事例①【木質バイオマス発電の活用】福島県会津若松市
福島県会津若松市は木質バイオマス発電を行い、エネルギーの地産地消や地域活性化に貢献しています。
会津若松市は「バイオマスタウン構想」を策定し、環境にやさしい街づくりを推進してきました。2013年には「スマートシティ会津若松」を策定し、持続力があり安心して快適に暮らせる街づくりの具体的な取り組みも積極的に推進しています。その一環として力を入れているのが「エネルギーの地産地消」に関する事業です。
会津若松市は「バイオマス活用推進計画」を策定し、2023年を目標に生ごみ、廃食用油、間伐材などの利用率を高める取り組みを始めています。それまで、会津若松市は森林資源に恵まれながら「伐採しても採算が合わない」「間伐材の搬出路に問題がある」といった理由で、林野に間伐材が残置されてしまう問題がありました。2012年からは市が間伐材の搬出を支援し始め、これらの間伐材は合板や燃料に加工されるようになりました。また、市内にあるバイオマス発電会社「株式会社グリーン発電会津」が木質バイオマス発電を始めたことも資源の地産地消に貢献しいます。
グリーン発電会津は、木質バイオマスで発電した電気を電力会社へ売電し、電力会社を通じて一般家庭等に電気を供給するサービスを行っています。2014年からは市も木質バイオマス発電による電気を5つの市有施設へ供給しています。これは県内でも初めての取り組みです。
あわせて、間伐材の搬出支援、木質ペレットを燃料にした暖房器具の導入や市民への普及啓発を続け、木質バイオマスの利用拡大を図っています。
会津若松市は、未利用の間伐材を用いたバイオマス発電の利用率を、2010年から2023年までに20%引き上げる目標を策定し、その結果、2014~2016年には35%前後に上昇、2019年までに目標の20%を達成できています。
森林資源に着目した会津若松市のバイオマス発電事業は、地域活性化と森林の持続的な再生に貢献した、典型的な「資源循環型社会」実現のモデルケースといえるでしょう。
事例②【”バイオマス産業社市”としてのまちづくり】岡山県真庭市
国から「バイオマス産業都市」に選定されている岡山県真庭市は、バイオマス事業を軸に、地域の特色を活かしたまちづくりを進めています。
バイオマス産業都市とは、地域のバイオマスを活用し、環境にやさしく災害に負けない地域づくりをしている地域のことです。
真庭市は、蒜山高原が広がる北部と湯原温泉のある中部がリゾート地として知られ、南部は市街地を形成しています。市の約80%は林野で「美作材」の産地としても有名です。
真庭市は2005年に9町村が合併して誕生した市で、この地域では合併前の1993年にはすでに木質バイオマスを活用したまちの再生計画が動き始めていました。
2014年にはバイオマス産業都市へ選定されたことを受け「真庭バイオマス産業杜市構想」を策定し、現在、次の5つのキーワードと4つのプロジェクトを掲げて事業を展開しています。
【5つのキーワード】
①(自然):豊富で多様なバイオマスマテリアル・エネルギーを利用できる地域、真庭
②(連携):市内の各地域をバイオマスでつなぐ、真庭
③(交流):バイオマス産業観光・学習が地域のブランドを高める、真庭
④(循環):バイオマス利用装置の開発が地域の循環を促進する、真庭
⑤(協働):民間の元気、市民の情熱、行政の支援で、強力な環づくり、真庭
【4つのプロジェクト】
①真庭バイオマス発電事業
②木質バイオマスリファイナリー事業
③有機廃棄物資源化事業
④産業観光拡大事業
真庭市の取り組みで注目されているのが、産業観光拡大事業の「バイオマスツアー真庭」です。バイオマス事業の視察、里山の暮らしやモノづくりなどを体験するコースが好評です。
真庭市は、このように木質バイオマス事業と観光業を組み合わせ、国内でもバイオマス事業の先進地としてその名が通っています。真庭市の事業は、地域の強みに着目し発想の転換で成功した事例の1つと言えるでしょう。
事例③【森林バイオマスの取り組み】北海道下川町
人口3千人ほどの北海道下川町は、2016年には宝島社「50歳から住みたい田舎ランキング」で1位に選ばれるほど、全国から注目を浴びている地域でもあります。
移住に力を入れる下川町は、人にやさしいまちづくりを進めており、移住希望者が徐々に増えています。そのまちづくりの中で特徴的なものが、地理の特性を活かした森林バイオマス発電事業です。
下川町は、面積の9割を森林が占める、現在も林業が盛んに行われている地域です。2003年にはFSC森林認証を受けるなど、長年にわたって環境にやさしい循環型森林経営を続けてきました。
下川町は、木材製造業に「カスケード利用」を取り入れ、木は木材、木炭、チップなど余すところなく使い切っています。また、公共施設には積極的に木材を取り入れています。さらに、木質ボイラを導入し、豊かな森林資源を用いた木質バイオマス発電にも力を入れています。
現在は、庁舎、町民住宅、公共温泉 「五味温泉」など、まちにある公共施設の約60%に木質バイオマスエネルギーを供給しています。さらに、森林資源を燃料にすることがエネルギーの自給になるため、公共施設の暖房代が大幅に削減されるメリットも生まれました。その削減額はボイラの管理費に使われるほか、中学生まで医療費無料、保育料や学校給食費の軽減といった子育て支援にもしっかり還元されています。
下川町が行っているバイオマス発電事業は「持続可能な再生エネルギーを利用した地域づくり」として広く評価され、国から「環境モデル都市」「環境未来都市」「バイオマス産業都市」などにも選定されています。2018年には、全国から「環境未来都市」11都市の1つに選定され「人が輝く森林未来都市」として注目を浴びています。