※下記は自治体通信 Vol.51(2023年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
職員の人手不足や行政ニーズの多様化・複雑化が進むなか、定型的でありながらも手間のかかるノンコア業務をいかに効率化し、職員の業務負担を軽減するかが、多くの自治体の課題となっている。そうしたなか、日高町(北海道)では、郵便物の「集計」と「封入・封かん」をともに機械で自動化し、多くの部署で大きな成果をあげているという。取り組みを主導した総務課の担当者2人に詳しく聞いた。
[日高町] ■人口:1万731人(令和5年6月末現在) ■世帯数:5,919世帯(令和5年6月末現在) ■予算規模:177億5,241万5,000円(令和5年度当初)
■面積:992.07km² ■概要:北海道日高管内の西部に位置する。「ひだか路の玄関口」として位置づけられ、道央から道東へ通じる国道の要所ともなっている。雄大な日高山脈の麓に位置し、日高山脈襟裳国定公園や沙流川など豊かな自然を利用した観光や産業が盛ん。日高山脈を臨んで牧歌的な風景が広がるサラブレッドの産地で、町内の門別競馬場では毎年「ホッカイドウ競馬」が開催されている。
郵便物を1通ずつ量る作業に、毎日時間を奪われていた
―郵便物発送業務の効率化を図った経緯を教えてください。
倉見 当町では郵便物の発送に伴い、大きく2つの作業が全庁的に発生していました。1つ目は日々の集計作業です。各課の職員は郵便物の数を料金帯ごとに記載した集計票を作成し、郵便物と一緒に総務課に提出します。総務課の会計年度任用職員は、集まった集計票と郵便物の内容に相違がないか確認したうえで新たに「差出票」を作成し、郵便局へ持ち込んでいました。郵便料金は郵便物のサイズや形状、重さによって異なってくるため、各課の職員は郵便物の重さを1通ずつ量るという煩雑な作業に毎日、一定時間を割いており、業務負担を感じていました。
藤田 2つ目の作業は、文書を封筒に入れてのりづけする「封入・封かん」です。作業自体は単純ですが、この作業が定期的に発生する一部の部署は、その度に複数の職員が本来の業務から長時間離れて封入・封かんにつきっきりになるという負担が生じていました。
これら、郵便物の集計や封入・封かんは長年、当たり前のように人手で行ってきた作業でしたが、あるとき、いずれも機械によって自動化できることを、企業のダイレクトメールで知りました。そこから、機械の導入に向けた具体的な検討を進めていったのです。
―どのような機械の導入を検討したのですか。
藤田 集計作業を自動化するのは「郵便料金計器」という機械で、郵便物の大きさや重量を計測し、郵便局から承認を得た「印影」と料金を郵便物に印字するものです。もう一つが、「封入・封かん機」という機械で、文書を機械に通すと、折り込みから封入、のりづけまでを自動処理できるものです。
さっそく事務機器の導入で取り引きのあった事業者にデモを行ってもらったところ、郵便物の集計や封入・封かんがあっという間に処理されていく様子を見て、職員の業務効率化に確実に寄与できると期待しました。そこで、自治体への納入実績が豊富なピツニーボウズ社の郵便料金計器と封入・封かん機を今年2月に導入しました。
集計も封入・封かんも「機械に通すだけ」の作業に
―導入効果を教えてください。
倉見 まず、郵便料金計器の活用によって、各課の職員は煩雑で時間のかかる日々の集計作業から解放されました。ピツニーボウズ製の機械は、郵便物の形状や重量を自動で計測し、正しい料金を瞬時に印字するので、各課の職員が行う集計作業は、郵便物を「機械に通すだけ」の単純作業になりました。郵便料金計器に通した郵便物は差出票の添付も不要になるので、総務課の会計年度任用職員は、各課から集まった郵便物を改めて集計し直す作業もなくなりました。
藤田 封入・封かん機の活用でも複数部署で業務効率化が実現しています。たとえば、介護保険料の通知に伴う発送業務の場合です。従来は約4,000通ぶんの文書を折り込んで封入・封かんするのに、3~4人の職員で半日をかけていたそうですが、機械を活用することにより、1人で3時間程度の作業になったと報告を受けています。
これら2種類の機械の導入によって、郵便物発送に伴う主要な作業はすべて、一気に省力化できたという確かな実感を持っています。
―今後の活用方針を聞かせてください。
倉見 導入から半年に満たないいま、これらの機械を実際に使った職員はまだまだ一部です。今後は郵便物発送業務に欠かせない機械として庁内で認知と活用を広め、郵便物発送業務のさらなる効率化を目指していきます。
郵便物発送業務の効率化②
職員の業務負担を増やすことなく、迅速かつ正確な郵便物集計を実現
郵便物発送業務をめぐっては、いかに割引料金制度を活用し、財政負担を抑えるかに関心を寄せる自治体は多い。しかし近年は、郵便局による適正収納の厳格化を背景に郵便物の集計が煩雑化し、職員が負担に感じているケースが少なくない。こうしたなか、白老町(北海道)では、職員の業務負担を増やすことなく、郵便物の正確な集計作業を実現しているという。取り組みの詳細を、同町総務課の2人に聞いた。
[白老町] ■人口:1万5,547人(令和5年6月末現在) ■世帯数:9,269世帯(令和5年6月末現在) ■予算規模:226億6,305万9,000円(令和5年度当初)
■面積:425.64km² ■概要:北海道、胆振総合振興局管内のほぼ中央に位置し、南は太平洋 、西は登別市、北は千歳市と伊達市、東は別々川をはさんで苫小牧市と隣接している。「白老」の地名は、アイヌ語で「アブの多いところ」を意味する言葉「シラウオイ」が由来と言われている。令和2年には、白老町ポロト湖畔にアイヌの文化振興に関するナショナルセンター「ウポポイ」(民族共生象徴空間)がオープンした。
100通以上の束に潜む「重量オーバー」の郵便物
―白老町では、郵便物の発送業務をどのように行っていますか。
森 町内宛で、かつ形状が同じ郵便物に関しては原則、火曜日または木曜日を発送日とし、100通以上集まった段階で総務課がまとめて郵便局員に手渡しています。こうした方法を取るのは、「郵便区内特別郵便物*」を可能な限り適用させ、郵便物の発送コストを全庁で抑えるためです。
以前は、その際の集計作業を人手で行っていましたが、郵便局による適正収納の厳格化が進むなかで課題を感じていました。
―どういった課題でしょう。
佐々木 割引料金の適用条件に合う郵便物だけを、いかに正確に集めるかという課題です。封筒の形状や封入物が同じ郵便物の場合、重量が規定をわずかに上回るものが混じっていたとしても、目視や触るだけでは気づけません。そうした郵便物は割引料金が適用されないので、郵便局から差し戻され、その度に現金や小切手で正規料金を支払うというムダが、しばしば発生していたのです。
森 重量が規定を上回る郵便物は、計量することで事前に見つけ出せるでしょう。しかし、封筒の形状と封入物が同じ郵便物を100通以上の束から1通ずつ計量していくのはあまりにも非効率的です。そうした課題を感じていたなか、『自治体通信』の記事で「郵便料金計器」という機械の存在を知りました。差出票の作成が不要になるといった郵便料金計器本来のメリットだけでなく、ピツニーボウズ製の機械は郵便区内特別郵便物の集計に役立つ機能も実装されていることも評価し、令和4年7月に導入しました。
*郵便区内特別郵便物 : 郵便物の宛先や数、重量などの一定条件を満たした場合に料金が割り引かれる制度
規定重量内の郵便物だけに、印影と料金を印字できる
―導入効果を教えてください。
佐々木 職員の作業負担を増やすことなく、正確かつ迅速な集計作業を実現できました。ピツニーボウズ製の郵便料金計器には、郵便物の重量が事前に設定した数値を超えた場合には印影と料金を印字せず、機械の稼働を自動停止させる「重量制限」機能があります。この機能を活用すれば、割引料金を適用させたい郵便物を機械に通すだけで、規定の重量以内の郵便物だけに「郵便区内特別」の印影と料金を印字できるのです。
割引料金を適用しない通常の郵便物の集計や、各課に予算を振り分けるための毎月の集計作業も省力化できたので、郵便料金計器1台の導入で得た成果は非常に大きいと感じています。
郵便物発送業務の自動化は、特に目に見える効果を得やすい
黒崎 衣美くろさき えみ
平成4年、北海道生まれ。北星学園大学英文学科を卒業。平成27年、ピツニーボウズジャパン株式会社の販売代理店を務める道内企業に就職。郵便料金計器や封入・封かん機、複合機などの事務機器の営業に従事。
―郵便物発送業務をめぐる自治体の課題はなんですか。
職員の人手不足や住民ニーズの多様化・複雑化が進むなか、郵便物発送業務は「ほかの業務時間を圧迫するノンコア業務」として、相対的に負担が増大していることです。ノンコア業務にかかる負担をいかに軽減するかは、あらゆる自治体の共通課題ですが、郵便物発送業務は特に自動化が容易で、目に見える効果が現れやすいです。そのため、当社では「郵便料金計器」や「封入・封かん機」によって自動化することをおすすめしています。
―どのような成果を期待できますか。
いずれの機械も導入により、集計や封入・封かんといった作業をスピーディかつ正確に行えるようになります。ピツニーボウズ社の統計によると、郵便料金計器の導入により、郵便物の集計にかかる時間、すなわち人件費は平均で7割以上削減できるそうです。実際に導入自治体のそうした成果は、郵便物発送業務に悩む近隣自治体へ急速に伝わり、同社の郵便料金計器や封入・封かん機は400以上もの自治体で導入が進んでいます。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
ピツニーボウズは全国で訪問保守を行える体制を構築し、郵便物の発送に伴う自治体業務の改善施策について豊富な知見を蓄積しています。北海道において9拠点を展開する当社も、道内自治体のあらゆる郵便関連業務に関する職員負担を軽減すべく、今後もピツニーボウズとの連携のもと、きめ細かな提案やサポートを行っていきます。