<目次>
「世間では働き方改革が注目されているけれど、公務員にも関係あるの?」
「公務員の働き方を変えるのは無理でしょう?」
働き方改革とは、全国民が活躍できる社会を実現するために、「働く人々が、それぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにする」という政策です。
その具体策として、残業時間の削減やテレワークの推進などが行われていますが、公務員ではあまり身近な出来事として感じられないという方も多いでしょう。
たしかに、民間企業と比較すると、公務員の働き方改革の実現には難しさがあり、十分に進んでいるとはいえない現状があります。
しかし、過重労働や自由度の低い働き方になりがちな公務員にこそ働き方改革が必要であり、実際にそれを成功させている自治体があるというのも事実なのです。大切なのは、公務員だからといって諦めず、労働環境改善に向けて能動的に行動することです。
そこでこの記事では、以下について詳しく解説します。
▼働き方改革とは
▼公務員における働き方改革の必要性
▼公務員が働き方改革を進める上での課題
▼公務員における働き方改革の現状
▼地方公務員の働き方改革取組事例
▼労働環境を改善するために課題を明確化する必要性
この記事を読むことで、「公務員の働き方改革の必要性と現状」がよくわかります。また、参考になる「取組事例」を知ることができ、労働環境を改善するために何か行動してみようという気持ちになれるはずです。
公務員としての仕事に対する満足度を上げ、やりがいをもって働き続けるための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
1. 公務員の世界でも働き方改革が求められている
冒頭でもお伝えしたように、公務員にも働き方改革は必要です。
そのことを理解するために、まず働き方改革とは何か、それが公務員とどのような関係にあるのか、ということを確認していきましょう。
1-1. 働き方改革とは
働き方改革とは、全国民が活躍できるように労働環境を改善しようという政策で、以下のように定義されています。
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
引用:厚生労働省
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働き方改革の背景にあるのは、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や働く人のニーズの多様化などです。これらの課題を解決し、生産性と働くことへの満足度を上げていこうという狙いがあります。
この働き方改革を実現するために制定された「働き方改革関連法」が2019年4月から順次施行されており、以下3点を目指すための措置が講じられています。
●長時間労働の是正
●多様で柔軟な働き方の実現
●雇用形態にかかわらない公正な待遇
そして実際の措置としては、働く時間を短く・休む時間を長くするための「労働時間法制の見直し」と非正規雇用であっても労働に見合った収入を保証するための「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」という2本柱に沿って、法律の改正や制度の新設が行われているのです。
出典:厚生労働省
【労働時間法制の見直し】
労働基準法や労働安全衛生法などの労働時間に関する内容を見直し、働き方改革に適するように改正します。この見直しの内容には、以下のようなものがあります。
労働時間法制の見直し内容
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①残業時間の上限を規制する
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②「勤務間インターバル制度」*の導入
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③1年あたり5日間の年次有給休暇の取得を義務づけ
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④月60時間を超える残業について、割増賃金率を引上げ(25%→50%)
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⑤労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけ
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➅「フレックスタイム制」の制度を拡充
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⑦ 「高度プロフェッショナル制度」*の新設
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⑧産業医・産業保健機能の強化
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*「勤務間インターバル制度」:1日の勤務終了後、翌日の勤務開始までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組み
*「高度プロフェッショナル制度」:高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者が、規定条件の範囲内であれば労働基準法に縛られない働き方をできるという制度
【雇用形態に関わらない公正な待遇の確保】
正社員と非正規社員との間の待遇格差をなくし、「同一労働同一賃金」を目指すために、法改正やガイドラインの整備を行います。
つまりは、働き過ぎを防ぎながら柔軟な働き方を目指し、労力に見合った報酬を得て、ワークライフバランスを整えることに価値を置く社会の流れを作っていこうということなのです。
1-2. 公務員の働き方には改革すべき点が多い
働き方改革が「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方」「雇用形態にかかわらない公正な待遇」を目指すのであれば、公務員にこそ改革が必要です。
なぜなら、公務員は民間企業よりも残業時間が長い場合が多く、過重労働になりがちだからです。
年間残業時間の平均
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国家公務員
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233時間
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地方公務員
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158時間
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民間企業
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154時間
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参考:総務省(2015)
また、働き方の自由度も低い傾向にあります。その一例として、2017年のテレワーク実施率をみてみましょう。
テレワーク実施率(2017)
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国家公務員
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12.4%
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地方公務員
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7%
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民間企業
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13.9%
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参考:総務省「平成30年度国家公務員テレワーク実績等の結果概要」、総務省「平成29年版情報通信白書」、総務省「令和元年通信利用動向調査」
国家公務員では民間企業より少々テレワーク率が低く、地方公務員に至ってはその差は歴然です。
そして、これまで公務員では、正職員と非正規雇用の職員との待遇格差が問題視されてきました。
公務員の正職員に対する非正規雇用職員の割合は、一般職の国家公務員で36.8%(2020)・地方公務員では総数約273万人に対して約64万人の23.4%(2016)となっており、増加傾向にあります。
このように公務員の3~4人に一人は非正規雇用という状況の中では、非正規雇用であっても正職員と同等の仕事を請け負わざるを得ないという状況になります。それにもかかわらず、給与や雇用の安定という面では正職員に劣ってしまうのです。
以上のようなことから、過重労働や自由度が低い働き方になりがちで、正職員と非正規雇用間の待遇格差が大きい公務員では、働き方改革の対象となる点が多いといえます。
1-3. 政府は公務員の働き方改革を推進したい
公務員の働き方に課題が多いことは政府も認識しており、民間企業だけではなく公務員における働き方改革にも力を入れようとしています。
その証拠として、国家公務員の働き方改革を推進するための懇談会(内閣官房)や地方公務員の働き方改革を推進するためのガイドブック発行(総務省)などの取り組みが行われています。
実際に、労働基準法の改正で残業時間の上限規制が定められたことを受けて、国家公務員にとっての労働基準法にあたる人事院規則も改正するなど、民間企業の動きを追随するように公務員の働き方改革も進められているのです。
コロナによってテレワークの推進が加速
近年の新型コロナウイルス感染症の流行によって、働き方改革の具体策である「テレワーク」の推進が加速しました。
この流れは公務員にも波及し、中央官庁・地方公共団体共に、テレワークの実施率向上を目指す動きが活発になっています。
そのために、国家公務員では「働き方改革推進強化月間」を設けたり、テレワークを導入したい地方公共団体を総務省が支援するなどの取り組みがなされています。
また、非常時においても必要な業務を確実に遂行できる体制を整備するという意味合いでも、業務の効率化やテレワークの推進が必要であり、それが結果として働き方改革につながると考えられています。
しかし実際には、新型コロナウイルス感染症への対応業務が爆発的に増えてしまい残業時間が長くなるという、働き方改革とは逆方向に向かう状況になってしまっている機関もあります。
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2. 公務員の働き方改革には民間企業よりも高い壁がある
公務員にとって働き方改革は不可欠であり、政府による取り組みも進められていますが、実はその実施にあたっては民間企業とは違う難しさがあります。
その理由は、公務員には労働基準法が適用されないケースが多いこと・業務の自由度や柔軟性が低いことによります。
2-1. 公務員には労働基準法が適用されないケースが多い
労働に関する法律はいくつもありますが、もっとも代表的な法律であり働き方改革に深く関連するのが、労働基準法です。働き方改革では労働基準法を改正することで、労働環境の改善を目指しています。
ところが公務員の場合、この労働基準法が適用されなかったり、適用範囲に制限がかかるのです。
そのために、労働基準法の改正によって働き方改革が義務付けられる民間企業とは異なり、改正の影響を受けない公務員においては強制力が発生しないという状況になってしまうのです。
ちなみに、公務員における労働基準法の適用範囲は、以下のようになります。
国家公務員一般職
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適用されない
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地方公務員
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部分的に適用される
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現業公務員*
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適用される
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行政執行法人に勤務する公務員
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適用される
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*現業公務員:公権力に直接関わらない仕事をする公務員。例えば、交通・調理・清掃など。
公務員の場合には労働基準法に代わって、国家公務員法および人事院規則・地方公務員法や条例によって労働に関する規定がなされます。すなわち、労働基準法に続いてこれらの規定も改正されなければ、働き方改革が進まないということになるのです。
2-2. 業務の大幅な変更が難しい環境にある
公務員の働き方改革が民間に比べて難しいもう一つの理由は、業務の大幅な変更が難しいという点にあります。
公務員の業務には法的な縛りがあるケースが多く、公共の利益のために必要な業務を安易に省略することもできません。
例えば、法的拘束力のある書類の形式を簡略化することや、重要な窓口業務を停止すること、個人情報を自宅に持ち帰ることなどは非常に難しいでしょう。
そのために、業務の効率化やテレワークが推進しにくい状況にあるのです。
3. 公務員における働き方改革の現状
公務員には働き方改革が必要ながら、その推進には民間とは違う難しさがあるということを理解できたところで、公務員における働き方改革は現在どこまで進んでいるのかという現状を確認してみましょう。
3-1. 残業時間の上限規制は存在するが超過時の罰則はない
労働基準法では、残業時間の上限およびそれを守らなかった場合の罰則が定められています。
公務員でも、ほとんどの場合残業時間の上限規制はありますが、違反時の罰則はないのが現状です。
3-1-1. 通常だと残業時間の上限規制および違反時の罰則がある
働き方改革では、労働基準法第36条の改正によって、残業時間の上限を規制することになりました。また、この上限時間を守らなかった場合には、使用者に「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。
出典:厚生労働省
3-1-2. 国家公務員では残業時間の上限規制はあるが違反時の罰則はない
労働基準法が適用されない国家公務員では、労働基準法の改正を受けて、それに代わる存在である人事院規則が改正され、残業時間に上限規制が設けられました。
その上限時間は労働基準法と同様であり、以下の内容になります。
●原則として月45時間かつ年360時間
●他律的業務(業務の量や実施時期などを自ら決定することが困難な業務)の比重が高い部署の場合
・年720時間
・月100時間(休日労働を含む)
・複数月平均80時間(休日労働を含む)
・原則である月45時間を超えることができるのは年間6ヶ月まで
しかし人事院規則では、残業時間の上限を守らなかった場合の罰則は定められていません。
3-1-3. 地方公務員では約9割に残業時間の上限規制あり・違反時の罰則はなし
地方公務員では、労働基準法36条が適用されるものの、残業時間の上限規制については対象となりません(*)。
(*)地方公務員には労働基準法第36条が適用されるのに、残業時間の上限規制については対象にならない理由は、「36(サブロク)協定」にあります。36協定について詳しく知りたい方は、「公務員 36協定」をご覧ください。
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そのため、残業時間の上限規制を設けるかどうか、またその内容については各自治体に任されていますが、2020年時点で約94%の地方公共団体が人事院規則の内容に相当する規制を設けています(総務省)。
ただしここでも、違反時の罰則規定はありません。
3-2. フレックスタイム制は国家公務員で全職員・地方公務員ではごくわずか
国家公務員では2016年から全職員を対象にフレックスタイム制が導入されています。
地方公務員では、徐々にフレックスタイム制の導入が拡大していますが、まだまだ少数なのが現状です。
ただし、育児や介護のための早出・遅出制度を設けている地方公共団体の割合は、2020年時点で66.6%(総務省)あります。
3-3. テレワークは国家公務員・大規模自治体を軸に推進
国家公務員全体におけるテレワークの実施率は、2019年時点で47.4%(内閣人事局)です。
地方公務員では、地方公共団体の種類によって違いがあり、2020年時点で都道府県では9割以上がテレワークを導入しているのに対して、市区町村ではほとんど導入されていないという状況にあります。
地方公共団体のテレワーク導入率(2020)
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都道府県
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93.6%
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政令指定都市
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70.0%
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市区町村
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3.0%
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参考:総務省
3-4. 条件付きで副業を容認する自治体もある
働き方改革によって、民間企業に勤務する人々の間では副業を解禁するという流れもつくられています。
しかし公務員では、本業以外で営利目的の活動を行うことが国家公務員法・地方公務員法によって禁止されています。これは、公務員が副業を行うことによって以下のリスクが懸念されるためです。
●公務員としての信頼を損なう
●守秘義務が守れなくなる
●本業に専念できなくなる
そのため、公務員は基本的に副業できず、例外的に認められているのも非営利目的の不動産運用・農業・太陽光発電などに限られています。
ところがこのような状況の中でも、上記のリスクが生じない範囲内で副業を認める自治体が出てきました。兵庫県神戸市と奈良県生駒市では、一定条件を満たした職員に対して、公共性の高い事業において地域貢献ができる場合に限り、報酬を得て活動することを許可する制度を設けたのです。
このように、現状では数少ないケースではありますが、公務員にとっても副業解禁の流れは無縁ではありません。
3-5. 非正規雇用職員の待遇改善のために「会計年度任用職員制度」を開始
これまで公務員では、正職員と非正規雇用の職員との待遇格差が問題視されてきました。非正規雇用であっても正職員と同等の仕事を請け負わざるを得ないにもかかわらず、給与体系が違うことによって報酬の額が大きく異なっていたのです。
この課題を解決し、働き方改革における「同一労働同一賃金」を目指すために、2020年から「会計年度任用職員制度」が開始されました。
会計年度任用職員制度では、それまで曖昧だった非正規雇用の職員を採用する基準について明確化し、待遇についても改善を図りました。これにより、以下の点で非正規雇用職員の利益が期待できます。
●期末手当などの各種手当が支給される
●給与が類似の職務に従事する正職員の給与表に近付く
4. 地方公務員の働き方改革取組事例
地方公務員では、国家公務員に比較して働き方改革が進んでいない点もみられますが、独自に条例を改正できるという強みを活かして先進的な取り組みを行っている地方公共団体もあります。
その代表的な事例をご紹介しましょう。
4-1. 大阪府寝屋川市「完全フレックスタイム制」
行った施策:働く時間を自由に選べる完全フレックスタイム制
得られた結果:多くの職員による制度利用と就職希望者の増加
大阪府寝屋川市は、2019年から「完全フレックスタイム制」を始めました。
完全フレックスタイム制とは、必ず勤務しなければならない「コアタイム」を設けず、8:00~20:00の間で働く時間を自由に選べるというものです。また、1ヶ月の総勤務時間を満たせば、週休3日も可能だということです。
この制度は、効率的な働き方による時間外勤務の縮減・職員のプライベートの充実・働く環境の整理による多様な人材の確保などを目的として、導入されました。前日までに申告して上司が承認すると、自分の都合のよい時間帯・時間数で仕事をすることができます。
その結果、2020年の時点で過半数の職員が完全フレックスタイム制を活用しており、職員募集への応募者も倍増したそうです。
4-2. 神奈川県川崎市「川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラム」
行った施策:働き方改革のために必要な具体策の明確化と周知
得られた結果:残業時間の減縮と管理職の女性比率向上
神奈川県川崎市は、2018年から「川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラム」の作成・運用を始めました。
このプログラムでは、長時間勤務の是正と多様な働き方の推進を目指しています。そのために、ノー残業デーの実施・オンライン会議の推進・サテライトオフィスの運用など、何をどのように行うのかという具体策を明確化しています。さらに、プログラムの内容を毎年その時点での課題に応じて改定しているのです。
これによって、残業時間が減り、管理職における女性の比率が向上したそうです。
4-3. 兵庫県神戸市「副業解禁」
行った施策:条件付きでの副業解禁
得られた結果:地域貢献活動の活発化
兵庫県神戸市は、2017年から「地域貢献応援制度」を導入しました。これによって、職員が条件付きで副業することが認められたのです。
この背景には、地元のNPO法人や地域団体が、人手不足や高齢化などによって活動を継続することが難しくなっているということがあります。そして、それを助けるために公務員が地域の活動に参加しようと思っても、副業禁止という決まりが足かせになっていたのです。
そこで神戸市は、職員が安心して地域貢献活動の担い手になれるようにと、条件付き副業という形で活動できるようにしました。
条件の内容とは、従事するのが公共性の高い地域貢献活動であること・過去5年以内に契約する団体と職務上のかかわりがないこと・一般職として在職6ヶ月以上で勤務成績が良好であること、などです。これらの条件を満たしており許可が得られれば、勤務時間外に副業して報酬を得ることができます。
これによって、職員が積極的に地域貢献活動を行うことができ、この制度が自治体のPRにもつながると評価されています。
4-4. 神奈川県鎌倉市「外部コンサルタントの活用による業務改善」
行った施策:外部コンサルタントによる長時間労働の原因探究
得られた結果:残業時間の減縮と年休取得日数の増加
神奈川県鎌倉市では、2014年から「職員力向上プロジェクト」を実施しています。
神奈川県鎌倉市の福祉部門では、慢性的な超過勤務が発生しており、職員のメンタルヘルス不調による休職が続くなどの深刻な問題を抱えていました。これを受けて人事管理部門が様々な改善方策を講じたにもかかわらず、残業時間の縮減効果が十分に得られなかったのです。
そこでこのプロジェクトでは、慢性的な長時間労働の原因がどこにあるのかについて、外部コンサルタントの力を借りて明らかにしようと試みました。その結果、身内だけでは中々目につかなかった課題が明確になり、具体的な対策を講じることができるようになったのです。
この取り組みによって、対象となった福祉部門では、部門全体の残業時間が半減し、年休取得日数も約3日間増加したそうです。
5. 働き方改革の第一歩は「課題の明確化」
ここまで解説してきたように、働き方改革とは労働環境を改善するための取り組みです。
公務員では、残業の多さや自由度の低い働き方、正職員と非正規雇用者の間の待遇格差などが問題になりがちですが、働き方改革を実現するために何をすべきかは個々のケースによって異なります。
それは、それぞれが抱えている課題によって、相応しい対策が異なるためです。
例えば、残業の多さを改善したいという目標は共通していたとしても、その原因が「業務量の多さ」なのか「特定の人物への業務集中」なのか「突発的なイベントの多発」なのかによって、講じるべき策は違うはずです。
だからこそ、働き方改革の第一歩は、「何が問題でその原因はどこにあるのか」を明確化することなのです。
そして課題の明確化は、法律や制度が整うのを待たなくても、自分ですぐに始められます。ぜひ、自分の労働環境を改善するために、解決すべき課題について考えてみることをおすすめします。
6. 業務改善に役立つツールを有効活用しよう
労働環境をよくするために何をすべきかということを考えたとき、多くの場合に必要なのは業務改善だと思います。
業務改善によって、本質的に必要な業務に時間を割くことができ、効率的に働くことが可能になります。
そこでおすすめしたいのが、「RABAN」です。
RABANは、行政課題の解決を支援する製品サービスの比較検討、資料請求サイトです。情報政策、防災など15のカテゴリーからワンストップでサービス・製品の情報を探すことができます。
例えば、テレワークを推進するための書類電子化や、業務を効率化するためのRPA(定型作業の自動化)*など、働き方改革に役立つサービスをみつけることが可能です。
*RPA(定型作業の自動化)について詳しく知りたい方は、「自治体 RPA」をご覧ください。
このようなツールを活用し、業務の「無駄」や「煩雑さ」を改善することで、働きやすい環境を整えていきましょう。
7. まとめ
この記事では、以下について詳しく解説しました。
◎働き方改革とは
・全国民が活躍できるように労働環境を改善しようという政策 ・「長時間労働の是正」、「多様で柔軟な働き方の実現」、「雇用形態にかかわらない公正な待遇」のための措置が講じられる ・措置の2本柱は、「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」
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◎公務員における働き方改革の必要性
・過重労働や自由度が低い働き方になりがちで、正職員と非正規雇用間の待遇格差が大きい公務員では、働き方改革の対象となる点が多い ・民間企業の動きを追随するように公務員の働き方改革も進められている
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◎公務員が働き方改革を進める上での課題
・公務員には労働基準法が適用されないケースが多いため、働き方改革の強制力が発生しない ・公共性や守秘義務の観点から、業務を大幅に変更することが難しい
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◎公務員における働き方改革の現状
・残業時間の上限規制:国家公務員では全般的に、地方公務員でも約94%が実施済だが、違反時の罰則規定は設けられていない ・フレックスタイム制の導入:国家公務員では全職員を対象に導入済、地方公務員の導入率は2020年時点で4.5% ・テレワークの実施率:国家公務員全体では47.4%(2019)、地方公務員では地方公共団体の種類によって違いあり ・条件付きでの副業容認:兵庫県神戸市と奈良県生駒市で実施されている ・非正規雇用者の待遇改善:2020年から「会計年度任用職員制度」が開始され、非正規雇用の職員にも各種手当を支給、給与も類似の職務に従事する正職員の給与表に近付けられるようになった
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◎地方公務員の働き方改革取組事例
・大阪府寝屋川市「完全フレックスタイム制」 ・神奈川県川崎市「川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラム」 ・兵庫県神戸市「副業解禁」 ・神奈川県鎌倉市「外部コンサルタントの活用による業務改善」
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働き方改革とは、労働環境を改善するための取り組みです。
働き方改革の第一歩は、「何が問題でその原因はどこにあるのか」を明確化することであり、これは法律や制度が整うのを待たなくても自分ですぐに始められます。
ぜひ、自分の労働環境を改善するために、解決すべき課題について考えてみることをおすすめします。