。
―委託先を選ぶうえでのポイントを教えてください。
業務を細分化して分離発注するのではなく、一括発注ができる委託先を選ぶべきだと考えます。事業内容によりますが、事務局運営にはさまざまな業務が発生します。それを分離してしまうと業務ごとに入札を行う負荷がかかるだけでなく、各業者への指示、管理の手間もかかります。たとえば当社の場合、三重県の事業では、意向確認票の作成から封入・封かん、局出し、Webシステムの管理・構築、書類の審査、コールセンターの運用などさまざまな業務をワンストップで支援。そのため、申込用紙への記入不備や住民からの返信を促すための対応など、変化する状況に応じた細やかな事務局運営が可能なのです。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
今回のような事務局運営を当社が一手に引き受けることで、自治体と住民の方々をつなぐ支援をしていきたいと考えています。当社の事務局サービスは、さまざまな業務に対応していますので、自治体の担当者の方々は気軽に問い合わせてください。